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【京葉首都圏江戸川/特報】大激戦区・東京から全国で主役に?! ファイナリストの横顔

【京葉首都圏江戸川/特報】大激戦区・東京か...

2025.03.28

 47都道府県で唯一、1000チーム以上がしのぎを削る大激戦区の東京。近年は躍進が目覚ましく、上位クラスが高いレベルで伯仲する2025年度は「小学生の甲子園」を制するチームが、ついに誕生するかもしれない。第22回京葉首都圏江戸川大会でファイナルを戦った、この2チームも可能性は十分。すでに地元で全国予選が始まっており、これも突破するとは限らないが、期待を込めてそれぞれのインサイドリポートをお届けしよう。 (写真&文=大久保克哉) ※決勝短評&写真ダイジェスト➡こちら   ―We are champion― 笑顔ととともに復権。夏へ突っ走るか 優勝=2年ぶり5回目 [東京・足立区] カバラホークス 【戦いの軌跡】 1回戦〇8対0新堀(江戸川) 2回戦〇8対0六木(足立) 3回戦〇8対0雷(江戸川) 準々決〇9対0葛西フ(江戸川) 準決勝〇5対0越中島(江東) 決 勝〇10対6船橋(世田谷)  勝ったから明るいのではない。2025年を迎えたカバラホークスの面々は、吹っ切れたような表情をしていた。  試合前のウォーミングアップでは、肉体的には厳しいはずのダッシュも笑顔で駆け抜けていく。もちろん、手を抜いているわけではないが、どの顔も楽しそう。  その象徴とも言えたのが、新年から背番号10をつけた小澤蒼大だ。ユニフォームの右袖には「主将」とある。このリーダーの顔から白くて大きな歯がこぼれると、「福」を招くかのように不思議と集団のムードが高まる。 小澤主将は準決勝で勝利を決定づける満塁アーチ、決勝でも2打席連続アーチで優勝に貢献した 「去年1年間をずっと見てきた中で、彼ならチームを引っ張ってくれる、という確信をもって新キャプテンに指名しました」と斉藤圭佑監督(=下写真)。今大会の新主将は、期待に十二分に応えてみせた。準決勝では接戦にケリをつける満塁アーチ。そして決勝は2打席連続アーチと、MVP級の働きだった。  上げ潮のムードを助長したのは、昨年までキャプテンを務めてきた石井心結だった(「2025注目戦士❾」➡こちら)。野球の知識とスキルは低学年のころから抜けており、どこでもこなすオールラウンダーとしてチームの屋台骨を背負ってきた。4年秋には公言通り、ジュニアマック初優勝で「東京No.1」にチームを導いてみせた。  そんな頼もしい支柱がしかし、昨年秋から極度の打撃不振に陥ってしまう。チームも新人戦の都大会2回戦で敗退して以降、負けが込むように。そのせいか、石井にもチームにもどこか重苦しいムードが漂い、2年前にも取材していた筆者にはハッキリと感じ取れるほどのものだった。  解き放たれたきっかけは複数あるのだろうが、そのひとつは石井の復活だと指揮官は語る。投手も兼ねるが今大会は主に遊撃手に専念し、たびたびのビッグプレーで流れを呼んだ。準決勝では、ゴロ処理で珍しく一塁悪送球したものの、すぐさま二塁ベースに入って打者走者をタッチアウトに(=下写真)。ワンミスで終わらないあたりはいかにも石井であり、名門のショートストップだ。...

【京葉首都圏江戸川/決勝】大東京にカバラあり!船橋に打ち勝ち、2年ぶり王座返り咲き

【京葉首都圏江戸川/決勝】大東京にカバラあ...

2025.03.27

 第22回京葉首都圏江戸川大会の決勝は2月24日、江戸川区・水辺のスポーツガーデンで行われ、カバラホークスが船橋フェニックスを10対6で下して、参加61チームの頂点に輝いた。2年前の4年秋に東京王者となっているカバラは久々の戴冠で、2年ぶり5回目の優勝。船橋は大会2連覇はならなかった。同日の3位決定戦は、越中島ブレーブスが品川ドリームキッズに7対0で勝利し、銅メダルに輝いている。 ※記録は編集部、学年の未表記は新6年生 ※※優勝・準優勝チームのインサイドリポートは近日中に公開します 優勝/カバラホークス [東京・足立区]   準優勝/船橋フェニックス [東京・世田谷区]   ■決勝 ◇2月24日 ◇水辺のスポーツガーデン カバラホークス(足立)  10027=10  00006=6 船橋フェニックス(世田谷) 【カ】亀田、赤坂、長野-田中 【船】高橋、中司、藤本-佐藤 本塁打/小澤2、亀田、木原(カ)、前西、桜井(船) 【評】先攻のカバラホークスは初回、一死から二番・石井心結が右前打で出塁。二死後に石井が二盗を決めると、直後に四番・亀田淳斗が左越えに長打性の当たりを放った。打球の勢いが良すぎたために、左翼フェンスに邪魔される形で、亀田は二塁で刺されてしまったが、それでもカバラは小気味良い先制パンチで1点を奪うことに成功した。  カバラは今大会初先発の左腕・亀田が力のある速球とスローボールの緩急に加え、クイックも交えて船橋フェニックスの強力打線に的を絞らせず、3回をゼロ封。しかし、打線も2回以降は船橋先発の高橋泰生に抑えられ、試合は一転してこう着状態となった。  再び均衡を破ったのはカバラ。4回表、二死から五番・小田颯心が右前打で出塁すると、続く小澤蒼大主将が左翼フェンスを越える2点本塁打。さらに5回表、二死満塁から亀田が左へサク越えの満塁弾を放つと、小田の四球後に小澤主将が2打席連続となる2ランを左翼奥の旧江戸川に放り込む。さらに木原颯太もソロ本塁打と、一挙7点を奪って、その差を10点に広げた。  さすがにセーフティリードと思われたが5回裏、船橋打線がようやく爆発する。四球と内野ゴロ失策、さらに四球で塁を埋め、四番・佐々木暦望の左前打で1点を返すと、二死後に前西凌太朗がレフトへサク越えの満塁弾。続く桜井翠は相手中堅手の頭を大きく越えるランニングホームランを放ち、一気にその差を4点まで縮めた。  流れは俄然、船橋に。しかし、そのとき、無情にも90分の試合制限時間を告げるタイマーが鳴った。四球に続く遊ゴロをカバラの遊撃手・石井がきっちりとさばき、激戦に終止符が打たれた。 ○カバラホークス・斉藤圭佑監督「やはり、簡単には終わらせてもらえませんでした。船橋さん相手では、何点あってもセーフティリードとは言えないですね。秋の新人戦では、都大会の1回戦でやられた相手でもある。選手たちにも気合を入れていこう、と話していたので、リベンジできてよかったです。(準決勝まで失点ゼロ)4年生のころから、守備は徹底的に鍛えてきた思いがあります。怖いのはやはり、フォアボールとエラーですから。なんとか守り切れてよかった。すぐに足立区の全日本学童予選が始まるので、いい弾みにしたいですね」 ●船橋フェニックス・森重浩之監督「序盤に点が取れていれば、というのはあります。クリーンアップに1本が出なかったのもありますが、チャンスでスクイズを失敗するなど、攻撃でのミスも大きかった。1つのプレーで流れは大きく変わる。これは選手にも言い続けていることなんですが、今日はずっと、流れが相手にありましたね。最終回の得点は、たまたまですよ。(3年連続の全日本学童出場がかかる)今年は去年や一昨年の選手たちに比べると小粒ではありますが、力はつけてきていると思います。世田谷の春季大会もすぐそこなので、まずは世田谷で勝てるように頑張ります」 船橋の先発・高橋(上)は4回まで力投。カバラは大会初先発の亀田(下)が3回無失点とゲームメイク...

【京葉首都圏江戸川/準決勝②】4年時東京V、カバラが来た!越中島との接戦制す

【京葉首都圏江戸川/準決勝②】4年時東京V...

