2024注目戦士

特異な学童ラストイヤーでまた成長。可能性無...
【2024注目の逸材】 みなと・はると 湊 陽翔 [埼玉/6年] よしかわ 吉川ウイングス ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、中堅手 【主な打順】二番 【投打】左投左打 【身長体重】148㎝37㎏ 【好きなプロ野球選手】今永昇太(DeNA)、周東佑京(ソフトバンク) ※2024年12月10日現在 きれいに立って、きれいに腕が振られる。その一投を見ただけで、いかほどのピッチャーであるのかの察しがつく。より知りたくなるのは、どのようにしてその投げ方が身についたのかということ。 「お父さんが社会人野球までピッチャーをしていたので、教えてくれます。ピッチャーは3年生の秋から。自分の良いところは? ストライクをポンポン取れるところ。将来はお父さんのように? はい、なりたいです! 来年はマックの全国大会(全日本学童大会)に行って、ピッチャーとして活躍したい」 湊陽翔が揚々と話したのは、1年以上も前。2023年10月21日、新人戦の茨城大会優勝時だった。きりっとした目鼻立ちと痩身は今も変わらない。 5年秋、オール東海ジュニアのエース兼六番打者として茨城大会優勝に大きく貢献(2023年10月21日、ノーブルホームスタジアム水戸) でも、当時の写真をあらためて見返すと、今よりもはるかに細くて小さかった。140㎝32㎏で、最速は92㎞(球場表示)。現在は148㎝で38㎏。球速は未計測だが、100㎞は超えているだろう。 「将来の夢? 野球を長く続けたいと思っています。今のセールスポイント? 勢いのある真っすぐと、けん制とか。一番意識しているのは、どれだけのスピン量(球の逆回転)が出せるか。『プロのフォーシーム(直球)は2500回転以上』とか、自分で調べるのも好きです。お父さんの友人に、お風呂の湯舟の中で手首を鍛える方法を教えてもらって、いつもやっています」 小学生にとっての1年間とは、大人が思う以上に濃くて尊いようだ。まして湊の学童ラストイヤーは、特異なものだった。保護者の仕事の都合で、6年生の新学期を前に茨城県から埼玉県へ転居。袖を通すユニフォームも変わった。 「引っ越すと聞いたときは、すごく嫌でした。チームも移りたくなかった」 こう振り返る湊は、妹と2人兄妹の長男坊。極度の人見知りで、新しい環境になじめるのか。母・琴絵さんは不安だったというが、今では息子と同じことを口にする。 「吉川ウイングスに来て、ホントに良かったです。感謝しかありません」 父・哲郎さんは東京出身。日大高(神奈川)から日大を経て、社会人の名門・日立製作所でもプレーした右腕だ。現役生活はケガとの闘いでもあり、苦しんだ思い出が大半だという。 「ケガすると何もできないし、面白くない。野球を含め、何かを息子に強制したことはありませんけど、本人が(教えを)求めてきたときには無理のない投げ方、肘や肩が痛くならない投げ方をするべきだよね、と。体にまだパワーがないので、柔軟性を高めるとか手足の良い動かし方とか、自分で学べることもたくさんある。私が子どものころは参考書みたいな本しかなかったけど、今は動画もあって情報がいっぱい。うらやましいなと思います」 全国出場をリアルに描く...
特異な学童ラストイヤーでまた成長。可能性無...

年末の夢の祭典へ『2024注目選手』から9...
小学生球児がリアルに追う夢や憧れは、夏の2大全国大会のほかに「NPB12球団ジュニアトーナメント」がある。NPB(日本プロ野球機構)が球界再編問題に揺れた翌年、2005年に始まった年末恒例の学童球児の祭典だ。当メディアでは『2024注目選手』として、延べ25人を紹介してきているが、そのうち9選手がNPBのジュニアチーム(1球団16人)に選出されている。開幕まで1カ月を切ったこのタイミングで、改めて顔ぶれを紹介していこう。 (動画&写真&文=大久保克哉) ※9選手プレー動画のプレイリスト➡こちら NPB12球団ジュニアトーナメントは、5・6年生16人のジュニアチームを各球団が編成し、日本一を決するもので、2005年に第1回大会を福岡ヤフードームで開催した。コロナ禍の2020年は、夏の全国大会も高校野球の春夏甲子園も中止されたなかで、年末のこの祭典は関係各所の尽力と理解によって実施され、懸命に白球を追う全国の少年少女の夢がつながれた。 スタートした当初は12球団の温度差が激しく、メンバー選考は地元の学童野球関係の組織や要人にほほ丸投げという球団も。一方で、北海道に移転したばかりだった日本ハムは、開催初年度から全道対象のセレクションを実施。巨人は2006年から小学生対象の通年スクール(アカデミー)を開校するなど、競技人口激減の流れをいち早く察知した球団の本気の取り組みもあった。 2005年の第1回大会、ロッテJr.でプレーした近藤健介(現ソフトバンク) 現在は10球団が、ジュニアチームの活動とは別にスクールを運営。また、この小学生の夢舞台の経験者から、ドラフト指名選手が毎年生まれていることも特筆したい事実だ。今季のパ・リーグMVPに輝いた近藤健介(ソフトバンク)は、第1回大会出場者でもある。 歴史を重ねるごとに温度差も解消されてきて、現在はメンバー選考にどの球団もセレクションを実施。1球団16人のジュニア選手となるのは至難で、夏の2大全国大会出場にも匹敵する栄誉やステイタスに。12球団の所在地に偏りはあるものの、誰でもチャレンジできる。そういう意味では、NPBジュニア入りは「個人の夢」の最高峰と言えるだろう。 埼玉西武ライオンズJr. 東京・鶴巻ジャガーズ 園部 駿 ※4月9日公開記事➡こちら 『学童野球メディア』の注目戦士からジュニア入りした9選手のうち、夏の全国大会の最終予選となる都道府県大会に出られなかった選手は2人いる。 園部駿がプレーする東京・鶴巻ジャガーズは、全国予選は地元の新宿区大会で敗退。だが、持ち前のフィジカルの強さに剛速球と打球の飛距離をもって、西武ジュニアに選ばれている。 もう1人、中木辰弥が投打二刀流で引っ張った滋賀・笠縫東ベースボールクラブは草津市予選で敗退。それでもオリックスジュニアを目指し、左打席から本塁打を量産し続けて「個人の夢」を叶えた。謙虚で明るい性格も評価されたのかもしれない。 オリックス・バファローズJr. 滋賀・笠縫東ベースボールクラブ 中木辰弥 ※6月20日公開記事➡こちら 東京・旗の台クラブの寺村陸(DeNAジュニア)は、都大会3位決定戦に敗れて全国出場をあと一歩で逃したものの、この試合で左腕から109㎞をマーク。気合いも乗った勝負球の球威が際立っていた。また、同チームは片山龍和(巨人ジュニア=捕手)と梶原大誠(ロッテジュニア=遊撃手)の計3人のジュニアを輩出している。 横浜DeNAベイスターズJr. 東京・旗の台クラブ 寺村 陸...
年末の夢の祭典へ『2024注目選手』から9...

