フィールドフォースカップ

【学童メディア賞】声と足と肩で「諦めない!...
1会場(1面)で全試合を行う大会というのは、学童野球にはないのかもしれない。47都道府県の王者による「小学生の甲子園」こと、全日本学童マクドナルド・トーナメントも準々決勝までは数会場で一気に消化する。それゆえに、全試合・チームを1人でカバーできないのが取材記者の悩み。だが、フィールドフォースカップの第11回大会は従来と異なり、最終日の準決勝と決勝は同一のフィールドで順に行うことに。つまり、「悩みの種」も解消されることから、記者の心に最も訴えてきた選手を表彰する『学童野球メディア賞』を極秘裏に制定し、閉会式でサプライズ表彰した。初代の受賞者は、3位に入った水戸レイズの松本辰琉外野手(新6年)。副賞はモノではなく、この誌面となる。 (選出&写真&文=編集長/大久保克哉) ※準決勝リポート➡こちら まつもと・たつる 松本辰琉 [水戸レイズ新6年] 0対5で迎えた準決勝の5回表。守る水戸レイズにとっては、長くて苦しい時間が続いていた。連続四球にタイムリーで勢いづいた豊上ジュニアーズの打線は、止まる気配を見せようとしない。 マウンドの安田颯真は、セットポジションから懸命に右腕を振るも、野手のミスや野選なども相次いでしまう。ようやく1個目のアウト目を奪ったのが打者9人目で、すでに7点を失っていた。 こういう展開はプロ野球でも、なかなか収束しないことがある。それが小学生となれば、やられ放題の側は戦意もすっかり失せてしまうものだ。しかし、この新6年生は明らかにファイティングポーズを取り続けていた。 水戸レイズの背番号9、松本辰琉だ。 「まず1個、アウトを取ろう!」「ピッチャーが頑張ってるんだから、アウトを取ってあげよう!」 ライトから再三の前向きな声が、三塁側のベンチにまで響いてくる。また打球は飛んでこなくとも、一塁または二塁へのバックアップを怠らず、そのすべてが全力だ。このイニングだけでも、いったいどれだけのダッシュを繰り返したことか。 そして打者11人目で、この試合2個目となるライトゴロ(=下写真)を松本が決めたことで、レイズナインはようやくベンチに戻ることができた。 「まだ諦めないで、この回を抑えて次の回に打ったら勝てるかなと思っていました」 序盤2回で早くも5点ビハインド。だが松本はとにかく、その思いをフィールドでの具体的な言動で示し続けていた。 「自分で言っちゃったらダメだけど、たぶん声がボクの持ち味だと思います」 根気は世代でもトップクラス。いや、大人でも根負けする人は多いだろう。「体は小さいけど、真面目でよく頑張る子」と、髙木政彦監督も手放しで評価する。非凡な身体能力もうかがえるのは、1年生までサッカーチームでプレーしてきたせいもあるのだろう。 松本は2人兄弟の長男。サッカーをやめて2年生から3年生の夏までは、父とキャッチボールをしていたという。そして全国出場実績もある水戸レイズに入ったのが3年生の9月。 「チームに入って2ヵ月くらいしたころ、自分が声を出すとみんなが盛り上がるというのが分かってから、どんどん自分から声を出すようになりました」 ダイナミックなフォームとシャープなスイングはいかにも、打力が伝統のチームの六番打者 中学年から野球を始めたとは思えないほど、キャッチボールの軸足の置き方からして基本に忠実。外野守備でのバックアップやカバーリングは「指示待ち」ではないからこそ、機に応じて動けるのだろう。 六番打者としては、準決勝では中飛と三ゴロで2打数無安打。でも、そういう目先の結果だけでは決して測れない存在感と貢献度に、核となるパーソナリティまでを見て取ることができた。 決勝戦後の閉会式。事前の告知もなかった『学童野球メディア賞』の発表で、唐突に名前を呼ばれると、全員の前に出てきて穏やかに公開インタビューに応じた。そして最後に、目標をこう語っている。 「これからの試合は、大差で全部勝てるように頑張りたいです!」 大敗を喫したレイズだが、小学生の野球チームとして方向性は間違っていない。仲間のいる列へと戻っていく背番号9が、それを物語っていた気がする。
【学童メディア賞】声と足と肩で「諦めない!...