2025.03.26

 第22回京葉首都圏江戸川大会の準決勝2試合は、実力派同士の好カードとなった。ともに4年時に好成績を収めており、カバラホークスはジュニアマック初Vで東京王者に。一方の越中島ブレーブスは、東京23区大会で準優勝。試合は5回表を終えて1対0と緊迫した好ゲームとなり、小澤蒼大主将の満塁アーチで5対0とダメを押したカバラがファイナル進出を決めた。 ※記録は編集部、学年の未表記は新6年生 ※※優勝チームのリポートは追って掲載します  (写真&文=大久保克哉) ■準決勝2 ◇2月22日 ◇水辺のスポーツガーデン 越中島ブレーブス(江東)  000000=0  10004 X=5 カバラホークス(足立) 【越】一木、石原-長島穂 【カ】長野、赤坂-田中 本塁打/小澤(カ) 二塁打/亀田(カ) 【評】実績だけではない。スポーツマンシップも伴う両軍の新6年生たちが、期待に違わぬ好ゲームを展開した。  先に主導権を奪ったのはカバラホークスだ。長身右腕の女子・長野星那が1回表の守りを3人で終わせるとその裏、三番・野崎太幹の四球と二盗、続く亀田淳斗の左超え二塁打で先制した。長野は2回に二死一、三塁、4回には二死二、三塁のピンチを招くも、あと1本を許さない。  越中島ブレーブスの先発・石原杏嗣も右腕がよく振れており、2回以降も得点圏に走者を負いながら追加点は許さない。3回には一死一、三塁のピンチでマスクをかぶる長島穂岳が二盗阻止など、バックの守りも堅かった。  越中島は4回から登板した右本格派の一木嶺が、荒れ気味ながら球威で押しまくる。一方のカバラも、5回から登板した赤坂聡大が全身を使って左腕を力強く振り、相手打線をパーフェクトに抑え込んでいく。こうしてスコアは1対0のまま、保たれてきた均衡が破れたのは5回裏のことだった。  3四球で二死満塁の好機を得たカバラは、六番・小澤蒼大主将が右打席へ。そしてカウント2-2から低めの球をコンパクトに振り抜くと、白球は左翼48m地点にそびえるフェンスの上を超えていった。これで一気に5対0となり、このまま決着した。 〇カバラホークス・斉藤圭佑監督「新年になってキャプテンに指名した小澤が、良いところで打ってくれました。大きな1本でしたけど、彼の良いところは打力だけではない。これからもみんなを引っ張ってくれると思います」 ●越中島ブレーブス・長島拓洋監督「打てない。ウチは去年から打撃が課題ですけど、強みは守備。ガマン比べで負けてしまいましたので、そこをどう抑え切るかですね」 先発したカバラの長野(上)、越中島の石原(下)は、ともに力強いボールを投じていた カバラは1回裏二死二塁から四番・亀田(上)が先制二塁打。直後の2回表、二死一、三塁のピンチでは中堅手・金山海洋が飛球をキャッチ(下) 越中島のベンチは、常に選手のパフォーマンスを引き出す雰囲気(上)。正捕手・長島穂(下)は二盗阻止など堅守を象徴していた 4回表、越中島は四番・石原の左前打(上)と2四球で二死満塁に。一打逆転のピンチにカバラはタイムを取り(下)、再開後に長野が三振を奪う...

【京葉首都圏江戸川/準決勝①】船橋がV2王手!3回で3アーチ14点

【京葉首都圏江戸川/準決勝①】船橋がV2王...

2025.03.24

 第22回京葉首都圏江戸川大会は2月22日、東京・水辺のスポーツガーデンで準決勝2試合を行い、ファイナリストを決した。第1試合は、前年王者の船橋フェニックスが、14対0で3回コールド勝ち。敗れた品川ドリームキッズは、初回に3本のサク越え弾を浴びるなど苦しい戦いとなったが、必ずしも悲観する内容ではなかった。写真ダイジェストと短評、ヒーローとグッドルーサーをお届けしよう。 (写真&文=大久保克哉) ※記録は編集部、学年の未表記は新6年生  ■準決勝1 ◇2月22日 ◇水辺のスポーツガーデン 品川ドリームキッズ(品川)  000=0  86×=14 船橋フェニックス(世田谷) 【品】斉藤、植本-植本、山本 【船】前西、柴原-佐藤 本塁打/佐藤、高橋、前西(船) 二塁打/佐々木、柴原 【評】前年度優勝枠で出場の船橋フェニックスは、昨秋の都新人戦で準V。選手は代替わりして、率いる指揮官も前年と異なるが、今大会も順調にベスト4まで勝ち上がってきた。対する品川ドリームキッズは、昨秋の新人戦は区大会で初戦敗退。だが今大会は特別延長の末に1回戦を突破して波に乗ると、2回戦では前年3位の鶴巻ジャガーズを1点差で退けるなど、接戦をものにして4強まで進出してきた。  迎えた準決勝は品川の先攻で始まった。二番・植本蓮主将が追い込まれてからの粘りで四球を選ぶと、続く斎藤朋之は白球を確実にミート。だが、打球の強さが災いして5-4-3の併殺打に。そしてここからは船橋のワンサイドとなった。  船橋は佐藤優一郎主将が、レフトへ先頭打者アーチ。左翼48m地点からの高いフェンスを超えていく打球をいきなり見せつけられた品川ナインには、動揺があったのかもしれない。守りのミスと与四球に船橋の四番・佐々木暦望のテキサス二塁打で3対0に。船橋はさらに、五番・高橋泰生と六番・前西凌太朗の連続アーチで畳み掛けた。  走者がいなくなり、品川の先発右腕・斎藤は空振り三振で一死を奪う。だが、船橋打線は下位もしぶとかった。藤本真至と桜井翠が連打で上位へつなぐと、四球や敵失で8対0と大きくリードした。  船橋は果敢な走塁も光った。1回にはタッチアウトになったものの、佐藤主将が本盗。2回には無死一、二塁で重盗など、スタメンの6人が盗塁をマーク。そうしてチャンスを拡大しながら、二番・柴原蓮翔と四番・佐々木の技ありタイムリーなどで2回も計6得点でスコアは14対0に。  対する品川も萎縮してばかりではなかった。走者三塁のピンチで本塁憤死や、ミスを取り戻す守備、下位打線もフルスイングが見られた。しかし、船橋の前西-柴原の継投を前に無安打に封じ込まれ、3回コールドで決着した。 〇船橋フェニックス・森重浩之監督「普通の外野フライも、ホームランになってしまう。条件は相手も同じで、ウチも前の試合で痛い目に遭いましたけど、投手には厳しいグラウンドですね。ウチは基本的には守備重視で、守れない子は試合に出られない。これからもそこは変わりません」 ●品川ドリームキッズ・山本学監督「相手はさすがの攻撃力でした。ウチとしては取れるアウトを取れなかったことが大きく響いてしまいました。そこをこれからの課題として、やっていきたいと思います」 船橋は一番・佐藤主将がいきなり先制アーチ(下)。品川の斎藤(上)は苦しいマウンドとなったが、粘り強く1回を投げ切った     1回裏、ノーアウトのまま3点を先取した船橋はなお、五番・高橋(上)と六番・前西(下)の連続アーチで6対0に 品川は山本監督が「間」を入れて(上)一死を奪うも、船橋は藤本の左翼線安打(下)から再び攻め立てて1回裏に8得点...

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【ポップ杯全国ファイナル総括】熱く燃えた“冬の神宮”2日間。新時代とロースコア勝負の幕開け!?

【ポップ杯全国ファイナル総括】熱く燃えた“...