天真爛漫とパッション。不世出の“クセスゴ”...
【2024注目の逸材】 きむら・しんた 木村心大 [東京/6年] ふなばし 船橋フェニックス 読売ジャイアンツジュニア ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、三塁手 【主な打順】一番 【投打】右投右打 【身長体重】152㎝50㎏ 【好きなプロ野球選手】植田海(阪神) ※2024年11月5日現在 そこには無垢な夢しかなかった。 「一番、ピッチャー、木村」 自らウグイス嬢も務め、バットを持って仮想の打席へ。そして今度は一人で実況もしながらスイングし、仮想の一塁へ走って、守備や審判までやる。 「良い当たりだぁ! でもこれはサードの正面、1アウト…」 物心のつかぬうちから、ゴムボールとプラスチックバットを手に一人、“プロ野球ごっこ”に興じていた長男坊。この夏休み中も連日、自主練習に励んだが、母親の目には幼児期からの“ごっこ”の延長にも映っていたという。 「それが彼の原点なんだろうなとは分かっているんです。ただ、やっぱり、もっと突き詰めてやっていくには…」 木村心大の母・美香さんはかつて、実業団に所属するエリートランナーだった。全国高校女子駅伝で2回の優勝を誇る兵庫県の名門・須磨学園高で鳴らし、全国駅伝では3区を走っている。そんな元トップアスリートには、長男の牧歌的な鍛錬が微笑ましくもあり、歯がゆさも感じているという。 「私自身が陸上ではすごく苦労して、人から言われてやらされていた感じでしたので、シンタ(心大)には同じ苦労はさせたくないなと思っているんです。言われなくてもやってほしいので、そういうふうに仕向けてはいるんですけど…」 生粋の野球バカは、野山を好きに駈け、好きに草を食む野生馬のごとく。フィールドが遊び場であるかのように、いつでも奔放に存分にプレーしている。そんな木村の原風景は、冒頭のような幼少期にあるようだ。 本気の道化師 「怒られるときもありますけど、野球をやめたいと思ったことはないですね。一番覚えているのは、船橋フェニックスに入った年長(就学前)のときに、練習でアウトになって泣いていたこと」 激情もやはり、天然もの。だから嫌味がなくて、擦れた大人は憧憬をもって感情移入してしまうのだ。...
天真爛漫とパッション。不世出の“クセスゴ”...

新人戦Vに続き、栃木125チームの夏Vに王...
【2024注目の逸材】 かわまた・しゅうが 川又崇雅 [栃木/6年] もうか 真岡クラブ ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、三塁手 【主な打順】五番 【投打】右投右打 【身長体重】155㎝53㎏ 【好きなプロ野球選手】今永昇太(カブス) ※2024年9月1日現在 「来年は平均で100㎞以上を投げられるように。将来は人類を超える200㎞を出したいです!」 屈託もなく話したのは昨年の秋、新人戦で栃木大会を制したときだった。16時半に始まった県決勝戦。先発した背番号1の川又崇雅は、初回に先制ソロを許すも、5回2失点とゲームをつくって優勝に貢献した(リポート➡こちら )。 2023年10月28日、県決勝。真岡クラブは12対2で勝利して初優勝。5回2失点の川又は最終6回はマスクをかぶって歓喜の瞬間を迎えた(下) その日の投球で際立ったのは、ほぼ一本槍のストレートだった。ナイター照明の視覚効果もあったかもしれないが、川又の指先を離れた白球は糸を引くように伸びていた。スローボールを必要としない内容で、2回から4回までは無安打。5回には不運な当たりや失策絡みで1失点も、制球は乱れず。最後は二死二、三塁のピンチを切り抜け、お役御免となった。 この夜、もうひとつ驚いたのは、当時5年生の川又が夢をこう語ったことだった。 「将来はプロ野球選手になりたいけど、そこまで無理をせず、しっかりと自分が進んでいきたい人生を進むことです」 後から両親や指揮官にも確認したが、誰かの入れ知恵ではない。当時は単純にそう考えていたという。そんなエースを勝田隆志監督(=上写真)は「素直で、野球が大好きな純粋な子」と、まずは評した。 「去年(2023年度)は6年生が1人しかいなくて、川又は地肩が強かったので5年生から1年間、中心に投げてきました。新チームになって、勝負どころで抑えてくれる、信頼して任せられるピッチャーになってきたと思います」 野球一色の日々に変化 川又は長男で、下に妹が2人。3年生の長女・百華も、真岡クラブでプレーしている。近所に住む母方の祖父・石塚哲男さんが大の野球好き。孫の川又は幼いころから、一緒に庭でキャッチボールをしたり、プラスチックのバットで打たせてもらったりしてよく遊んだという。 「3年生のときに、お爺ちゃん家に行ったらテレビでプロ野球をやっていて、阿部慎之助(現・巨人監督)がめっちゃ活躍していて、自分も野球やりたい! となってチームに入りました」(川又) 下半身がやや遅れて回転、上半身との捻転差も利して右腕が力強く振られている 1年生、2年生と、学校の同じクラスにいた勝田透羽(現主将)から熱心に誘われていたこともある。幼稚園で体操クラブに入っていたという川又の身のこなしは、低学年生の中でも一目置かれていたのだろう。...
新人戦Vに続き、栃木125チームの夏Vに王...

