第22回京葉首都圏江戸川大会は2月22日、東京・水辺のスポーツガーデンで準決勝2試合を行い、ファイナリストを決した。第1試合は、前年王者の船橋フェニックスが、14対0で3回コールド勝ち。敗れた品川ドリームキッズは、初回に3本のサク越え弾を浴びるなど苦しい戦いとなったが、必ずしも悲観する内容ではなかった。写真ダイジェストと短評、ヒーローとグッドルーサーをお届けしよう。
(写真&文=大久保克哉)
※記録は編集部、学年の未表記は新6年生
■準決勝1
◇2月22日 ◇水辺のスポーツガーデン
品川ドリームキッズ(品川)
000=0
86×=14
船橋フェニックス(世田谷)
【品】斉藤、植本-植本、山本
【船】前西、柴原-佐藤
本塁打/佐藤、高橋、前西(船)
二塁打/佐々木、柴原
【評】前年度優勝枠で出場の船橋フェニックスは、昨秋の都新人戦で準V。選手は代替わりして、率いる指揮官も前年と異なるが、今大会も順調にベスト4まで勝ち上がってきた。対する品川ドリームキッズは、昨秋の新人戦は区大会で初戦敗退。だが今大会は特別延長の末に1回戦を突破して波に乗ると、2回戦では前年3位の鶴巻ジャガーズを1点差で退けるなど、接戦をものにして4強まで進出してきた。
迎えた準決勝は品川の先攻で始まった。二番・植本蓮主将が追い込まれてからの粘りで四球を選ぶと、続く斎藤朋之は白球を確実にミート。だが、打球の強さが災いして5-4-3の併殺打に。そしてここからは船橋のワンサイドとなった。
船橋は佐藤優一郎主将が、レフトへ先頭打者アーチ。左翼48m地点からの高いフェンスを超えていく打球をいきなり見せつけられた品川ナインには、動揺があったのかもしれない。守りのミスと与四球に船橋の四番・佐々木暦望のテキサス二塁打で3対0に。船橋はさらに、五番・高橋泰生と六番・前西凌太朗の連続アーチで畳み掛けた。
走者がいなくなり、品川の先発右腕・斎藤は空振り三振で一死を奪う。だが、船橋打線は下位もしぶとかった。藤本真至と桜井翠が連打で上位へつなぐと、四球や敵失で8対0と大きくリードした。
船橋は果敢な走塁も光った。1回にはタッチアウトになったものの、佐藤主将が本盗。2回には無死一、二塁で重盗など、スタメンの6人が盗塁をマーク。そうしてチャンスを拡大しながら、二番・柴原蓮翔と四番・佐々木の技ありタイムリーなどで2回も計6得点でスコアは14対0に。
対する品川も萎縮してばかりではなかった。走者三塁のピンチで本塁憤死や、ミスを取り戻す守備、下位打線もフルスイングが見られた。しかし、船橋の前西-柴原の継投を前に無安打に封じ込まれ、3回コールドで決着した。
〇船橋フェニックス・森重浩之監督「普通の外野フライも、ホームランになってしまう。条件は相手も同じで、ウチも前の試合で痛い目に遭いましたけど、投手には厳しいグラウンドですね。ウチは基本的には守備重視で、守れない子は試合に出られない。これからもそこは変わりません」
●品川ドリームキッズ・山本学監督「相手はさすがの攻撃力でした。ウチとしては取れるアウトを取れなかったことが大きく響いてしまいました。そこをこれからの課題として、やっていきたいと思います」
船橋は一番・佐藤主将がいきなり先制アーチ(下)。品川の斎藤(上)は苦しいマウンドとなったが、粘り強く1回を投げ切った
1回裏、ノーアウトのまま3点を先取した船橋はなお、五番・高橋(上)と六番・前西(下)の連続アーチで6対0に
品川は山本監督が「間」を入れて(上)一死を奪うも、船橋は藤本の左翼線安打(下)から再び攻め立てて1回裏に8得点
8点を失った品川は本盗阻止(上)に続いて、城下新大(下)が三ゴロをさばいて1回裏を終えた