2025.02.12

 大会史上最多の1590チームが予選に参加した、第18回ポップアスリートカップくら寿司トーナメントの全国ファイナル。「冬の神宮」は12月21日と22日に14チームによるトーナメント戦を行い、伊勢田ファイターズ(京都)の初出場初優勝で閉幕した。一般用の複合型バットの使用が禁止となる、2025年の予兆だったのか。6年生は大半が同バットを使っていたが、準決勝と決勝の3試合が奇しくも「2対0」で決着したように、僅差の好ゲームが多かった。特報のラストは、チームでも異なっていた最終テージの意義や位置付けになどに触れて、締めくくろう。 (写真&文=大久保克哉) (写真=井口大也) ※決勝リポート➡こちら 優勝=初/伊勢田ファイターズ(京都) 準優勝/新家スターズ(大阪) 3位/喜来キラーズ(徳島) 3位/しらさぎ(東京) 別れの舞台  全国10ブロックでの予選を突破した14チーム(前年優勝枠1)が集結する「冬の神宮」は、栄誉であると同時に別れの舞台でもある。この最終ステージをもって、学童野球を引退する6年生が多いからだ。  2024年大会もそうだった。初優勝で有終の美を飾った伊勢田ファイターズ(京都)と3位の2チームのほか、多くの6年生たちがラストマッチを迎えた。伊勢田の幸智之監督は「勝っても負けても、自分の納得いく野球をしなさい!」と選手たちに繰り返したという。他チームも6年生たちには、同様の声掛けをしたことだろう。 初優勝した伊勢田・幸監督の笑顔は新時代到来を予感させるようだった(上)。棚倉キッズ(福島)のエース・高坂大和は(下)は、伊勢田を相手に2回2失点も、全身を使ったきれいなフォームと躍動感が目を引いた メモリアルな1年  激戦区・東京のしらさぎは、1週間前に卒団式を終えたばかりだった。いわば、オマケのご褒美のような位置付けとなった今大会は、初出場で銅メダルに輝いた。チームの第47期生にあたる6年生たちの空前のメモリアルは、これにとどまらない。  夏の「小学生の甲子園」全日本学童マクドナルド・トーナメントにも初出場。予選で過去に2度、あと1勝の壁に阻まれてきたが、それも超えてみせた。  そして実は、このポップ杯の全国ファイナル初出場を決めた日は、伝統の東京23区大会の決勝の日でもあった。前年も同様に大会(試合)が同日に重なり、どちらも敗北。だが、1学年下の後輩たちが先輩たちの無念も晴らしたのだった。 準決勝の6回表、一死から二番・飯田琉羽空が放った右前打(上)が、しらさぎの6年生のラストヒットとなった  41回を数える23区大会の初優勝と、「冬の神宮」初出場をダブルで決めた日を、巡回指導する村社研太郎コーチは感慨深げにこう振り返った。 「いやぁ、痺れましたね。6年生(13人)のサブメンバーがすごく頑張ってくれて。9人、9人に分けてそれぞれの大会に行きました。5年生11人も入ってくれて、去年の教訓を生かして何とか両方勝てた感じです」 夏王者の貫禄  夏の「小学生の甲子園」に続いて、「冬の神宮」にも出場したのは、しらさぎの他に、準優勝した新家スターズ(大阪※2大会とも前年優勝枠)、北ナニワハヤテタイガース(兵庫)、平川Jr.ベースボールクラブ(青森)と、計4チーム。貫録を示したのは、新家と平川だった。 5年時には全国3冠に貢献した新家の藤田凰介主将(上)と山田(下)。2年連続の3冠はならずも、堂々たるプレーぶりだった。山田は3試合連続の決勝打、投打に健脚も際立った  夏の全日本学童と高野山旗に続く全国3冠を狙った新家は、今大会は左投左打の山田拓澄がMVP級の大活躍(リポート➡こちら)。もちろん、看板選手におんぶに抱っこのチームではない。  大会を通じて堅守と勝負強さが際立ち、外野陣の守備範囲はピカイチだった。それを象徴していたのが、西埼玉少年野球(埼玉=下写真)との注目の1回戦だった。  西埼玉は5年秋の新人戦で県大会を制している。全国王者にも持ち前の強打で立ち向かい、2回、4回、5回と好機をつくった。そして4回二死二塁では四番・熊田結翔がセンターへ、特別延長の7回には二死満塁で七番・成田煌がレフトへ。両翼70mの特設フェンスがあれば、いずれも超えていただろうという大飛球を放った(※大会初日の準々決勝までは、外野フリーで開催)。 1回戦で全国2冠王を追い詰めた西埼玉。2回に杉山拓海(上)と成田(下)のヒットに四球で一死満塁に...

【ポップ杯全国ファイナル/好勝負選②準々決勝】初回に先制ソロ、最終回に同点ソロ、そして軍配は…。

【ポップ杯全国ファイナル/好勝負選②準々決...

2025.01.29

 第18回ポップアスリートカップくら寿司トーナメントの全国ファイナル。「冬の神宮」の好勝負セレクション第2弾は、最終回の二死無走者から振り出しに戻った準々決勝の一戦にフューチャーする。開始から間もなくして日没で北風も強まる中、最後までどちらに転ぶかわからない熱戦だった。 (写真&文=井口大也) ◇準々決勝 ◇12月21日 経田野球スポーツ少年団(富山)  000001=1  100001x=2 しらさぎ(東京) 【経】永井、朝野拳、島澤大-島澤大、朝野拳 【し】新井、田中-方波見 本塁打/石田(し)、朝野拳(経) 1回裏、しらさぎは三番・石田のランニングホームランで先制する   試合の流れを左右する「初回」と、勝負が決する「最終回」。いわば、入り口と出口で見せ場がそれぞれ訪れたが、その間も引き締まった内容の好ゲームだった。  まずは1回裏、しらさぎの三番・石田波瑠が口火を切った。一走のけん制死で二死無走者となり、先制の機運がしぼみかけた直後の2球目を力強くインパクト。痛烈な打球は瞬く間に左中間を破り、先制のランニングホームランとなった。  1回表を3者凡退で立ち上がっていた先発左腕の新井葵葉は、1点のリードをもらってさらに波に乗った。柔らかなフォームからキレのいいストレートを投げ込んだかと思いきや、山なりの遅球“イーファス・ピッチ”も織り込む投球で相手打線を手玉に。4回二死からの与四球で2番手の田中伊織にバトンタッチするまで、走者を1人も許さない快投だった。 いきなり被弾した経田の先発・永井だが、柔軟なフォームが目を引いた  対する経田(きょうでん)野球スポーツ少年団は、継投で互角に試合を運んだ。立ち上がりで一発を浴びた永井結大は、2回には一死三塁のピンチもあったが、丁寧にコーナーを突く投球で後続を断つ。3回から登板した朝野拳心主将は、抜群の球威で打者9人をシャットアウトした。  また、双方のバックの活躍にも目を見張るものがあった。しらさぎの二塁手・三原泰芽(=下写真)は4度の守備機会を捌き切り、中堅へ抜けようかというゴロに素早く追いついての一塁ストライク送球で奪ったアウトも。経田は捕手の島澤大将が難しい飛球も処理し、2投手をしっかりとリードしながら流れをイーブンに食い止めてきた。  1点を追い続けながら、無安打で反撃の糸口さえつかめない経田打線は、最終6回表も二死で走者なし。だが、この崖っぷちで起死回生の同点ランニングホームランが生まれた。打ったのは3回から快投を続けていた主将、一番の朝野拳だ。打球は左中間を抜けていき、ダイヤモンドを疾走する背番号10が本塁を駆け抜けると、ベンチとスタンドの応援席はお祭り騒ぎに(=下写真)。  しかし、「夏の夢舞台」全日本学童1回戦でも接戦を演じていた、しらさぎは慌てていなかった。1対1で迎えた6回裏、先頭の一番・井手上季稜が遊撃手後方にポテンヒットを放つと、一瞬のスキを逃さずに二塁を陥れた。後続2人は倒れて二死三塁となるが、四番・新井は高く弾むゴロを打って一塁へ全力走。  この新井の打席結果が、公式記録は内野手の失策となっているが、打者走者をアウトにするには難しい打球とタイミングであり、サヨナラ内野安打が妥当と思われる。ともあれ、これで勝負あり。最後まで手に汗握る、がっぷり四つの大接戦であった。 〇しらさぎ・坂野康弘監督「(日も陰り風も強まる中で、打撃面が)寒い試合でしたね。チャンスを逃し続けるとこういう試合になる。もうちょっと打ってもよかったと思うけど。経田さんも本当に良いチームで、出てくる投手がみんな良かったですね」 ●経田野球スポーツ少年団・高瀬友也監督「(目に涙を浮かべ)何とか勝たせてやりたかった。ノーヒットノーランで進んでしまっていた中で、6回表は何とか1本打ってくれ、という気持ちでした。子どもたちには中学、高校と次のステージがあるので、この経験を糧にしてもらいたいです」   ――Hero❶―― 緩急自在の投球にV打 新井葵葉...

【ポップ杯全国ファイナル/好勝負選①1回戦】美技の応酬で6回まで0対0、特延で決勝満塁HR

【ポップ杯全国ファイナル/好勝負選①1回戦...