元全国王者が生んだ不屈のエース。心のケガ乗...
【2024注目の逸材】 いわさき・りく 岩﨑 陸 [石川/6年] せいなんぶ 西南部サンボーイズ ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、中堅手、一塁手 【主な打順】三番 【投打】右投右打 【身長体重】150㎝32㎏ 【好きなプロ野球選手】ムーキー・ベッツ(ドジャース)、山本由伸(同)、吉田正尚(レッドソックス) ※2024年8月5日現在 「辛かった…」 1年前の夏休みの終わりから、年末までのおよそ4カ月。岩﨑陸が感じたものは、負けて悲しい、打たれて悔しい、という次元ではなかった。 食べる気でいても、口に入れたものが喉を通らない。投げる気でいたのに、当日になると足がすくんで息が苦しくなってくる――。 自分で自分に何度も失望し、もがき苦しんだ。でもその分だけ、物事にいちいち動じなくなった。チームの理解と専門医の指導の下、自らの意思と家族の協力をもってコツコツと階段を上りながら、マイペースの強さと尊さを悟った。 そして「心のケガ」を完治させると、頼もしいエースへと成長していった。そんな今があるからこそ、父・真也さんも打ち明けてくれた。 「1回2回、打たれたくらいでシュンとして泣いとったり、自信がない感じやったのが信じられんくらい、図太くなりましたね。もともと食が細い子で、『もっと食べろ!』は言ってましたけど、『練習しろ!』は言ったことない。食べれんくなったときは、野球をやめるんかなとも思っていたんですけど、小学校の6年間は続けるみたいですね」 次男が継いだDNA 祖父は地元では名の知れた柔道家だった。同じく柔の道を歩んだ父は、授かった3人の息子たちに「道」を指南したことはない。ただし、心の中では武道をやってほしかったという。 「それが3人とも野球です。でも、みんな自分からやりたいと言い出して始めたので、そこは尊重しています」(真也さん) 腕の使い方など投球フォームは、投手をしている2歳上の兄から直々に教わりながら身につけた 球の道に進んだ次男・陸には、器用さと足腰の強さが引き継がれたようだ。 残念ながらプレー動画に収められていないが、50mを7秒15で走る。その健脚を球速にそっくり転化するまでの身体はまだないものの、長い手足を操る投球フォームはしなやかで、バネを訴えてくる。 そしてピッチングがクールで賢い。その拠り所は、遅球の幅とコントロールだ。浮き上がるような山なりの超スローボールから、力をやや抑えた中速球までを意のままに使い分ける。好調時にはそれが、ビシビシと捕手のミットへ。となれば、全力で投じる速球が打者にはまた厄介になる。...
元全国王者が生んだ不屈のエース。心のケガ乗...

昨夏に全国デビューの二刀流。自ら二兎を脱し...
【2024注目の逸材】 とみた・ゆうき 富田裕貴 [愛知/6年] きたなごや 北名古屋ドリームス ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、二塁手、三塁手 【主な打順】三番 【投打】右投右打 【身長体重】150㎝41㎏ 【好きなプロ野球選手】今宮健太(ソフトバンク)、村松開人(中日) ※2024年7月20日現在 身長は150㎝に達したところ。球速は「100㎞」の大台にまだ届いていない。それでも、富田裕貴には未来につながる整ったフォームと、足場が緩い雨天下でも乱れないコントロールがある。 「アピールポイント? どんな状況でも自分のピッチングができるところです。すごく緊張することは今もありますけど、深呼吸でリラックスする方法をお父さんに教えてもらいました。ストライクゾーンの四隅へ投げ分け? いえ、そこまでではないですけど、左右(内外)の投げ分けを間違うことはほとんどないです」 貴重な経験もある。昨夏は神宮のマウンドで全国デビュー。全日本学童大会の1回戦(対佐賀・川副少年野球)、7対1とリードして迎えた5回から二番手で登板し、6回に2安打と適時失策で1点は失うも、最後まで投げ抜いて勝利した。 「全国大会は緊張しましたけど、思い通りには投げられました」 2023年8月6日、神宮球場でのナイトゲームで全国デビュー。初打席は二ゴロだった(下) 続く2回戦(駒沢公園野球場)は、七番・遊撃でスタメン出場。山梨・甲斐JBCに1対5とされてなお、5回二死一、二塁のピンチでマウンドへ。四番打者を二直に打ち取り、6回の反撃につなげたものの、1点及ばすに惜敗している。 2019年には日本一手前の全国準Vも果たしている強豪チームにあって、当時の5年生で試合に出ていたのは、富田のほかに中堅手の大口航輝(現・遊撃手)のみ。大口はヒット1本に盗塁や得点もマークしたが、富田は3打数で音なしだった。 「5年生のときにまったく打てなくて、そこからはお父さんにも手伝ってもらいながら、努力を続けてきています」 平日朝の登校前は、素振りを100回から200回。帰宅後は父の帰宅を待って、ティー打撃でとことん打ち込む。自宅敷地内のガレージには、父が張り巡らせてくれた練習用のネットもある。 「お父さんの帰りが遅い日は、置きティーで打っています。疲れて休みたいときも少しはあるけど、お父さんがマッサージもしてくれます」 物心もつかないころから打ったり、投げたり。これを始めたのも、すでに野球に没頭していた12歳上の兄と、父の影響だったという。 最大の理解者と全幅の信頼 「お父さん」...
昨夏に全国デビューの二刀流。自ら二兎を脱し...