【2025決勝】関東新人戦に続く名門対決。...
各市区町村で始まる全国予選に向けた試金石。第11回フィールドフォーストーナメントは、千葉・豊上ジュニアーズの3年ぶり2回目の優勝で閉幕した。埼玉・半田公園野球場での決勝は、昨秋の関東大会1回戦と同一カードに。前回は惜敗していた豊上が雪辱し、茨城・茎崎ファイターズの大会3連覇も阻んだ。スコアは8対3と開いたものの、夏の全国大会の常連同士とあって、勝敗を超えた見どころもドラマも複数。大会MVPには、決勝で2本塁打の豊上・神林駿采主将が選ばれている。 ※学年未表記は新6年生 (取材&文=大久保克哉) 優勝/豊上ジュニアーズ [千葉・柏市] 準優勝/茎崎ファイターズ [茨城・つくば市] ■決勝 ◇2月16日 豊上ジュニアーズ(千葉) 240101=8 003000=3 茎崎ファイターズ(茨城) 【豊】中尾、加藤、中尾、神林、濱谷-神林、福井 【茎】山﨑、百村-佐々木 本塁打/神林2(豊) 二塁打/山﨑、関(茎) 3月から各地で始まる全国予選を前にした『ガチンコ勝負』という位置付けで、2015年に第1回大会を開催したフィールドフォースカップ。第11回大会のファイナリストは、ともに昨秋の県王者で、関東新人戦の1回戦で相対していた(リポート➡こちら)。 その新人戦では茎崎ファイターズが5対3で勝利。そして今回は豊上ジュニアーズが序盤で大量リードし、そのまま逃げ切りで雪辱を果たした。手に汗握るような好ゲームというわけではなかったものの、スコアほど実力は離れていなかった。冬場の成長やシーズンを占う意味では、見どころが複数。また、ポジション争いを巡るドラマも双方にあった。 2つのカルテット 豊上は同日の準決勝でコールド勝ちし、髙野範哉監督は「新5年生の4人(全員出場)が楽しみ」と話していた。新6年生には、昨夏の全国大会を経験した福井陽大、神林駿采、中尾栄道がいる。関東新人戦の最速103㎞左腕・山﨑柚樹を加えた“カルテット”は、全国随一と言えるほどハイレベルだ。ただし、万事をこの4人に頼り切るだけではないあたりが、チームの全国区たるゆえんだろう。 関東新人戦でメンバー入りしていた“新5年生カルテット”の関澤月陸、後山晴、玉井蒼祐、加藤豪篤が、この決勝でも全員プレーした。準決勝に続いてロングリリーフした軟投派の加藤(=上写真)は「絶対に試合をつくってくれる」と指揮官の信頼も厚い。さらに強固な地位を築きつつある伸び盛りが、二番・遊撃の後山だ。 1回表に一死から中前打を放ち(=上写真)、続く神林、中尾までの3連打につなげた。そして満塁から、五番・矢島春輝が三塁線に転がしたスクイズバントで、後山に続いて二走の神林も生還。こうして打線を波に乗せたのは、二番を打つ新5年生だった。そして技ありのバントを決めた矢島(新6年)が、今度はスイングで打点を上乗せすることに。 1回表、豊上は二番から四番・中尾(上)までの3連打と、矢島の2ランスクイズで先制(下) 2対0とした豊上は、続く2回も攻撃の手を緩めなかった。先頭の八番・村田遊我が中前打を放ち、内野ゴロ2つで三進。さらに二番・後山の死球と二盗で二死二、三塁とすると、敵失で2点を加える。なお二死一、二塁から、矢島が左打席から右前タイムリー。一塁へ頭から飛び込んでイニング3点目をもぎ取ると、一、三塁からの重盗で三走の中尾が生還し、6対0とリードを大きく広げた。...
【2025決勝】関東新人戦に続く名門対決。...

【2025準決勝】全国区の強豪が激突。豊上...