2025.01.27

 第18回ポップアスリートカップくら寿司トーナメントには、全国から1590チームの参加があった。その頂点を決する「冬の神宮」での全国ファイナルは、9ブックの代表13チームと前年王者によるトーナメントを2日間で消化。『学童野球メディア』は全13試合を取材した中から、特筆したいゲームをピックアップ。まずは守備のファインプレーの応酬で、0対0のまま特別延長戦に突入した1回戦から。オールドルーキーの記者が、ここにデビューする。 (写真&文=井口大也) ◇1回戦 ◇12月21日 浜松ブラッツ少年野球団(静岡)  0000006=6  0000002=2 木屋瀬バンブーズ(福岡) ※特別延長7回 【浜】藤原、戸塚、藤原-鈴木 【木】生島、岡部、井上-大町 本塁打/藤原(浜) 三塁打/柳本(浜)  序盤からハイレベルな守備の応酬で、両軍ともにノーエラー。積み上げてきた練習の日々が垣間見えるような、非常に引き締まった好ゲームであった。 バットを振る木屋瀬・中川芳生監督(上)は指導歴30年超。外野陣は矢のような本塁送球を戦前から披露していた  まず魅せたのは、試合前のシートノックで素晴らしい仕上がりを見せていた、木屋瀬(こやのせ)バンブーズだった。  1回表、浜松ブラッツ少年野球団の三番・戸塚琉空が、一死一塁から右中間を破ろうかという痛烈な当たりを放つ。これを中堅手の川原叶太が快足を飛ばしてダイレクトキャッチ。飛び出していた一塁走者を刺して、併殺を完成させた。  木屋瀬の先発右腕・生島侑樹(=下写真)はこれで波に乗り、2回には3者連続三振を奪う。そしてそのまま既定の70球で6回を投げ切り、被安打1の無失点という快投を演じた。  一方の浜松も冒頭から守備のファインプレーがあり、投げては藤原星之介-戸塚とつないで6回までゼロを並べていくことに。この流れを呼んだのがマスクを被る鈴木笙馬だった。  1回裏、木屋瀬は一番・川原の右前打と、続く永嶋璃陽斗(4年)のバントで一死二塁とする。しかし、続く三番打者の意表を突くバントが小飛球となるや、捕手の鈴木が素早く反応して刺殺(刺殺:フライをキャッチするなど、その選手が直接アウトを取ること)。さらにそのまま二塁へ転送し、スタートを切っていた二走もアウトにしてみせた。  2回以降も双方の守備でファインプレーが続発した。木屋瀬は4回に6-4-3の併殺を決めたほか、遊撃の山本瑞己主将や右翼の藤田海智(5年)がヒット性の当たりを好捕。浜松は小栗篤登が2回にライトゴロを決め、途中で左翼から三塁へ回った柳本琴音は適切な打球処理で内野安打も許さなかった。  0対0で保たれた均衡は、無死満塁で始まる特別延長でまさしく「ブレーク」した。引き金を引いたのは浜松の二番・藤原だ。7回表、先頭で打席に立つと、フルカウントからの6球目をジャストミートし、左中間を大きく破る満塁ランニングホームランに。一気に4点を入れた浜松はなおも、柳本の適時三塁打やスクイズで6対0とした。  浜松の山下孝平監督(=下写真)は息子の卒団を機に指揮官となって14年目で、仕事の都合で6年生たちとともにユニフォームを脱ぐことになっている。その指揮官から「お祭り男」と評される藤原は、7回裏に四球と内野ゴロで2点を失ったところで再登板。そして2者連続の奪三振で締め、記念すべき全国1勝を恩師にプレゼントした。 〇浜松ブラッツ少年野球団・山下孝平監督「粘って粘って我慢比べして、最後に点を取って勝つのがチームのスタイル。個々の能力は相手が上でしたが、スタイル通りの試合展開に持ち込むことができました」 ●木屋瀬バンブーズ・中川芳生監督「初回のバントエンドラン失敗(併殺でチェンジ)が痛かったですけど、子どもたちはよく戦いました。全国の舞台になると、ワンプレーで試合が決まる。5年生のレベルが高く(スタメン4人)、6年生は後半に代打攻勢で出場してもらいました。また(全国の舞台に)戻ってきたいです」   ――Hero❶――...

【ポップ杯全国ファイナル決勝】伊勢田が有終の初V、絶対王者・新家の年3冠阻む

【ポップ杯全国ファイナル決勝】伊勢田が有終...

2025.01.22

 新時代が到来!! 第18回ポップアスリートカップくら寿司トーナメントの全国ファイナル。「冬の神宮」は、京都・伊勢田ファイターズの初出場初優勝で閉幕した。同チームの6年生はこの大会で引退とあってか、アグレッシブかつ一丸の戦いぶりが目を引いた。前年王者の大阪・新家スターズとの決勝は、前半で2対0とリードしてからも攻撃的なスタイルで逃げ切った。一方の新家は、夏の全日本学童マクドナルド・トーナメントと高野山旗の2冠を達成しており、年3冠で先輩たちに続くことはできなかったものの、威厳のある散り際だった。 (写真&文=大久保克哉) 決勝 ◇明治神宮野球場 ◇12月22日 ◇第3試合 新家スターズ(大阪)  000000=0  011000=2 伊勢田ファイターズ(京都) 【新】庄司、今西、庄司、今西、庄司-藤田、庄司、藤田 【伊】幸、田見、大西、幸-森田 二塁打/貝谷(伊)  幕切れは唐突だった。あれっ、終わり!?――。フィールドもベンチもスタンドも、そこにいた多くが確認をしたのだろう。15秒もなかったかもしれないが、Vチームの歓喜の輪ができるまでには、停止画像のような「間」があった。 2冠王のプライド  最後のワンプレーの判定について、敗軍からクレームがあったわけではない。むしろ、プライドも感じるほど潔かった。「機械が判定するものではないし、審判さんも一生懸命にやってくれて、ジャッジがあっての野球なので。それまでに自分たちの力を出せんかったのが、アカンかったところかなと思います」と、新家スターズの吉野谷幸太監督。  それでも、舞台は「全国」と名のつくところ。それも参加1590チームの頂点を決める大一番の、ひとつの勝負所でもあった。ゆえに、ラストプレーについても触れないわけにはいくまい。  それは6回表、0対2でリードされている新家の攻撃中だった。一死から三番・藤田凰介主将が中前打(=上写真)。続く四番・庄司七翔が右前打で一死一、二塁と好機が広がった(=下写真)。  長打なら同点、サク越え弾なら一気に逆転となる。夏の全日本学童の初戦では、同様の土壇場で黒田大貴が逆転決勝3ランを放っていた(リポート➡こちら)。新家とすれば、勝機はまだ十分。少なくとも、勝負を諦める状況ではないし、ひっ迫して自滅するような軟な選手たちでもない。彼らは前年に続いて、すでに全国2冠を達成していた。  一死一、二塁から五番打者が放った打球は、内野の上空へゆるゆると力なく上がった。そしてこれを内野手はダイレクトで捕球できず。白球が人工芝に跳ねると同時に、一走と二走が次塁へ走るも、二塁ベース手前で1人がタッチされて「アウト!」に。そして試合終了が告げられた。新家サイドへは、審判団からこういう説明があったという。 「インフィールドフライを宣告したので打者は即アウトで2アウト。そのままインプレーで走者がタッチアウトで3アウト」  その後、内外で多少の議論となったのは、インフィールドフライの判定(適用)の是非だった。このルールは、故意落球での重殺など攻撃側の不利益を回避するためのもので、インフィールドフライの宣告は『審判員が「内野手が普通の守備行為を行えば捕球できる」と判断したもの』と定義されている。 6回表、一死一、二塁のピンチとなったところで、伊勢田は幸監督がタイムを取ってマウンドへ。そして再開後、すぐに幕引きとなる  今回の打球は打ち取られた当たりながら、ポテンヒットもありそうな微妙なフライだった。そして内野手は捕球体勢に入れておらず、単純に捕れなかっただけのようにも見えた。 「普通の守備行為で捕球できる」という即座の判断は、一塁側のカメラマン席にいた筆者にもできず。歓声のためか「インフィールドフライ!」の声も聞こえなかった。それぞれ次塁へ走った2人の走者も然り、だったのだろう。百戦錬磨の新家の主力選手たちが、インフィールドフライの定義と対処を知らないはずがない。  ともあれ、審判のジャッジは覆らないのがアマチュア野球。万人が後味スッキリではなかったものの、勝者には何ら非はないし、優勝にケチがつくものでも断じてない。 大会を通じて、伊勢田は扇の要・森田(写真上中央)を中心とした堅い守備と明るさが目を引いた...

【ポップ杯全国ファイナル/準決勝❷京都vs.徳島】写真ダイジェスト&ヒーロー&グッドルーザー

【ポップ杯全国ファイナル/準決勝❷京都vs...