通算49HRにMAX107㎞。仲間の応援も...
【2024注目の逸材】 なかき・たつや 中木辰弥 [滋賀/6年] かさぬいひがし 笠縫東ベースボールクラブ ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、中堅手、一塁手 【主な打順】三番 【投打】左投左打 【身長体重】163㎝62㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース)、王貞治(元巨人)、金田正一(元巨人ほか) ※2024年6月18日現在 学生野球の聖地「神宮球場」は、野球少年の大きな憧れのひとつ。所在地の東京から遠くなるほどに、その傾向は強くなるのかもしれない。 「小学生の甲子園」こと全日本学童大会マクドナルド・トーナメントも、神宮での開会式がおなじみだ(※来年度は新潟県開催)。昨年の12月には、ポップアスリートカップの全国ファイナルトーナメントも同球場が舞台に。滋賀県の笠縫東ベースボールクラブは、自主対戦方式の長い予選を突破し、関西第二代表としてファイナル初出場を果たした。 1回戦で夏の全日本学童覇者・新家スターズ(大阪)に2対9で敗北。だが、同大会も制して年四冠に輝くことになる絶対王者に真っ向から挑む姿が印象的だった。1回表に2点を先制し、4回までは4点差の勝負を展開した。 2023年12月9日、神宮球場でのポップアスリートカップ全国ファイナル。当時5年生の中木は1回戦に二番・一塁でスタメン出場 「神宮は今までやってきた球場と景色もぜんぜん違いました。スタンドが広くて青くてきれいで、打席に立つとピッチャーマウンドからオーラみたいなものを感じて、緊張してしまいました」 試合後、にこやかに感想を語ったのが5年生(当時)で唯一、メンバー入りしていた中木辰弥だった。 二番・一塁でスタメン出場。第1打席は四球を選ぶ(=下写真上)と、日本一バッテリーから二盗を決め、続く渡部叶成(現・守山シニア)の中越え二塁打で先制のホームを踏んだ。3回表の第2打席は右方向へ、ヒット性の強い当たりを飛ばした(=同下)。 「体がデカくて、サク越え(本塁打)ばっかり。生意気? ぜんせんです! めっちゃ良い子ですよ、素直で」 中木ついて話してくれたのは、先制打を放った1学年上の先輩。その評価を聞くまでもなく、試合中から人間性のおおよそを読み取ることができた。 第2打席後、3回裏の守りから中木はベンチへ。「簡単に出られない大きな大会、神宮でのプレーもなかなかできることではないので、6年生をみんな出してあげたかった」とは、試合後の中原亮一監督のコメント。結局、体調不良者と自分の愛娘だけはプレーさせてやれず。あとは全員を聖地のフィールドに送り出した。 背後(右)にいるのが中原監督。現在は総監督となっている 指揮官のそんな複雑な胸中までを知ってか、知らずか。交代した5年生は懸命に先輩たちを鼓舞し続けた。途中から出る選手のキャッボール相手を率先して務め、ベンチ中央の最前列から時には身を乗り出すようにして声を張り上げていた(※プレー動画内参照)。 「野球はチームスポーツで、どれだけ負けていても、最後のアウトを取られるまでは勝負は分からない。そういうところが醍醐味だなと思っています。自分のセールスポイント? 例えば、ピッチャーではノーアウト満塁から3連続三振とか、バッターでは追い込まれても粘ってホームランとか。そういう粘り強さが自分の一番良いところだと思います」...
通算49HRにMAX107㎞。仲間の応援も...