『全国予選に向けたガチンコ勝負』。東京、茨城、埼玉、千葉の28チームによる第11回フィールドフォーストーナメントは2月16日、埼玉・半田公園野球場で準決勝と決勝を行い閉幕した。最終日まで勝ち残った3強(1チーム棄権)のうち、豊上ジュニアーズ(千葉)と水戸レイズ(茨城)は、2022年夏の全国舞台ではともに猛打で躍進。この両軍による準決勝は思わぬワンサイドとなったものの、球春到来を前にして得るものも双方にあったようだ。 ※学年未表記は新6年生 (取材&文=井口大也) (写真=大久保克哉) 3位/水戸レイズ [茨城・水戸市] ■準決勝 ◇2月16日 豊上ジュニアーズ(千葉) 23008=13 00000=0 水戸レイズ(茨城) ※大会規定により、5回コールド 【豊】中尾、加藤、神林-神林、福井 【水】工藤、安田-小田嶋 二塁打/神林(豊)、小圷(水) 雪国を除けば、学童野球にオフシーズンはないと言われる。それでも2月時点の状態や仕上がり具合は、チームによって大きく異なる。 夏の全国8強メンバーが複数いる豊上ジュニアーズは、新人戦の千葉大会を制して11月の関東大会にも出場した。大目標の日本一へ向け、新年も関西遠征など、全国区の強豪チームとも数多く手合わせをしてきている。 一方の水戸レイズは、新人戦は茨城大会2回戦で上辺見ファイターズに惜敗。1月は例年通り、冬期トレーニングに励んだという。「今は結果を求める時期ではないので」と試合前に話した高木政彦監督(=上写真)は、こう続けた。 「1月中は素振りとかティー打撃、サーキット系のランメニューとか。ウチは例年、打力のチームなんですけど、2月に入ってボールを触り出したところで、イマイチまだ上がってきてない。例年に比べてピッチャーが良いので、この大会もここまで来られた感じですね」 そんな両軍の対決は、初回から大きく動いた。 先行の豊上が三番・神林駿采の中越え二塁打(=下写真)で先制し、なおも三盗とバッテリーミスで2点目を加える。そして先発左腕の中尾栄道は3者凡退で立ち上がり、試合の主導権をがっちりとつかんだ。 水戸のエース右腕・工藤耀汰(=上写真)は、上背を活かしたダイナミックなフォームから、力のあるボールを投じていた。2回は簡単に二死を奪ったが、そこから豊上がスキのない攻撃を展開する。 二死無走者から八番・村田遊我が内野安打で出ると、続く玉井蒼祐(新5年)の1球目で二盗に成功。すると豊上ベンチは、下級生に代わって左打ちの鈴木海晴を打席へ。 打者1巡目で、しかも1ストライクからという難しい打席だったが、新6年生は見事に起用に応えた。3球ファウルの後、鋭い当たりの遊撃強襲安打で3対0に。このとき、二塁から一気に生還した村田のベースランニングは、判断もライン取りも満点をあげたくなるものだった。 2回裏、豊上は二死無走者から3点を加えた。村田が内野安打と二盗(上)で口火を切り、代打・鈴木がタイムリー(下)でまず1点...
【2025準決勝】全国区の強豪が激突。豊上...

第11回フィールドフォースカップ結果

【第10回総括】 ハイパフォーマンスと引き...
第10回フィールドフォースカップは、茎崎ファイターズ(茨城・つくば市)の2年連続3回目の優勝で閉幕した。『全国予選に向けたガチンコ勝負』を掲げて2015年にスタートした大会は年々、競争激化でハイレベルに。節目の第10回大会は、新6年生たちのハイパフォーマンスと、それを引き出すベンチワークも印象的だった。 (動画&写真&文=大久保克哉) ※決勝リポート➡こちら 2015年の第1回大会は高島エイトが優勝。写真は閉会式 フィールドフォースカップは、自主対戦決式で12月から各地で始まる。正規のトーナメントと、敗者復活トーナメントがそれぞれ進行。そして2月の大会最終日には、各4強の8チームが集い、最終順位を決する。どのチームも最低2試合はできるのも特徴だ。 開催方式の定着とともに、レベルが上がってきていることは今大会の結果からも見て取れた。昨秋の新人戦で都準Vの旗の台クラブ(品川区)や、同じく埼玉準Vの山野ガッツ(越谷市)など有力チームが最終日を前に敗退。また竹仲(東京・足立区)、有馬スワローズ(東京・中央区)などの全国出場組は敗者復活戦でも勝ち進めなかった。 