2025.01.19

 第18回ポップアスリートカップくら寿司トーナメントの全国ファイナル。「冬の神宮」の準決勝第1試合は、ワンサイドの内容ながら、最後まで緊張が途切れなかった。京都・伊勢田ファイターズは、2年連続で夏の全国出場中と躍進が目覚ましく、今大会では夏の「小学生の甲子園」準Vの強豪も撃破。一方、全選手が200人規模の喜来小(きらい)に通う徳島・喜来キラーズは、普段着の野球で勝ち進んできた。両軍のマッチアップで、ヒーローとグッドルーザーが生まれている。 (写真&文=大久保克哉) 準決勝 ◇12月22日 ◇第1試合 伊勢田ファイターズ(京都)  010010=2  000000=0 喜来キラーズ(徳島) 【伊】幸、田見-森田 【喜】富士田煌、下村、矢間勇-山本 二塁打/貝谷、森田、荻田(伊) 【評】大量点を奪えそうで奪えない伊勢田と、大崩れしそうで耐える喜来。双方向の「ガマン比べ」が続いた6イニングだった。1回はともに三番打者が右前打も無得点。2回表、伊勢田は六番・荻田琉聖の左前打と連続の敵失で先制する。なおも無死三塁からスクイズ(ファウル)など攻め立てるが、喜来の先発・富士田煌途が加点を許さない。2回裏は喜来が、六番・下村悠真の左前打とバントで二死二塁とするも、伊勢田の先発・幸大貴主将がやはり踏ん張って無得点に。そして3回から救援した伊勢田の田見哲也は、スローボール主体に打たせて取る投球が冴え、許した走者は四球と内野安打の2人だけだった。攻めては3回、4回と、三塁に走者を置きながら無得点と嫌なムードもあったが、5回に四番・森田颯真の中越え二塁打と六番・荻田の右越え二塁打で、待望の追加点が生まれて2対0に。喜来は4回から右の下村悠真、5回途中から左の矢間勇冴がそれぞれ粘投したが、打線は反撃の糸口をつかめなかった。結果、毎回走者を出して押し気味に試合を進めた伊勢田が、僅差で喜来を振り切って決勝進出を決めた。 ●喜来キラーズ・髙井和人監督「ピンチの連続の中で『ワンチャンあるから!』と言い続けてきて、何とか持ち堪えたんですけどね。相手の2番手投手に、うまく打たされてしまいました。それでも最終回に中川(優懼)が内野安打で出ましたし、子どもたちは最後までようがんばりました。神宮の土を踏めたことは人生でも財産になると思いますし、ここまで連れてきてくれたことに感謝しています」 2回表、伊勢田は先頭の荻田が左前打(上)、続く七番・松倉駿(5年)の内野ゴロが相手の連続ミスを誘って先制。なおも無死一、三塁としたが、喜来の右腕・富士田煌(下)が90㎞台半ばの速球で押して追加点を許さず 喜来は2回裏、六番・下村の左前打(上)と七番・森悠晴主将の犠打で二死二塁とする。だが、バント処理も落ち着いていた伊勢田の先発・幸主将(下)が後続を断つ 3回は双方が堅守で無失点に。喜来は三塁手・松永紋侍のゴロ処理で3アウト目を奪い(上)、無死一、三塁からの大ピンチを脱した。伊勢田は正捕手・森田が二盗を阻止(下) 伊勢田は2番手の田見が3回1安打1四球で無失点の快投(上)。5回表は先頭の四番・森田(下)がまずは中越え二塁打 5回表、一死三塁で喜来は左腕の矢間勇がマウンドへ。攻める伊勢田は、幸智之監督が三走の森田と打席の荻田を呼んで言葉を掛ける(上)。再開後、荻田は右越えタイムリーと敵失で一気に三進(下) 遅球を打たされて3回から無安打だった喜来は6回裏、二死から二番・中川が意地の内野安打(上)、続く富士田煌も中前へライナーを放つ。だが、途中出場の伊勢田の中堅手・臼田塁人(5年)がダイレクト捕球で試合終了(下)   ―Pickup Hero― 仲間に恩返しの好守&2安打 かいたに・だいき 貝谷大騎 [伊勢田6年/二塁手]...

たかが3球、されど3球。冬の神宮を熱した“珠玉の対決”~ポップ杯全国準決勝❶~

たかが3球、されど3球。冬の神宮を熱した“...

2025.01.16

「冬の神宮」は栄誉であると同時に、6年生には“別れの舞台”となることも多く、夏とはまた違ったドラマがある。中でも真っ先にお伝えしたいのが、勝負所で正々堂々の力勝負でスタジアムを沸かせた2人の6年生と、わずか3球の勝負に詰まった、あれこれ。2024年の12月21・22日に東京・明治神宮野球場で行われた、第18回ポップアスリートカップくら寿司トーナメントの全国ファイナル。リポートは準決勝の第2試合、“珠玉の6年生対決”から始めよう。 (動画&写真&文=大久保克哉) ※全球対決動画1min➡こちら ドラマの主人公は2人の6年生。しらさぎ・田中伊織(上)と、新家・山田拓澄(下) 準決勝 ◇12月22日 ◇第2試合 しらさぎ(東京) 000000=0 00002 X=2 新家スターズ(大阪) 【し】新井、田中-方波見 【新】山田-庄司 本塁打/山田(新) 二塁打/方波見(し) スコアレスの5回表までの山場は2回表だった。しらさぎが五番・方波見大晴主将の二塁打(上)と犠打で一死三塁とし、七番・田中の2球目でスクイズ。だが、新家ベンチはこれを読んでのウエスト指示で空振り(中央)、三走はタッチアウトに(下)  投手は全力で腕を振って快速球を投げ込み、打者は確かなステップからフルスイングで応じる。プロ野球のオールスターゲームのような真っ向勝負が、学童の大舞台で実現した。  たかが3球、されど3球。ボールカウント1-1からの3球目を前に、冬の神宮は一瞬の静寂に包まれたのち、ライト方向へ舞い上がっていく白球とともに大歓声に包まれた。結果、神々しいまでに明と暗とに分かれた両雄だが、どちらの野球人生にも明るい未来が待っていることだろう。 いきなり大会最速111㎞  バックボーンも異なる6年生の2人が、マウンドと打席で対峙したのは、ポップアスリートカップの全国ファイナル準決勝。0対0で迎えた5回裏、大阪・新家スターズの攻撃のことだった。  守る東京・しらさぎは、この回から左翼の田中伊織が二番手でマウンドへ。気合いの五輪刈りの右腕はいきなり、111kmのスピードボールを投じた(=下写真)。  準決勝2試合と決勝の3試合が行われた大会最終日は、バックスクリーン上の電光掲示に投手の球速が表示されていた。4チームで計11人(同一選手の重複含む)が登板した中で唯一、「110」の壁を超えたのがこの田中だった。自己最速115㎞には届かなかったものの、やがて迎えた最強の打者を前に、スピードはさらに増していくことになる。 「左の新井(葵葉)から右の田中という、いつもの予定通りのウチの継投でした」と振り返ったのは、しらさぎの坂野康弘監督。試合直前に、采配は2試合(同日の決勝も)を想定して行うかを問うと、こう即答していた。 「もちろん一戦必勝です!(準決勝の)相手はチャンピオンですから!」  そう、新家は絶対的な王者である。夏には「小学生の甲子園」全日本学童マクドナルド・トーナメントで、2連覇を達成していた。このポップ杯も前年優勝枠の出場で予選は免除。前日の全国ファイナル初日は、西埼玉少年野球(埼玉)と平川Jr.ベースボールクラブ(青森)にそれぞれ完封勝ち。V2まであと2勝に迫っていた。 度肝抜く王者の金看板...

『学童野球メディア』2024年MVPは!?

『学童野球メディア』2024年MVPは!?

2024.12.31

 2024年の大みそか。『学童野球メディア』から、第2代の年間最優秀選手を発表します。当メディアは日本唯一の学童専門の報道メディアとして、昨秋の新人戦から1年間、できる限り現場に足を運んでレポートをしてきました。大会取材だけでもスコアブック3冊以上、100試合を超えます。夏の夢舞台「全日本学童マクドナルド・トーナメント」は、全50試合のうち18試合の取材など、すべては網羅できていません。それでも、直接に見て聞いた6年生は相当な数になります。その中から『2024年MVP』を選出。そして改めてインタビューすると、新たな真実も明かされました。 (選出=編集部/写真&動画&文=大久保克哉) 【2024年最優秀選手】 ほそや・なおき 細谷直生 [東京・不動パイレーツ] 6年/一塁手兼捕手/右投右打/157㎝69㎏ ※プレー動画➡こちら 【主な成績と掲載記事】 ※時系列、掲載順 東日本交流大会★準優勝➡こちら 全日本学童都大会★準優勝 ・チーム紹介➡こちら 全日本学童大会★3位 ・準決勝➡こちら ・名勝負❷➡こちら ・名勝負❹➡こちら ・『金の卵』12戦士➡こちら 東京都王座決定戦★優勝➡こちら  夏の「小学生の甲子園(全日本学童)」のリポートでも触れたかもしれないが、昨年はやはり、特異だったようだ。初代MVP(➡こちら)に輝いた藤森一生(東京・駿台学園中1年)は、全国舞台で最速124㎞を投じている。  今夏の全国取材では、120㎞超のスピードボールを見ることはなかった。当メディアが1年間、現場を回った限りでは、そういう突出した“未来モンスター”には出会えず。もちろん、粒はそろっていたし、「今年は例年並」という評価が適切なのだろう。  そういう中から、能力や成績にフィールドでのパフォーマンスや衝撃度、野球に取り組む姿勢やキャラクターも加味した上で、「2024年MVP」を決した。 夏の全国舞台で3アーチ  不動パイレーツ(東京)の細谷直生。夏の全国大会は4強入り。持ち前のパンチ力で大会単独2位となる3本のサク越えアーチを放っている。出場するだけでも至難の全国舞台で、よりハイレベルとなる準決勝以降の本塁打は、この右バッターの1本だけだった(※全39本塁打一覧➡こちら)。  全国V2を遂げることになる大阪・新家スターズに準決勝で敗北も、序盤から一方的にリードされた中で、一時1点差に迫る細谷の2ランに神宮はどよめいた。見逃せば明らかなボール球の高めを、強引にレフトの70m特設フェンスの向こうまで運んだ(=上写真)。  またそれ以上の殊勲で、ベンチとスタンドをお祭り騒ぎとしたのが、3回戦の終盤に放った逆転2ラン(=下写真)だった。全国大会常連の強豪、愛知・北名古屋ドリームスに4回まで0対2とリードされており、打線は散発の3安打。守っても与四球やエラー絡みで失点と、敗北の色が増す中で、5回表にようやく1点を返す。...