新潟の強豪から台頭。双子の兄も打線もリード...
【2024注目の逸材】 みとみ・はやと 三冨遥斗 [新潟/6年] 五泉フェニックス ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、中堅手 【主な打順】一番 【投打】左投左打 【身長体重】154㎝40㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース) ※2024年6月5日現在 「打った瞬間、いったなと思いました」 手応え十分の一発は、あっという間に70mフェンスの向こうへ。あまりにも速かった球足のせいだろう、外野手があらぬほうへ動き出しているようにも見えた。 五泉フェニックスの一番・三冨遥斗が先頭打者アーチを放ったのは、全日本学童マクドナルド・トーナメントの最初の予選となる、五泉市阿賀野町大会決勝でのことだった。 全日本学童五泉市阿賀野町予選会の決勝、1回裏に1ボールからの2球目をライトへ先制本塁打 これで火がついた打線は2回、三番・三冨諒斗と四番・樋口大河の連続タイムリー二塁打など、打者11人の猛攻で7得点。そして4回裏、一死二塁から三冨遥がライトへ再びアーチを描き、10点差のコールド勝ちとなった。 ダイヤモンドを一周して本塁を踏むや、仲間たちの祝福を受け、挨拶を済ませたヒーローは、2発目をこう振り返った。 「打ったボールはインコース気味だったと思います。(ホームランを)狙っていたわけではなくて、次のバッターにつなごうと思っていました」 1試合2本目の本塁打は、コールド勝ちと優勝を決めるサヨナラ弾に(五泉市阿賀野町予選会) 前日の準決勝では、右スラッガーの二番・藤塚蒼生とアベックアーチを放っていた。通算でサク越えは8本、ランニング本塁打も合わせると20本くらいではないかという。 「打球を飛ばすコツ? …わからないです。気付いたら飛んでいる感じ。今の打ち方も自然にそうなっただけで…」 小学生が劇的に伸びる時期というのは、こういうものなのかもしれない。自分の頭でも整理しきれないほど、パフォーマンスが一気に引き上がる。 ピリついたムードはないのに、選手も保護者も団結力が際立つチームだ 取材者の質問にも、どこか戸惑いがち。そんな教え子を柔和な顔で遠巻きに眺めていた吉川浩史監督が、3年生の冬にチームに入ってきた当時をこう振り返った。 「彼がウチに来たときは、ティーバッティングでもバットにボールが当たらなかったんですよ。空振り、空振りで。前から投げたボールに対しても、こすってしまって前になかなか飛ばない。なので、とにかくバットを振らせましたね」...
新潟の強豪から台頭。双子の兄も打線もリード...

5年夏に全国デビューの秀逸バッテリー。満を...
【2024注目の逸材⓲⓳】 [茨城/6年生バッテリー] 茎崎ファイターズ さとう・えいと 佐藤映斗 ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、左翼手 【主な打順】五番 【投打】左投左打 【身長体重】156㎝46㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース) ※2024年6月2日現在 ふじき・たくと 藤城匠翔 ※プレー動画➡こちら 【ポジション】捕手 【主な打順】三番 【投打】右投左打 【身長体重】148㎝47㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース) ※2024年6月2日現在 「0か100か」の子が移籍 夢のステージは、下級生にも容赦がなかった。 2023年夏の全日本学童マクドナルド・トーナメントの2回戦。大会を制することになる大阪・新家スターズと対戦した茎崎ファイターズは、2対19で大敗した。先発のマウンドにいたのが当時5年生の佐藤映斗、そしてマスクを被っていたのが同じく当時5年生の藤城匠翔だった。...
5年夏に全国デビューの秀逸バッテリー。満を...

ポテンシャルに元五輪代表主将の指揮官も太鼓...
【2024注目の逸材】 わだ・りおと 和田凌音 [神奈川/6年] 平戸イーグルス ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、右翼手 【主な打順】五番 【投打】左投左打 【身長体重】159㎝42㎏ 【好きなプロ野球選手】山本由伸(ドジャース)、村上宗隆(ヤクルト) ※2024年5月26日現在 東京に次ぐ全国2位の大激戦区。687チームが加盟する神奈川で、頂点に立つのは容易なことではない。 全日本学童マクドナルド・トーナメントの予選となれば、競争倍率は全国1位に跳ね上がる。1051チームが加盟する東京は本大会出場3枠(開催地枠含む)なのに対して、神奈川は大半の道府県同様に1枠しかないからだ。 2年前にその狭き門を突破して全国デビューした平戸イーグルスが、2年ぶりの大舞台へ順調に歩を進めてきている。昨秋の新人戦は、県大会を制して関東大会ベスト4まで進出した。 昨秋は県大会を制して関東4強。和田は右から4人目の長身選手 2024年は、2月15日で対外試合解禁(県のルール)となってから、黒星は関東大会優勝の船橋フェニックス(東京)と、同準優勝の西埼玉少年野球(埼玉)に喫したのみ。全日本学童の予選はまず3月に、24チーム加盟の横浜市戸塚区を突破。そして4月からGWにかけて、265チーム加盟の横浜市18区32代表による予選トーナメントをぶっちぎりで制している。 6年生はジャスト9人で、5年生が14人。粒ぞろいで攻守ともバランスがとれており、勝負強い。中でも投打でポテンシャルが際立つのが、左投左打の和田凌音だ。 クセのない自然体のフォームがまた、将来性を感じさせる まず目につくのが、すらりと長いコンパスと小さな頭。打席でもマウンドでも、その恵まれた体をシンプルに操って高い出力を発揮する。カウントや状況によってスローボールも投じるが、何よりの武器であり魅力は、真っすぐに伸びていく快速球だ。 「三振を取りにいくより、ど真ん中でもいいので、ストレートで攻めていくことを意識しています」 全国区の強打者にも動じることなく、詰まらせたり、ポップフライを上げさせたり。対左打者にとりわけ自信があるようで、アウトコースへの角度のある快速球で奪う空振りも増えている。 力感がないのにグンと伸びていく速球が、打者を狂わせる。「球速は計ったことがありません」 昨秋の新チーム始動からの個人成績がまた圧巻だ。計16試合に登板、35イニングを投げて四死球が何とゼロ! そして防御率は0.86(5月26日現在)。 学童チームでここまで詳細に成績を管理しているのも驚きだ。担当する事務局長兼務の阿部将人ヘッドコーチは、和田の成長ぶりに目を細めている。 「以前は経験の少なさから精神的な脆さもあって、うまくいかずに四死球連発もありましたけど、最上級生になって落ち着きが出てきましたね。特に先頭打者に集中して入れているのが、安定感につながっていると思います」...
ポテンシャルに元五輪代表主将の指揮官も太鼓...