茎崎ファイターズは過去2回、優勝した年の夏に全国出場している。今夏は!? 今大会を制した茎崎ファイターズの吉田祐司監督は、大会参戦による変化をこう語る。 「昔は1月、2月は練習が中心でしたけど、フィールドフォースカップに出るようになってから練習試合も入れるように。その分、仕上がりの段階も早くなってきていますね」 熊谷グリーンタウン(埼玉・熊谷市)との決勝は、全国大会さながらのハイレベルな好勝負となった(既報)。これを大逆転で制した茎崎は選手個々の能力の高さもさることながら、会場入りから試合開始までのウォーミングアップも特筆するべきものだった。担当する小林拓真コーチが語る。 「ウチは輪になっての体操とか並んで順番にダッシュとかはやっていません。寒い中で、いかに早く体を温めるか。あとは関節の可動域とか機能性を高めることも考えています」 今大会に限らないが、茎崎は試合前のアップから斬新な取り組みが見られた 個々に縄跳びなどをしてからグラウンドに入った選手たちは、地面のマーカーや手作りのボールを使いながら、360度全方向への動き出しや股関節の屈伸動作などを反復。時間で区切っての競争もあり、自ずと笑顔も広がった。これだけでも、指導陣がどれだけ子どもの体やトレーニングについて学んでいるかが読み取れる。 「いつも野球が楽しい!」 選手のパフォーマンスを引き出す、という点では3位の葛西ファイターズ(東京・江戸川区)と、4位の草加ボーイズ(埼玉・草加市)のベンチワークも際立っていた。 2020年の第6回大会以来の4強進出となった葛西は、準決勝では全国3位の実績もある熊谷と一進一退の激戦を展開(4対7で敗北)。序盤戦はボールが手につかない様子でミスも散見されたが、平野秀忠監督は笑みを絶やさずに前向きな指示を送り、「これが点取り合戦、楽しまなきゃ!」とコーチ陣は盛り上げ役に徹していた。また、対戦相手でも好プレーはその場で称えるなど、スポーツマンシップの浸透は見守る保護者たちの声援からも感じ取ることができた。 チームOBでもある葛西・平野監督。安心を招くような柔和な笑顔も印象的 「小学生の指導で大切なのは、中・高でも野球をやりたいと思えるようにしてあげることだと思います。そのためには、楽しく野球をやること。もちろん、勝つことも楽しいでしょうし、逆にダラダラとやっても楽しくないでしょうから締めるところは締める。バランスを大事にしています」 こう語る平野監督は、1974年に創部したチームのOBでもある。現在の学童部は、ほぼ学年別で5チームが活動する。どのカテゴリーも、背番号30の監督だけは保護者以外が務めるのが伝統で、平野監督も父親コーチを経て監督に。「ウチはお父さんコーチも基本的にやさしくて、みなさん理解があります。その上で、指導が偏らないように監督がバランスをとっている感じ」(同監督) 準決勝に続いて3位決定戦でもサク越え3ランで勝利に貢献し、優秀選手に輝いた木竜夢翔は「野球が楽しい!」と言って続けた。 「速いライナーを打つことをいつも心掛けていますけど、この大会ではそれがホームランになったりして結構、自信が持てました。失敗やミスをしても、ベンチから『ドンマイ!』とか『切り替えていこう!』とか言ってくれるし、ランニングとか苦しいのはイヤなときもあるけど、いつも楽しいです。江戸川大会でも速い打球を打ちたいです」 夏の全日本学童大会の最初の予選となる江戸川大会は3月18日に開幕する。62チームが参戦する都内随一の大激戦区だが、今大会では旗の台クラブに勝利するなど、都大会上位クラスにあることが証明されている。 「全国に行かないとできないようなチームとも対戦できて、レベルの高さも体感した有意義な大会でした。目標の都大会に進めるように経験を生かしたいです」(平野監督) 「やればできる!」 その葛西と草加による3位決定戦(7対4で葛西が勝利)では、試合中に草加の選手がダウンするアクシデントがあった。同チームの本村洋平監督が回想する。 「風邪で病み上がりの子が、具合が悪くなってきて『トイレに行く』とグラウンドを出たところで倒れてしまい…」...
【第10回総括】 ハイパフォーマンスと引き...

【2024決勝リポート】 全国区同士が迫力...