【関東新人戦決勝】東京勢V3。ミス&フォロー、旗の台が初の最高峰で破顔一笑

【関東新人戦決勝】東京勢V3。ミス&フォロ...

2024.12.28

 ノーブルホームカップ第26回関東学童秋季大会は11月24日、東京・旗の台クラブの初優勝で閉幕した。同日の準決勝に続くダブルヘッダーとなった決勝は、栃木・阿久津スポーツと激しい点取り合戦に。旗の台は計13選手、5投手をつぎ込んでこれを制し、秋の最高位となる関東チャンピオンに輝いた。そんな王者のインサイドストーリーと、グッドルーザーもお届けしよう。 ※記録は編集部、学年未表記は5年生 (写真&文=大久保克哉) 優勝=初 [東京] 旗の台クラブ   準優勝 [栃木] 阿久津スポーツ   ■決勝/第3試合 ◇11月24日 ◇茨城・水戸 旗の台クラブ(東京)  00344=11  01140=6 阿久津スポーツ(栃木) 【旗】栁澤、岡野、豊田、大島、大野-岡野、遠藤 【阿】二ノ宮、川尻、森田-丸山 二塁打/川尻(阿)、岡野(旗)、丸山(阿)、国崎(旗)    関東王者を決める大一番。結果としてクローズアップされたのは『投手は1日70球まで』という投球制限ルールだった。というのも、双方の先発投手が70球に達しての降板から試合が激しく動いたからだ。 規定70球まで投げ合い  後攻めの阿久津スポーツは、エースの栗林海斗が準決勝で70球を投じており、決勝は遊撃の守備へ。準決勝で救援していた右腕・二ノ宮直之が、決勝のマウンドで43球目からスタートした。  90㎞前後の速球を中心に、相手の強力打線を2回までヒット1本に抑える好投。先制直後の3回表に、テキサス安打とバックのミスで1対1に追いつかれたものの、続く打者を二飛に打ち取って70球、お役御免となった。 「この大会は栗林も二ノ宮も、素晴らしいピッチングをしてくれて、ウチらしい守り勝つ野球ができました」と、阿久津・小林勇輝監督は両右腕を称えた。...

【関東新人戦準決勝❷神奈川vs.東京】写真ダイジェスト&ヒーロー

【関東新人戦準決勝❷神奈川vs.東京】写真...

2024.12.27

 ノーブルホームカップ第26回関東学童秋季大会の準決勝第2試合は、ともに失点につながるミスがありつつも、投手陣が粘り強く投げて1点を争う好勝負に。4年前はコロナ禍で中止という憂き目を経験している東京・旗の台クラブが、2015年王者の神奈川・平戸イーグルスを振り切り、決勝進出を決めた。 ※記録は編集部、学年未表記は5年生 (取材&文=大久保克哉) ■準決勝/第2試合 旗の台が接戦制す。平戸は主将が完投 ◇11月24日 ◇茨城・水戸 平戸イーグルス(神奈川)  002000=2  210000=3 旗の台クラブ(東京) 【平】富田-小林琉 【旗】豊田、栁澤-遠藤 二塁打/岡野(旗) 【評】旗の台の好守で始まった。1回表、一死二塁のピンチで左翼線へのライナーを岡野壮良が好捕。二塁手の国崎瑛人も後方の飛球を倒れ込みながら捕球し、無失点で立ち上がる。直後の1回裏、一番・高市凌輔から二番・柳咲太朗、三番・国崎までの3連打で先制した旗の台が2回に加点する。七番・岡野が右翼線へ二塁打、遠藤雄大主将が犠打を決めると、一・二番コンビが連続タイムリーで3対0に。対する平戸は3回表に反撃。先頭の太田修穂が四球を選ぶと、二番・横地樹と三番・高田幸太郎(4年)の連打で満塁とし、敵失で2点を返した。平戸は先発右腕の富田涼太主将が、3回から無安打投球。マスクを被る小林瑠珈は二盗を阻止、4回にはウエストでスクイズも阻んだ。旗の台も左腕の豊田一稀が4回まで毎回走者を負いながら2失点(自責0)に抑え、5回からは栁澤勇莉が無安打投球で逃げ切った。 ●平戸イーグルス・中村大伸監督「取れるアウトを取れないと失点につながっちゃうよ、というのは言わずもがな。まだまだ、勝った負けた、という時期じゃないけど、良い経験になったと思います。課題がすんごい山積で、やることてんこ盛りですので早く帰って練習したい(笑)。1つの失敗を引きずらないようにしてほしいなと思っています」 第3位 [神奈川] 平戸イーグルス   1回表、平戸は一死二塁から三番・高田(4年)が左翼線へヒット性の当たり。これを旗の台の岡野がダイレクト捕球(上)で二死、続く二塁後方への飛球は国崎が好捕(下)して攻守交代 1回裏、旗の台は高市が遊撃頭上へ先頭打者ヒット(上)、二番・柳は三遊間を破って(下)続くと、三番・国崎がセンターへ先制タイムリー 2回裏、旗の台は七番・岡野が右翼線へ二塁打(上)。二死三塁となって高市が中前タイムリー(下)で2対0に 2回裏、2対0とした旗の台は、なおも二番・柳の左前打(上)で加点。序盤で失点した平戸の先発・富田主将(下)だが、以降は打者10人を無安打に封じていくことに  3回表、平戸は二番・横地(上)と三番・高田(下)の連打や四球、敵失で2点を返す 追加点が欲しい旗の台は4回裏、敵失から好機を広げて九番・米田然がスクイズ。平戸のバッテリーはこれをウエストで外し、三走をタッチアウトに(下) 旗の台の先発・豊田(上)は4回5安打2失点とゲームメイク。二番手の栁澤(下)は2回2四球も、無安打無失点で締めた...

【関東新人戦準決勝❶栃木vs.茨城】写真ダイジェスト&ヒーロー

【関東新人戦準決勝❶栃木vs.茨城】写真ダ...

2024.12.26

 関東新人戦の2日目は、準決勝2試合と決勝を行い閉幕。準決勝の第1試合は、22年ぶり3回目出場の栃木・阿久津スポーツが、7年ぶり6回目の優勝を期す茨城・茎崎ファイターズに完勝した。1回戦同様に大技小技で序盤からリードを広げ、エース右腕がゲームをつくって逃げ切った。1回戦でV候補の千葉・豊上ジュニアーズを下していた茎崎は、序盤の守りのミスが尾を引いてしまった形に。指揮官は来年に向けてチームの立て直しを口にしている。 ※記録は編集部、学年未表記は5年生 (取材&文=大久保克哉) ■準決勝/第1試合 阿久津が攻守でリード、茎崎の追撃かわす ◇11月24日 ◇茨城・水戸 阿久津スポーツ(栃木)  301200=6  000003=3 茎崎ファイターズ(茨城) 【阿】栗林、二ノ宮-丸山 【茎】山﨑、石塚-佐々木 二塁打/湯浅(阿)、柿沼、本田(茎) 【評】終わってみれば毎回安打の阿久津が、守りでも相手を上回って完勝した。四球や敵失絡みで開始から6球で先制すると、四番・湯浅朝陽が逆方向への適時打で2対0に。なお一死満塁からのスクイズバントは投前に転がって三走は本塁封殺も、2-3-2と転送(失策)の間に二走・湯浅が生還した。茎崎は2回裏、四球や敵失などで一死二、三塁としてスクイズも、これが飛球となって併殺で無得点に。波に乗る阿久津は3回、湯浅と川尻一太主将の連打で無死一、三塁に。ここで二盗は阻まれるも、直後に六番・森田哲大がスクイズ(野選)を決めて4点目。4回は川尻の中前2点タイムリーで6対0とした。6回裏、茎崎は3四死球と渡部竜矢主将の一ゴロでようやく1点を返す。さらに代打・本田大輝の左越え二塁打で2点を加えたが、反撃もここまでだった。 ●茎崎ファイターズ・吉田祐司監督「初回にバタバタして(3失点)、リズムに乗れなかったのがすべてですね。あれだけリズムが狂うと、なかなか難しいし、バッティングに頼っているとこんなゲームになってしまう。冬場はもう一度、全員がゼロからスタート。レギュラーも何もなく、フラットな状態から競争してもらいます。チームとしては経験値がまだまだなので、上で戦えるように経験も積んでいきたいと思います」 第3位 [茨城] 茎崎ファイターズ   1回表、阿久津は一死一塁から二番・平山皓哉(4年)の犠打(上)が敵失を誘って先制。茎崎は吉田監督がタイムを取る(下) 1回表、2点を先取した阿久津はなお、一死満塁から二ノ宮直之がスクイズ(上)。低めの球にヒザを追って対応したバントは投前に転がり、三走は本塁封殺も、一塁転送の間に二走・湯浅が生還(下) 3点を追う茎崎は2回裏、四球と敵失に百村優貴(4年)の犠打(上)で一死二、三塁とする。そしてスクイズ敢行も、阿久津の右腕・栗林海斗の好フィールディングで投直併殺に(下) ピンチを脱した阿久津は直後の3回表、四番・湯浅が左中間二塁打(上)を放つと、五番・川尻主将が左前打(下)で続く。二盗失敗で一死三塁となるも、六番・森田がスクイズを決めて4対0に 4回表、阿久津は先頭の九番・岡田大翔(4年)の内野安打(上)から二死満塁と攻め立て、川尻の中前打(下)で2人がホームイン   打線が沈黙していた茎崎は4回に百村がチーム初安打(上)、5回には代打・柿沼京佑が右中間へ二塁打を放つも、ともに得点ならず...

