第22回京葉首都圏江戸川大会の準決勝2試合は、実力派同士の好カードとなった。ともに4年時に好成績を収めており、カバラホークスはジュニアマック初Vで東京王者に。一方の越中島ブレーブスは、東京23区大会で準優勝。試合は5回表を終えて1対0と緊迫した好ゲームとなり、小澤蒼大主将の満塁アーチで5対0とダメを押したカバラがファイナル進出を決めた。
※記録は編集部、学年の未表記は新6年生
※※優勝チームのリポートは追って掲載します
(写真&文=大久保克哉)
■準決勝2
◇2月22日 ◇水辺のスポーツガーデン
越中島ブレーブス(江東)
000000=0
10004 X=5
カバラホークス(足立)
【越】一木、石原-長島穂
【カ】長野、赤坂-田中
本塁打/小澤(カ)
二塁打/亀田(カ)
【評】実績だけではない。スポーツマンシップも伴う両軍の新6年生たちが、期待に違わぬ好ゲームを展開した。
先に主導権を奪ったのはカバラホークスだ。長身右腕の女子・長野星那が1回表の守りを3人で終わせるとその裏、三番・野崎太幹の四球と二盗、続く亀田淳斗の左超え二塁打で先制した。長野は2回に二死一、三塁、4回には二死二、三塁のピンチを招くも、あと1本を許さない。
越中島ブレーブスの先発・石原杏嗣も右腕がよく振れており、2回以降も得点圏に走者を負いながら追加点は許さない。3回には一死一、三塁のピンチでマスクをかぶる長島穂岳が二盗阻止など、バックの守りも堅かった。
越中島は4回から登板した右本格派の一木嶺が、荒れ気味ながら球威で押しまくる。一方のカバラも、5回から登板した赤坂聡大が全身を使って左腕を力強く振り、相手打線をパーフェクトに抑え込んでいく。こうしてスコアは1対0のまま、保たれてきた均衡が破れたのは5回裏のことだった。
3四球で二死満塁の好機を得たカバラは、六番・小澤蒼大主将が右打席へ。そしてカウント2-2から低めの球をコンパクトに振り抜くと、白球は左翼48m地点にそびえるフェンスの上を超えていった。これで一気に5対0となり、このまま決着した。
〇カバラホークス・斉藤圭佑監督「新年になってキャプテンに指名した小澤が、良いところで打ってくれました。大きな1本でしたけど、彼の良いところは打力だけではない。これからもみんなを引っ張ってくれると思います」
●越中島ブレーブス・長島拓洋監督「打てない。ウチは去年から打撃が課題ですけど、強みは守備。ガマン比べで負けてしまいましたので、そこをどう抑え切るかですね」
先発したカバラの長野(上)、越中島の石原(下)は、ともに力強いボールを投じていた
カバラは1回裏二死二塁から四番・亀田(上)が先制二塁打。直後の2回表、二死一、三塁のピンチでは中堅手・金山海洋が飛球をキャッチ(下)
越中島のベンチは、常に選手のパフォーマンスを引き出す雰囲気(上)。正捕手・長島穂(下)は二盗阻止など堅守を象徴していた
4回表、越中島は四番・石原の左前打(上)と2四球で二死満塁に。一打逆転のピンチにカバラはタイムを取り(下)、再開後に長野が三振を奪う
越中島は4回から一木(上)が登板。与四球や暴投でピンチを招くも、2-1の転送で三走を本塁アウトに(下)
5回裏、二死満塁からカバラの小澤主将がレフトへサク越えアーチで5対0に
カバラは三塁手・野崎(上)の守備範囲と強肩もキラリ。ラスト2回は背番号1の赤坂(下)がパーフェクト投球で締めた
―Pickup TEAM―
勝っても負けても、応援されるチーム
第3位
えっちゅうじま
越中島ブレーブス
[江東区]
結果として1安打完封負け。唯一の安打は4回一死から、四番・石原杏嗣が左中間へ弾き返したものだった。「ダメでしょ、打てないでしょ」と、試合後は自嘲気味の長島拓洋監督(=下写真)はこう続けた。
「体がちっちゃいから、パワーで負けてしまう。良い当たりはあるけど、ひと山(内野)を越せないのが課題なんですよ」
とはいえ、各打者のスイングはシャープだった。内外野へ飛ばしたライナーも複数ある。歩んでいる方向は間違っていないし、バットの芯でとらえた打球も、ほぼノーミスで捌いた相手の堅守を称えるべきだろう。
指揮官もきっと、分かった上で謙虚に話してくれたのだ。それが証拠に、1安打が生まれる前も後も平静そのもので、個々の打ち終わりの表情までよく見ていた。高圧的な命令ではなく、対話で意思疎通が図られている。好機を含めて見逃し三振が4つあったが、悔いて戻ってくる選手をいちいち怒鳴り上げるような体質のベンチではなかった。
「ウチは保育園のときからずっと一緒、という子がほとんどなんですよ。その子たちを大事に育ててきました」
こう語る長島監督は、双子の穂岳(捕手)と光毅(遊撃手)の父親でもある。4年時の秋には東京23区大会で準優勝に導いた。昨秋の新人戦は都大会2回戦で、優勝することになる旗の台クラブに敗北。新年は中野区交流大会を制し、参加49チームの頂点に輝いている。
「メンバーをある程度、固定したのは去年の新人戦から。それまではポジションも流動的に、いろいろ経験させてきました。自分たちの強みは何だろうと、守備と連係に一定の時間を割いてずっとやってきましたので、ガマン比べで負けてしまったことは悔やまれる。そこをどう抑え切るか、ですね」(同監督)
準決勝で登板した右の2枚、石原杏嗣と一木嶺は甲乙つけがたい好投手だった。一木はやや空回りした面もあるが、二死満塁から痛恨の一発を浴びても消沈することなく、直後に空振り三振を奪って颯爽とベンチへ(=上写真)。本番で投げられる投手はまだ2枚いるというから、夏場にかけてのシーズンのピークも十分に乗り切れることだろう。
投手陣をリードする長島穂岳は俊敏で強肩。父でもある監督は「まだままだ声が出るはずだし、全般的に硬かった」と厳しい評価だが、走者一、三塁のピンチでは自らのサイン通りに二盗を阻み、投手を救った。また、投手の暴投で転がるボールへ瞬時に追いついての本塁送球で三走を憤死させるなど、遊撃を守る兄弟・光毅とともに身軽さと確実性が随所で際立った。
0対1で推移したガマン比べの中で、全体の守りを統率し、仲間を励まし続けたのは二塁手の栗田洵主将だった(=上写真)。満塁弾を浴びてもその声が止むことはなく、「惚れ惚れしますよね」と長島監督も全幅の信頼を寄せている。
だが、三番打者として無安打で2三振。責任感も強い主将は、第2打席の見逃し三振もよほど悔しかったと見えて、敗北後は涙がこみ上げるばかり。それでも辛うじて声を振り絞った。
「江東区で勝って都大会ベスト4以上が目標です」
大型のチームではないが、サイズは平均並みで粒ぞろい。軍隊のような異様に張り詰めた空気はなくても、各々に闘志とスキルがしかと宿っている。そして見守る保護者たちも含めて、スポーツマンシップの理解と浸透が随所にうかがえた。勝っても負けても、間違いなく応援されるチームがここにもあった。