2回裏、品川は無死二、三塁のピンチで内野ゴロから三走を本塁憤死に(上)。だが船橋は長短打3本で3点を加え、四番・佐々木の右前2点打(下)で14対0に
3回表、品川は若林(新5年=上)が四球から二盗。山本(新5年)は空振り三振も、フルスイングが目を引いた(下)
船橋は先発の前西(上)が2回を投げ、3回は柴原(下)が救援しての無安打無得点リレーで勝利
―Pickup Hero―
“いぶし銀”の九番・二塁
さくらい・あきら
桜井 翠
[船橋新6年/二塁手]
攻守両面において不可欠なピース。九番・二塁の桜井翠は、玄人好みの渋い働きをするプレーヤーだ。
「守備を堅実にして、小技と足を使えるところです」と語る自身のセールスポイントを、準決勝でも存分に発揮した。
立ち上がりの守備で5-4-3併殺を成功させると、第1打席では逆方向へヒットから二盗を決めた。二死二、三塁で迎えた第2打席は、三塁線へのセーフティバントで走者2人を迎え入れた。さらにまた二盗に続いて、バッテリーミスで三進するなど、抜け目がなかった。
初回にサク越えアーチ3発など、迫力満点の打線においての希少な「つなぎ役」。その存在が、対戦相手にはまた厄介だろう。もちろん、桜井自身は小さくまとまる気はなく、将来的には本塁打も打てるバッターを目指しているという。
「でも今はまだ、試合中はホームランは狙いません。ヒットとか塁に出ることが打席での役割だと思っています」
こう話した翌々日の決勝では、右中間へランニングホームランを放っている。
―Good Loser―
品川ドリームキッズ
4強入りの自信とトライする姿勢
第4位[品川区]
準決勝は0対14の大敗。3年連続の夏の全国出場を期す強豪チームに、圧倒されたのは間違いない。翌々日の3位決定戦も、0対7でものにできず。けれども、悲観より希望を見出せる大会だったと山本学監督(=下写真)は総括した。
「接戦を勝ち上がりながら、1試合ずつそれなりに成長しているなというところもありましたので。準決勝はチャレンジャーのつもりでみんなでやっていこうと、試合前に話をしていました」
先頭打者アーチを浴びて以降、ミスや四死球も相次いで長い守りの時間が続いた。それでも、首脳陣やベンチ裏の大人たちに感情的な言動はまるでなかった。就任7人目で、末っ子の三男坊・悠(新5年)の父でもある山本監督は、表情も声のトーンも冷静そのもの。そしてタイムも取りながら、選手たちの背中を押してやるような声掛けが印象的だった。
「私はいつもこのスタンスです。子どもにガヤガヤと言っても、何も響かないので。目の前の結果より過程、目的と経験を重視してあげたいと考えています」
初回の守りでは、捕球はできなかったものの、浅い飛球に左翼手の佐藤龍大(新5年)が果敢に飛び込んだ。また、落球(適時失策)した中堅手の前橋明歩は、2回には左中間の難しい飛球を好捕してみせた(=下写真)。登板した斎藤朋之と植本蓮主将は投げやりな言動もなく、内野陣は本塁タッチアウトを2つ奪ってみせた。
また3回の攻撃では、四球を選んだ八番・若林悠生(新5年)が、二盗を決めてからバッテリーミスで三進。続く九番・山本は空振り三振に終わるも、今後が楽しみになるフルスイングを続けて、タイミングが合っていたファウルも1球あった。
絶望的なスコアを前にしても、こうしてトライする姿も散見。それも4強まで勝ち進んできた自信に加え、普段から前向きに取り組む環境があればこそだろう。
「来週からの全国予選に向けて良い経験ができたかなと思います」(山本監督)
1件のコメント
あの時は僕自身も野球をやめてもいいんじゃないかと思いました。ですがぼくにはまだできると思う自信がわいてきて、最後まであきらめませんでした