4年生で全国デビュー。3年連続の夢舞台へ、...
【2024注目の逸材】 はんがい・ゆうき 半谷悠祈 [福島/6年] 常磐軟式野球スポーツ少年団 ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、遊撃手、三塁手 【主な打順】一番 【投打】右投右打 【身長体重】147㎝36㎏ 【好きなプロ野球選手】山本由伸(ドジャース) ※2024年5月19日現在 4年時の2022年に八番・三塁で、5年時は二番・遊撃で、全日本学童マクドナルド・トーナメントにスタメン出場した。 大会序盤でいずれも敗退したが、昨年は1回戦でライト前ヒットを2本。安定した遊撃守備も光り、神宮球場での2回戦ではワンミス直後に遊ゴロを難なくさばくなど、ハートの強さも垣間見えた。 2023年全日本学童2回戦(対東京・不動パイレーツ)。当時5年生ながらフル出場。1回戦では2打席連続でヒットも放っている 「今年も両親を夏の全国大会に連れていきます! 2年連続で3回戦に進めなかったけど、全国のレベルを知っているので、自分たちもそういうレベルになれるように、みんなで努力してきました」 こう語る主将の半谷悠祈のほかに、今年の6年生は右大砲の鯨岡涼聖しかいない。 しかし、常磐軟式野球スポーツ少年団といえば、全日本学童最多出場記録(23回)と1回の優勝(2010年)を誇る国内随一の名門だ。最上級生の数で目標が変動するはずもなく、半谷主将を筆頭に、3年連続の全国出場と2010年以来の優勝へと本気で歩んできている。 チームは昨年度で40周年。天井監督は6年生の人数で勝ち負けを語ることはない この4月の東日本交流大会では、優勝した茎崎ファイターズ(茨城)との2回戦で一進一退の好ゲームを展開。旧知の盟友同士だが、現6年生の代は初対決であり、天井正之監督も「何とかね、勝ってやりますよ!」と戦前から鼻息が荒かった。 そしてその“本気”に応えたのが、2人の6年生だった。 きれいにまとまった投球フォームと抜群の制球力は、幼少期からの鍛錬の賜物か 先発のマウンドに立った半谷は、1回、2回と三塁に走者を負いながらも、無失点で切り抜けると、3回一死三塁から均衡を破るスクイズバントを決めてみせた。直後に逆転2ランを浴びるも、すぐさま2対2として迎えた5回の攻撃。先頭の半谷が左前打から二盗、犠打と内野ゴロで勝ち越し。なお、二死三塁から五番・鯨岡が左前タイムリーを放ち、4対2と再び突き放した。 コースに逆らわず、鋭い打球を放つ。状況に応じてバントも盗塁もできるリードオフマンだ 茎崎はその後に同点2ランから、特別延長でサヨナラ勝ち。この一戦は大会関係者や他チームの首脳陣も多くが見ており、「内外を突くコントロールが素晴らしい」「打てそうで打ち崩せないピッチャーの典型」と、大いに株も上げたのが右腕の半谷だった。 身長はまだ140㎝台。成長期の訪れとともに球速も飛躍的に伸びそう...
4年生で全国デビュー。3年連続の夢舞台へ、...

“オレンジ旋風”の要。関東王者打破へ、静か...
【2024注目の逸材】 すずき・こうだい 鈴木煌大 [東京/6年] 高島エイト ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、三塁手 【主な打順】二番、三番 【投打】右投左打 【身長体重】160㎝53㎏ 【好きなプロ野球選手】山本由伸(ドジャース) ※2024年5月12日現在 全日本学童東京都予選会のメイン会場。府中市民球場は8月の本大会とは異なり、70mの特設フェンスがない。つまり、外野への打球はすべてフリーだ。 となると、外野手の前後の位置取りと守備範囲、内野手の後方の打球へのケアが、明暗を分けることが多くなる。しかし、このバッターの打球は、そういう次元を超えていた。 高島エイトの二番・鈴木煌大だ。5月12日、開会式直後のオープニングゲーム。足立区王者・西伊興若潮ジュニアとの1回戦の第4打席で、衝撃的な一打を放っている。 「外野バック!」「内野もバック!」「内野も外野もみんな下がれ!」 6回表、二死無走者で左打席に向かうと、相手ベンチから長打警戒の指示が盛んに飛んだ。前の打席では、右前へあっという間に達するタイムリーを放っていたから、無理もない。 その警戒網を打ち破ったのは、1ストライクからの2球目だった。やや余して握るバットをコンパクトに振り抜くと、白球は中堅手の頭上をライナーで襲い、122mのフェンスへと芝の上を転々。相手の完璧な打球処理からの中継プレーを前に、本塁憤死でランニングホームランとはならなかった(記録は三塁打と走塁死)。それでも、実績と実力を伴う両軍によるこの一戦で、文句なしに一番の打球の飛距離とスピードだった。 全国大会最終予選の1回戦。第3打席の右前タイムリー(上)に続き、第4打席は中越え三塁打(下) 「緊張しました。(三塁打も)あまり覚えていないです。手ごたえもあまりなかった感じで…」 8対5で初戦を突破した後の鈴木は、拍子抜けするほど口が重かった。 なぜ、バットを短く持つのか。力感みなぎるフルスイングというより、ミート優先のスイングにも見えるが、なのになぜ、あれほど打球を飛ばせるのか。本塁打は今年に入って何本、上積みしたのか(昨年までで通算10本程度)…。何を聞いても、どうにも歯切れが良くない。代わりに、周囲の仲間たちが口々に教えてくれた。 「今年だけでホームラン20本は余裕でいってるでしょ!」「チームで一番打っている!」「めちゃめちゃ打つし!」…。 またフィールドでは、逆に鈴木が仲間を励ますシーンもあった。印象的だったのは4点リードで迎えた最終6回裏の守り。内野ゴロの送球エラーから無死二塁になると、藤井誠一監督がベンチを出てきて内野陣を集め、こう声を掛けた。 「4点差あるし今、反省しても仕方ない。1個1個アウトをとっていこう! お説教は試合後にできるからな(笑)」 ミスした選手も心を立て直せる内容と時間だった。マウンドでの円陣が解けてから、鈴木はさらに何かしら言葉を掛けて三塁の守備に戻っていた(=下写真)。...
“オレンジ旋風”の要。関東王者打破へ、静か...