【関東新人戦1回戦❹群馬vs.東京】写真ダイジェスト&チームストーリー

【関東新人戦1回戦❹群馬vs.東京】写真ダ...

2024.12.10

 ノーブルホームカップ第26回関東学童秋季大会。1回戦の第4試合は、双方ともノーエラーで1点を争う好勝負が展開された末、逆転サヨナラで決着した。敗軍には多くの涙があったが、そのプレーぶりやベンチワークは、未成熟な時期の模範とも言えるものだった。そのクローズアップを、写真ダイジェストとともにお届けする。 ※記録は編集部、学年未表記は5年生 (取材&文=大久保克哉) ■1回戦/第4試合 6回二死満塁、四番が逆転サヨナラ打 ◇11月23日 ◇茨城・水戸 玉村ジュニアBBC(群馬)  010000=1  000002x=2 旗の台クラブ(東京) 【玉】山本大-小湊 【旗】豊田、栁澤-岡野 二塁打/柳、米田、大島(旗) 【評】編成は好対照なチームが、ともに無失策の好ゲームを展開した。旗の台のスタメンはオール5年生。先発した左本格派の豊田一稀は、5回まで毎回の計7奪三振と力投する。しかし、先制したのはスタメン6人が下級生で、うち2人は3年生という玉村だった。2回表、野口杏斗主将と小湊煌月(4年)の連打から無死二、三塁として、井上楽惟がスクイズに成功。旗の台は3回裏、米田然の二塁打から一死三塁として、高市凌輔が逆方向へゴロを転がすも、二塁手・野口虹斗(3年)の本塁好返球で同点ならず。以降は静かに進んで迎えた6回裏、旗の台打線がついに目覚めた。玉村の右腕・山本大芽は、遅球を巧みに使って5回まで被安打2。しかし最終回、旗の台が八番・米田から泉春輝、高市まで3連打で無死満塁に。二塁手の野口虹が2度目の本塁好返球など、玉村は勝利までアウト1つとするも、旗の台の四番・大島健士郎が左中間へサヨナラ打を放って幕が下りた。 両先発が好投。旗の台の豊田(上)は90㎞台後半の速球で押し、玉村の山本大(下)は70㎞台の遅球を巧みに投げ分けた 1回裏、旗の台は二番・柳咲太朗(上)の左越え二塁打と、国崎瑛人のバント(下)で二死三塁とするも、無得点 2回表、野口杏主将(上)と4年生・小湊(下)の連打から玉村が無死二、三塁とする 2回表無死二、三塁から玉村は井上がスクイズを決めて先制(上)。続くスクイズは、旗の台バッテリーがウエストから三走をアウトに(下) 旗の台は3回裏、米田の左翼線二塁打(上)と泉のバントで一死三塁とする 玉村は3回裏、一死三塁のピンチからの二ゴロで、三走を本塁憤死で1点を守る 6回裏、1点を追う旗の台は米田(上)と泉(下)の連打と、高市のバント安打で無死満塁に 無死満塁で一打サヨナラ負けのピンチに、玉村は邪飛と二ゴロ(本塁返球)で二死とする(上)。だが旗の台の四番・大島が打った瞬間にそれと分かる長打を左中間へ(下)   ―Pickup TEAM― 下級生6人も堂々のノーミスを招いた、指揮官の必然...

【関東新人戦1回戦❸埼玉vs.神奈川】写真ダイジェスト&ヒーロー

【関東新人戦1回戦❸埼玉vs.神奈川】写真...

2024.12.07

 ノーブルホームカップ第26回関東学童秋季大会。1回戦の第3試合は、2015年に初優勝している神奈川・平戸イーグルスが完勝した。今夏の全国8強入りメンバーのうち、レギュラー2人が新チームにいる中で、無印の4年生が存在感を発揮。写真ダイジェストとヒーローをお届けしよう。 ※記録は編集部、学年未表記は5年生 (取材&文=大久保克哉) ■1回戦/第3試合 守りで明暗、平戸が完勝で発進 ◇11月23日 ◇茨城・水戸 加茂川ワイルドダックス(埼玉)  010000=1  03101 X=5 平戸イーグルス(神奈川) 【加】大野、小林-上野 【平】沼崎、富田-小林琉 二塁打/高田、高津、川原田(平) 【評】先制、中押し、ダメ押しと、平戸が理想的な試合運びで完勝した。初回は先攻の加茂川が一死二、三塁、後攻の平戸は二死三塁と、それぞれ好機も無得点。以降は守備で明暗を分けた。平戸は2回裏、敵失と高津陸の左中間二塁打で先制すると、続く小林琉珈のバント安打で無死一、三塁に。加茂川の左腕・大野岳はここから二死を奪うも、平戸の一番・川原田漣が中越え二塁打で3対0に。直後の3回表、加茂川は2四球から四番・政理仁と五番・田壷峻太郎の連続テキサス安打で1点を返すも、併殺で追加点ならず。平戸は5回、三番・高田幸太郎(4年)と四番・佐々木一太の連打でダメを押した。投げては3回途中から救援した富田涼太主将が、バックの2併殺にも助けられて無安打の快投。加茂川は守備と走塁のミスが響いた中で、3盗塁や4年生・蓜島湊斗の粘り強い打撃が目を引いた。 先発した平戸の沼崎永嗣(上)、加茂川の大野(下)。ともに球速は80km台でも、身体を使って腕が振られていた 2回裏、平戸は無死二塁から六番・高津が先制二塁打(上)。続く小林琉がバント安打(下)と二盗でなお、無死二、三塁に 失策に始まり、先制を許してなお続く2回のピンチで加茂川・小竹則晃監督がタイム(上)。しかし、平戸の一番・川原田が中越え二塁打(下)で3対0に 加茂川は3回表、2四球に政(上)と田壷(下)の連打で1点を返す 平戸は3回表、一死一、二塁で中村大伸監督が投手交代を告げてマウンドへ(上)。救援した富田主将(下)が1失点で切り抜けると、後半3イニングを無安打無失点に封じた 5回裏、平戸は中前打から二盗の高田が、続く佐々木(上)の左前打で生還する(下)   ―Pickup Hero― あっぱれ4年生!ここにも たかだ・こうたろう...

【関東新人戦1回戦❷】写真ダイジェスト&グッドルーザー

【関東新人戦1回戦❷】写真ダイジェスト&グ...