東京・千葉・埼玉・茨城から30チームが参加した第10回フィールドフォースカップは2月18日、埼玉・三郷市の半田公園野球場で決勝トーナメントと敗者復活トーナメントを行い閉幕。全国区の茎崎ファイターズ(茨城)と熊谷グリーンタウン(埼玉)による決勝は、真っ向からの打撃戦に。4回裏に大逆転した茎崎がそのまま逃げ切り、2年連続3回目の優勝を果たした。 (動画&写真&文=大久保克哉) ※クリックまたはタップで拡大 ■決勝 熊谷 14000=5 茎崎 11050x=7 ※大会規定時間により、5回裏途中で終了 【熊】木村、新藤-原口 【茎】折原、佐藤映-藤城 本塁打/根岸(熊)、石塚(茎)、藤城(茎) ⇧優勝/茎崎ファイターズ[茨城] ⇩準優勝/熊谷グリーンタウン[埼玉] ⇩茎崎・藤城匠翔主将が決勝2ランで大会MVPに(動画) サク越えアーチが計3本。内野の併殺プレーに二盗阻止もあり、タッチアップから間一髪のクロスプレーや重盗にスクイズもあり。節目の第10回大会から登場した黄金の優勝トロフィーも等分したくなるほど、決勝戦は中身を伴う互角の好勝負となった。 ともに直近5年の間に、夏の全国舞台でメダルを手にしている強豪だ。茎崎・吉田祐司監督と熊谷・斉藤晃監督は、互いに認め合う旧知の仲でもあるが、対峙した両軍は開始から激しく火花を散らした。 1回表、無死一塁から茎崎が5-4-3併殺を奪う(上)も、直後に熊谷の三番・根岸が先制ソロ(下=動画) まず、貫録を示したのは熊谷だ。1回表、先頭・新藤大惺の左前打の後に、5-4-3併殺で意気消沈しかけた矢先だった。 「ダブルプレーを取られた後だし、初回にどうしても1点は欲しかったので初球から狙っていきました」 こう振り返った三番・根岸瑛人が、カウント3ボールからの4球目を迷わずにフルスイング。舞い上がった白球は、左中間の70m特設フェンスを越えていった。 「アウトコース高めを引っ張ったつもりが左中間に。逆方向のサク越えは初めて」(根岸) 熊谷の斉藤監督は「待て!」のサインをほぼ使わない。代わりに、初球ストライクから打ちにいくことを選手に求めている。「正々堂々の勝負」(同監督)で全日本学童マクドナルド・トーナメントに3回出場しており、2022年は銅メダル。この日の根岸の先制ソロは、積極打法の浸透ぶりをも象徴していた。 地域選抜チームが半数以上の埼玉の全国予選を、単独チームが制するのは並大抵ではない。熊谷は持ち前の強打で4度目の全国出場を期している 一方の茎崎も序盤から持ち味を発揮した。先発の右サイド・折原颯太は苦しみながらも大崩れしなかった。先制アーチを浴びてなお、テキサス安打や死球で二死満塁のピンチを招くも、空振り三振で切り抜ける。 「再登板ができないルール(大会規定)の中で、折原をどこまで引っ張れるかと考えながら見守っていました。点数は取られましたけど(3回途中5失点)、不運もあったし、悪くなかったと思います。波を減らしていくのも、経験していかないとできないことなので」 今年の茎崎は投手陣も豊富。右サイド・折原はアクセントにもなる 吉田監督から及第点を得た折原が、初回の3アウト目を奪った直後。昨夏の全日本学童大会でもプレーしている新5年生、石塚匠がライトへ同点ソロを放った(下動画)。...
【2024決勝リポート】 全国区同士が迫力...