4年連続の全国出場へ。都の名門をリードする...
【2024注目の逸材】 おおくま・いちき 大熊一煕 [東京/6年] レッドサンズ ※プレー動画➡こちら 【ポジション】中堅手、投手 【主な打順】二番 【投打】右投右打 【身長体重】148㎝43㎏ 【好きなプロ野球選手】村上宗隆(ヤクルト) ※2024年5月5日現在 夏はやはり、燃えるような赤い太陽が映えるのかもしれない。 昨年8月の全日本学童マクドナルド・トーナメントでは、チーム最高位となる銅メダルを獲得したレッドサンズ。その中央では、最速124㎞のスーパーエース・藤森一生(駿台学園中1年)が、さん然と輝いていた。そして渋く光っていたのが2人の当時5年生、大熊一煕と中田静だった。ともに1カ月前の都知事杯からレギュラー争いに食い込み、チームの底上げに大きく寄与した。 都知事杯の準決勝で、途中出場からレフトへ豪快に2ランを放った大熊は、続く打席ではライトオーバーのサヨナラ打(コールド勝ち)。すると決勝は、スタメン四番に大抜擢された。 2023年7月16日、都知事杯準決勝(対高島エイト)。3回から中堅守備に入った大熊(当時5年)は、直後の打席で左へ2ラン 続く全国大会は1回戦から準決勝まで全5試合に出場。うち2試合はスタメンで、準々決勝では満塁走者一掃の左二塁打など打率.286をマークしている。 「全国は応援もすごいし、相手のレベルも高いし、良い環境の中で良い経験を積ませてもらいました。ヒットはそんなに打てなかったんですけど、外野の守備で貢献できたかなと思います。レフト、センター、ライト、全部守りました」 実は野球で何よりも好きなのが、中堅守備だという。4年時の春から学年チームを率いている佐藤公治監督は、大熊についてこう評している。 「チーム内では運動能力が一番高い。体はまだ大きくないけど体幹もしっかりしていて、非常に動きにキレがある。外野守備も抜群で、肩も足もある上に打球の飛距離がまた断トツ。よく言う『走攻守』のすべてがそろった選手ですね」 2023年8月10日、全日本学童準決勝(対新家スターズ)。大熊(上)と中田(下)の当時5年生コンビはそろってスタメン出場も、無安打でチームも敗れている(写真/福地和男) 本塁打は正確にカウントしていないが、低学年から通算すると50本は確実に超えているという。このGW中は地元の文京区春季大会(優勝)や、隣県の全国区の強豪との練習試合でも70mのサク越え弾を放っている。 「最近打ちまくっている? いえ、そこまでではないですけど、しっかりとミートした打球が良い所に飛んでくれています」 チームの活動がない平日も、努力を怠らない右のスラッガー。バッティングセンターへ行って打ち込むか、行かない日は素振りと約2kmのランニングを自らに課しているという。 「夢はプロ野球選手になること。バッターでいきたいと思っています」 必勝リレーを確立...
4年連続の全国出場へ。都の名門をリードする...

度肝を抜いた捕手デビュー。質も幅も増すばか...
【2024注目の逸材】 あいす・しょうた 愛須翔太 [兵庫/6年] 東播ナインストリーム ※プレー動画➡こちら 【ポジション】捕手、投手 【主な打順】一番 【投打】右投右打 【身長体重】149㎝43㎏ 【好きなプロ野球選手】森下翔太(阪神) ※2024年4月15日現在 見て驚き、聞いて驚いた。昨年11月、近畿圏中心のローカル大会に出場していた、東播(とうばん)ナインストリームの背番号2の捕手、愛須翔太だ。 キャッチングはピンポイントで、球の握り変えも二塁送球動作もスピーディーで動きにムダがない。落ち着き払ったリードに声掛けといい、のっけから惚れ惚れ。1学年下のチームが相手だったとはいえ、日本一3回の多賀少年野球クラブ(滋賀)の手練れの走者たちの二盗も次々と阻んでみせた。 捕球も送球も、動作から一切のムダを省いたかのようにスムーズで速い いったいどれだけの経験と、どのような努力を重ねてきたのか。試合後に本人を直撃すると、このような答えだった。 「キャッチャーはきょうが初めてやから、とりあえず思い切りプレーして笑顔でやりたいと思いました。2週間くらい前から、キャッチングとストッピングの練習はしてきました」 それまではエース格の投手で、最速は100㎞(当時)。彼ら新チームの最上級生たちは、4年時の秋に兵庫県大会で優勝している。それなのに、総仕上げともいえるラストイヤーの入り口でなぜ、捕手にコンバートされたのか。 大垣幸信監督の答えは明快だった。 「今は勝ち負けやなしにいろいろね、可能性を広げとるんです。ホンマは吉本(瑛翔と)いう子がずっとキャッチャーをしとって、愛須とのバッテリーやと相手は盗塁もそうできん。でも、あの吉本は足がむちゃくちゃ速くて、中・高とそれ以上の先も考えたら、もっと足を使えるようにしたらなアカンなと思って、あえてセンターをさせたんです」 球速は計っていないが、昨年の最速100㎞より明らかに速くなっているという 足も肩も長打力もある愛須も同じく。活躍の場をより広げてやらん、という指揮官の親心からマスクを被ることを命じられたのだった。 「愛須は野球の通知表で言うたら、オール4.5以上。過去にはもっとすごい打者も投手もおったんやけど、すべてが高いレベルでできるという意味では、私が教えてきた中で一番ですね」 選手を知り抜く大垣監督は、2018年に全日本学童初出場まであと一歩、県大会準優勝までチームを導いた。2021年にはポップアスリートカップ全国ファイナルに初出場。その6年生たちが卒団後、愛須ら当時4年生たちの監督となった。 チームの勝利と、選手各々の未来。大垣監督のタクトはどちらにも向いている...
度肝を抜いた捕手デビュー。質も幅も増すばか...