2024.12.06

 新チームの1都7県王者による、ノーブルホームカップ第26回関東学童秋季大会。1回戦の第2試合は、今夏の全国大会にも出場した強豪同士による注目のカードだ。隣県のライバルにして交流もあり、同日の開会式後には両指揮官ががっちりと握手。試合のほうは双方にミスが複数あった中、それぞれ一発も飛び出して投手陣が粘投するなど、潜在能力の高さもうかがえた。写真ダイジェストとグッドルーザーをお届けしよう。 ※記録は編集部、学年未表記は5年生 (取材&文=大久保克哉) ■1回戦/第2試合 ミス補った茎崎、五番が決勝3ラン ◇11月23日 ◇茨城・水戸 茎崎ファイターズ(茨城)  01400=5  01101=3 豊上ジュニアーズ(千葉) 【茎】石塚、百村-佐々木 【豊】山﨑、神林-神林、長谷部匠 本塁打/関(茎)、神林(豊) 二塁打/百村2(茎)、中尾(豊) 【評】ともに全国大会で複数のメダルを手にしている強豪同士のビッグカード。隣県のライバルで新チームも練習試合で手合わせ済だが、公式戦での初対決はともに硬さが見られた。前半戦は落球や悪送球、目測の誤りなど守備のミスやけん制死も。2回表に茎崎が先制スクイズを決めると、その裏に豊上が一、三塁からの重盗で同点に。3回表、敵失や併殺崩れに四番・佐々木瑠星の中前打で2対1と勝ち越した茎崎が、続く五番・関凛太郎の3ランで4点差に。豊上も三番・神林駿采と四番・中尾栄道の長打攻勢で1点ずつを返したが、敵失で得た好機になかなか1本が出ず。茎崎は先発の石塚匠と二番手の百村優貴(4年)が粘り強く投げ抜いた。豊上の好左腕・山﨑柚樹は103㎞(今大会最速)をマーク。 茎崎・吉田祐司監督(上)と豊上・髙野範哉監督(下)。ともに全国区の名将が関東初戦で相対した 豊上の先発・山﨑(上)は先頭打者を102㎞で見逃し三振など、3者凡退で立ち上がる。茎崎の先発・石塚(下)はバックの再三のミスでも切れず、4回途中まで無四球ピッチング(申告敬遠1) 2回表、百村(4年)のエンタイトル二塁打(上)で一死二、三塁とした茎崎は、渡部竜矢主将がボール球を確実に見送って(下)のカウント3-1から先制スクイズを決める 豊上は先制された直後の2回裏、六番・濱谷悠生(上)と九番・土屋孝侑(下)の右前打で二死一、三塁とする 2回裏、豊上が二死一、三塁からの重盗(上)で同点に(代走の4年・玉井蒼祐が生還)。茎崎はすぐさま、四番・佐々木の勝ち越し打(下)と五番・関の3ランで4対1と突き放す 豊上は3回裏、四番・中尾の左越え二塁打(上)から1点、6回には三番・神林がレフトへソロアーチ(下) 茎崎は守備がバタついた中で、遊撃の佐藤大翔(上)は確実に打球を捌いて4回裏には美技も。終盤は吉田監督が何度かタイム(下)も取って逃げ切った   ―Good Loser― ポテンシャル示した意地の一発...

【関東新人戦1回戦❶山梨vs.栃木】写真ダイジェスト&ヒーロー

【関東新人戦1回戦❶山梨vs.栃木】写真ダ...

2024.12.04

 関東1都7県では新人戦の最高位となる、ノーブルホームカップ第26回関東学童秋季大会。それぞれ予選を制してきた都県代表のチャンピオンシップのトーナメント1回戦4試合を、写真ダイジェストとともに特筆したいヒーローや指導者をお届けしていこう。第1試合は9人が役割を全うした栃木代表が、理想的な内容で勝利している。 ※記録は編集部、学年未表記は5年生 (取材&文=大久保克哉) ■1回戦/第1試合 四番が3安打4打点の大仕事 ◇11月23日 ◇茨城・水戸 甲斐JBC(山梨)  000000=0  30100X=4 阿久津スポーツ(栃木) 【甲】岡田、豊泉-志澤泉 【阿】栗林、二ノ宮-丸山 三塁打/湯浅(阿) 二塁打/湯浅(阿) 【評】双方のスタメンに下級生が2人ずつというオープニングゲームは、ミスの少ない引き締まった内容だった。軍配は、エースが抑えて四番が打った、阿久津に。先発の栗林海斗は立ち上がりの一死三塁のピンチを切り抜けると、4回まで2安打無失点と流れを呼んだ。打線は四番・湯浅朝陽の左中間三塁打とスクイズで初回に3点を先取し、3回には2安打で4対0に。バントの精度がとりわけ高かった。一方の甲斐はなかなか打線がつながらず、本塁が遠かったが、守備は鍛えられていた。相手の再三のバントをほぼ確実に処理して内野安打は1本に。三塁手の3年生・志澤侶南のフットワークと強肩、先発した右腕・岡田蒼生の整ったフォームも目を引いた。 甲斐は1回表、二番・池田爽八が中前打(上)から二盗とボークで三進も、無得点。先発の岡田(下)は最速97㎞   阿久津は1回裏、四球と連続バント(安打1)から四番・湯浅が2点三塁打(上)で先制。続く川尻一太主将がスクイズを決めて3対0に(下) 阿久津のエース・栗林(上)は4回2安打、四球と失点ゼロとゲームメイク。打線は5つのバントを決めた。写真下は2打席連続バントに中前打も放った三番・丸山智暉 甲斐は堅守の三塁手・志澤侶(3年)が3回に左前打(上)。6回には池田が2安打目、三番・豊泉隆大(下)も中前打でようやく連打も、後続が倒れた 阿久津は選手たちで守備のタイムも(上)。二番手の二ノ宮(下)も得点を許さず、完封リレー   ―Pickup Hero― あっぱれ4年生、万能のリトル戦士 ひらやま・こうや...

【関東新人戦/速報】旗の台、笑顔満開の初V!新チームの関東は3年連続で東京の天下

【関東新人戦/速報】旗の台、笑顔満開の初V...

2024.11.25

 新チームの関東王者は、旗の台クラブ! ノーブルホームカップ第26回関東学童秋季大会が11月23・24日、茨城県のノーブルホームスタジアム水戸であり、東京・旗の台クラブが初優勝を果たした。大会は1都7県の新人戦王者8チームによるトーナメント戦で、東京勢の優勝は3年連続で5回目。旗の台は2度目の出場だったが、前回の2020年はコロナ禍で中止に。底抜けに明るい選手たちが、4年前の無念も晴らして新人戦の最高位に輝いた。 (写真&取材=大久保克哉) ※大会の模様は『学童メディア』で、順次特報する予定です   ■決勝 東京・旗の台 11対6 栃木・阿久津   ■準決勝 ❶栃木・阿久津 6対3 茨城・茎崎 ❷東京・旗の台 3対2 神奈川・平戸   【1回戦】 ❶栃木・阿久津 4対0 山梨・甲斐 ❷茨城・茎崎 5対3 千葉・豊上 ❸神奈川・平戸 5対1 埼玉・加茂川...

【関東学童栃木新人戦/決勝】終盤6連打で熱戦制す。阿久津が22年ぶり3回目V

【関東学童栃木新人戦/決勝】終盤6連打で熱...

2024.11.23

 ノーブルホームカップ第26回関東学童軟式野球秋季大会の栃木県予選。芳賀町ひばりが丘公園野球場での決勝は、阿久津スポーツが真岡クラブを7対1で破り、2002年以来22年ぶり3回目の優勝を飾った。1対1で迎えた5回表、阿久津が6連打で4得点など終盤に突き放した。11月23日の関東大会1回戦は、山梨代表の甲斐JBCと対戦する。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) 優勝=22年ぶり3回目 あくつ 阿久津スポーツ   準優勝 もうか 真岡クラブ   ■決勝 ◇10月26日 阿久津 001051=7 真 岡 000100=1 【阿】栗林、二ノ宮-丸山 【真】林、舘野、小林洸-仲島  決勝で相対した両チームは交流があり、実はこの県大会の開幕前に練習試合をしていたという。そのときは阿久津スポーツの一方的な内容で、スコアは12対1だった。 ともに全国区の名門 「阿久津」というチーム名でピンとくるのは、県外では滋賀県の名将・辻正人監督(多賀少年野球クラブ)かもしれない。3回目の出場だった2003年の全日本学童大会の1回戦で対戦し、8対5で多賀が勝利しているからだ。 阿久津は登録19人で5年生7人。小林監督(下)はOBで指導歴7年、指揮官5年目で3年生の輝希は三男  阿久津の全国出場はその1回のみだが、当時の綱川治彦監督が現在も総監督を務めている。81歳とは思えぬ若さは、火曜から金曜日までの平日練習を一手に担っているせいだという。 「週末や試合の采配なんかは全部監督だけど、平日の練習は任せてもらっているので責任感みたいのがあるでしょ。教え子も誰か、必ず手伝いに来てくれるので助かます」  過去2回の県新人戦優勝も、綱川総監督が率いた時代のこと。5年前からはOBの小林勇輝監督が率いており、今大会は2回戦でサヨナラスクイズを決めるなど、勝負強さも発揮しながら決勝へ。  対する真岡クラブは、2009年と2015年に全日本学童に出場。初出場の09年に3回戦まで進出している。 真岡は登録19人で5年生は5人。コーチを務めてきた舘野監督(下)は新チームから指揮官に...