第10回フィールドフォースカップ結果

【個人賞&コメント】茎崎の佐藤主将がMVPに
最終日の決勝・敗者復活トーナメントは8チームが出場して、各2試合を消化。活躍が顕著だった選手8人(各チーム1人)が個人賞に輝き、フィールドフォースから副賞が贈られた。受賞者とコメントは以下の通り。 【最優秀選手賞(副賞:オーダーグラブ】 ■佐藤遥音(茎崎ファイターズ) 「みんな打ちましたし、優勝も個人賞もうれしいです。僕はキャプテンなので、声を出すことをいつも心掛けています。目標は全国優勝。この大会で良い経験を積めたと思います」 攻守で優勝に貢献した茎崎の佐藤主将(右)が大会MVPに 【優秀選手賞(副賞:グラブ保形ケース】 ■阿部虎太朗(海神スパローズ) 「決勝戦のバント(スクイズで追加点)と、あとは三塁の守備、声をしっかり出せたことで賞に選ばれたと思います。春季大会からずっと勝ち進んで、夏に全国制覇をしたいです」 ■金田一毅(豊上ジュニアーズ) 「今日の2試合目に先発して、5回まで4失点のピッチングが評価されたと思います。とてもうれしい気持ちです。みんなと全国制覇を目指してこれからもがんばります」 ■大熊一熙(レッドサンズ) 「今日は5年生チームだったので(新6年生は他大会へ)、やばいなと思っていたんですけど、ホームランを2ランとソロ、2本打てたので良かったです。それと今日が誕生日なので、余計うれしいです」 ■谷田部瑛心(山野ガッツ) 「個人賞で景品をもらうのは初めてなので、すごくうれしいです。2試合目の5回に2ランスクイズのバントも決められました。今年はこの調子でいって、4割打者を目指します」 ■山下良登(町田玉川学園少年野球クラブ) 「今日は1試合目で先発して4回途中まで70球で無失点、打つほうも調子が良くて2安打。個人賞ももらえてうれしいです。チームではピンチでも声を出すことを意識しています。都大会に出たいです」 ...
【個人賞&コメント】茎崎の佐藤主将がMVPに

【決勝戦リポート】逆転、中押し、ダメ押し。...
最終日まで勝ち進んだベスト4のうち、3チームまでが全国出場経験組だった。2019年全国準Vの茎崎ファイターズ(茨城)は、新5年生で挑んだレッドサンズ(東京)を3回コールドで一蹴。「千葉対決」となった反対ブロックの準決勝は、夏の全国3大会連続出中の豊上ジュニアーズが特別延長の末に敗退。攻守に手堅い海神スパローズが、初めてのファイナル進出を決めた。 ■決勝 海 200001=3 茎 03152×=11 【海】別所、小野塚、小山田、柴崎-小山田、大水 【茎】中根、新岡-藤城 5回表二死一塁、海神・小山田の痛烈なライナーを茎崎の中堅手・佐藤遥主将が好捕(左下・小写真)して、ごらんの笑顔。この美技もあって同選手が大会MVPに 今や「千葉の顔」とも言える豊上を相手に、ロースコアの接戦を演じた末に勝利した海神。新6年生が13人いるものの、渡辺浩史監督によると野球キャリアは総じて浅いのだという。 「この子たちはチームに入ってきたのが遅かったので、実戦中心で経験値を増やしてきました。(準決勝の)特別延長も今年だけで3度目で、先に得点して守り切るという練習通りの勝ち方ができたと思います。ただ、力を使い果たしているので次(決勝)はどうなるか…」 指揮官の不安をよそに、海神打線がいきなり火を噴いた。1回表、先頭の別所駿一が痛烈な内野強襲安打で出ると、二番・小山田理も左前打で続き、バントで一死二、三塁。そして四番・大水佑真の左前タイムリーと、五番・阿部虎太朗のスクイズで2点を先取する。その裏の守りでは、二死一、三塁のピンチに1-5-4のけん制死も奪ってみせた。 海神は1回表、四番・大水の左前打で先制する 機先を制された茎崎だが、先発のエース左腕・中根裕貴が2回から立ち直るとともに反転攻勢へ。2回裏、渋澤律斗のテキサス安打などで一死満塁とすると、二ゴロでまず1点、なお二死二、三塁から新4年生・石塚匠が右中間にはじき返して3対2と逆転。さらに満塁と攻め立てたが、救援した海神の小野塚岳を前に加点はならず。 2回裏、二死二、三塁から一番・石塚の右前打で茎崎が3対2と逆転 「ウチの秋の関東準優勝はオマケ、たまたまですよ。相手がミスをしてくれての勝ちもありましたし。新6年生6人の若いチームなので、練習でやっていることを試合中は言葉で伝えながら、どこまでできるかを確認してきました」 茎崎は吉田祐司監督が今大会のテーマをそう語ったように、失敗やミスもありながら果敢にトライする姿勢が際立った。とりわけ多かったのが、足技とバントだ。海神の大型捕手・小山田の強肩にも怯むことなく、走者はどんどん次塁を狙う。3回には藤塚凌大のヒットから好機を広げて、野口翔太郎のスクイズ(記録は安打)で4対2に。直後に盗塁死とけん制死があったが、4回には藤塚が2盗塁など終わってみれば毎回の盗塁企図で成功が8(失敗1)。相手バッテリーのミスを突いた進塁が3、4回には2ランスクイズを決めるなど、犠牲バントは4つすべてを成功させた。さらに4回には野口が左へ、5回には中根が右へそれぞれエンタイトルの適時二塁打でダメ押し。守っては先発の中根が丁寧に打たせて取り、5回には主将の佐藤遥が痛烈なセンター返しのライナーに頭から飛び込んで好捕し、流れを相手に渡さなかった。 3回にスクイズバントを決めた茎崎の野口が、4回には左越え適時二塁打 全3打席出塁で2盗塁に3得点。茎崎は九番・新岡が見事なつなぎ役に ...
【決勝戦リポート】逆転、中押し、ダメ押し。...

【第9回】フィールドフォースカップ総括
頭ひとつ抜けていた茎崎。 敗者復活は山野が制す 決勝の4回裏、茎崎は一死二、三塁から内野ゴロで三走・新岡蓮が生還 32チーム参加の第9回大会トーナメントは、準々決勝まで自主対戦形式で消化。また、球春到来を前に試合機会をできるだけ提供したい、という趣旨で組まれた敗者復活の裏トーナメントも同様に進行し、2月19日の最終日には各4強がそれぞれの頂点をかけて激突した。 海神の二番・小山田理が準決勝の3回に逆転2ランを放つ 会場一番乗りだったレッドサンズ(東京・文京区)は、新6年生が他大会出場のためにオール新5年生で参戦。準決勝は茎崎ファイターズ(茨城・つくば市)に3回コールドで、3位決定戦は豊上ジュニアーズ(千葉・柏市)に5回コールドで連敗と、最上級生の洗礼を浴びた。だが、2試合とも先制し、一番打者の大熊一熙が2本塁打など、収穫もあった。 準決勝の特別延長7回裏、守る海神は相手のゴロ・ゴーを外して(空振り)三走を憤死に 豊上は同じ千葉勢の海神スパローズ(船橋市)との準決勝で惜敗。先制して逆転された後に2対2に追いついて特別延長戦へ。表の守りをスクイズの1点に抑えたが、裏の攻撃はゴロ・ゴー失敗など無得点で涙した。続く3位決定戦は快勝も、「攻守ともミスばかりでぜんぜんでした。目標(全国制覇)にはほど遠いけど、現在地を知ることができたので、練習で精度を高めていきたい」と原口守監督。 3位・豊上は髙根史葉主将が捕邪飛を好捕(写真)など、個々のポテンシャルがうかがえた 小粒の若いチームながら、試合運びや積極性で頭ひとつ抜けていたのが、茎崎だった。秋の新人戦で茨城大会を制し、続く関東大会も準優勝という実績に奢ることなく、どこまでも手堅く果敢に1点を奪いにいく野球を展開。準決勝、決勝とも完勝で頂点に輝いた。 敗者復活戦の準決勝で先発。抜群の制球力で要所を締め、5回まで無失点と好投した山野のエース・橋本大輝 敗者復活トーナメントは、6年生14人で参戦の山野ガッツ(埼玉・越谷市)が制覇。攻守の要である正捕手・赤松宥昂が、ケガで外野を守るなど実はベスト布陣ではなかった。それでも、代わって扇の要に入った吉田悠真が2試合でタイムリー3本、投手陣を好リードで連勝に導いた。「卒団した6年生たちが去年のポップアスリートで全国出場しているので、ウチらもそれに負けないくらい練習して全国を目指しています」(吉田)。三ツ畑竜一監督は「昨日の練習試合で嫌な負け方をしていたのですが、今日は全員ですごく良い雰囲気で戦えました。ミス絡みの失点もありましたけど、春の大会を前に良い経験になったと思います」と振り返った。 町田玉川のエース・山下良登は敗者復活の準決勝、西伊興の強力打線を4回まで無得点に封じた 町田玉川学園少年野球クラブ(東京・町田市)は、選手12人のチーム力で敗者復活の準決勝を突破。同決勝は山野を終始、追う展開で敗れたものの、最大4点差から2度、1点差に迫るなど粘りが光った。