純度100%の原石。関東王者も脅かした剛球...
【2024注目の逸材】 そのべ・しゅん 園部 駿 [東京/6年] 鶴巻ジャガーズ ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、一塁手 【主な打順】七番 【投打】右投右打 【身長体重】158㎝46㎏ 【好きなプロ野球選手】バリー・ボンズ(元パイレーツ、SFジャイアンツ) ※2024年4月8日現在 良い意味で、気負いがなくて自然体な歩み。令和の時代、こういう父子鷹も増えてくるのかもしれない。 父親監督は、プレーヤーの息子についてこう評している。 「中の上くらいの身長と体重を持っているので、中の上くらいのスピードと球は投げられているのかな。野手だったらぜんぜん、先があるような選手だとは思っていないので。このまま投手をやるんだったら、やれるところまでやってみれば、というふうには思っています」 息子のハイパフォーマンスや華々しい活躍でザワつく周囲や取材者をよそに、一向に目がくらんでいない様子。逆に目を閉じたくなるような一人相撲でマウンドの息子がイラついていても、決して声を荒げることもない。 「単純にマネジメントとして『ちゃんと投げろよ!』とか、大きい声を出してプラスに働くならやりますけど、何もプラスにならないと私は思っているので、やらないだけです」 こういう指揮官を父親に持つことも、園部駿の可能性を無限に感じる理由のひとつである。 最速は110㎞超。捕手の背後に立つと、右手の2本指を離れたボールの鋭いバックスピンが見て取れる。どうりで伸びがいい。小学生ながら、「剛球」という表現がマッチするスピードボールだ。 それを主武器として、2月の京葉首都圏江戸川大会(都内59チーム参加)の3位決定戦では3回コールド参考ながら、ノーヒットノーランを達成。右打席からサク越えの先制2ランを放つ活躍もあって優秀選手賞に輝くと、素直に喜ぶ姿もまた印象的だった。 「今まで、こういう個人賞とか取ったことなかったし、自分のピッチングができてもらえたのでホントにうれしい。野球をやってて良かったなと思います」 京葉首都圏江戸川大会の3位決定戦は無安打無得点投球(3回参考)に先制2ランで勝利の立役者に 前日の準決勝は関東王者・船橋フェニックス(東京)に惜敗したものの、並居る強打者たちの多くを「剛球」でねじ伏せた。 「ずっと0点に抑えてきて、最後はワイルドピッチとかで失点しちゃったんですけど結構、自信が持てました。ボクはバッティングはホントに微妙というか、ランニングホームランもぜんぜん打ってないし。投げるのに全部を懸けているんです。100あるとしたら、90はピッチャーというくらい」 己が何者なのか、きっとまだよくわかっていない。人との対比にも興味がないようだ。未来や将来を問うても「甲子園」や「プロ野球選手」という、秀逸なタレントにありがちな単語はついに聞かれなかった。 「メジャーリーグとバリー・ボンズ(通算762本塁打のMLB記録保持者)が好きで、ああいうバチコーン! というバッティングがボクもできて、ピッチャーもできたらいいなとずっと思っています」...
純度100%の原石。関東王者も脅かした剛球...

関東王者から日本一へ!不敗軍団の三刀流ハイ...
【2024注目の逸材】 まつもと・はじめ 松本 一 [東京/6年] 船橋フェニックス ※プレー動画➡こちら 【ポジション】投手、遊撃手 【主な打順】二番、三番 【投打】右投左打 【身長体重】153㎝56㎏ 【好きなプロ野球選手】松井稼頭央(元メッツほか/西武監督) ※2024年3月25日現在 関東最強のタレント軍 2024年に入って2冠目となるナガセケンコー杯を制して、松本一は毅然とこのように語った。 「うれしいです。ただ、チームは夏の日本一(全日本学童マクドナルド・トーナメント優勝)しか目指してないし、そこはぜんぜん変わらないです」 ナガセケンコー杯には、大田区のほか都内から58代表がトーナメントに参加。カバラホークス(足立区)との決勝は3月24日にあり、松本は先発して4回途中を無失点、打っては3回に右越えの先制2ランで7対2の勝利に大きく貢献した。 「通算本塁打数? ランニングはホームランと思っていないし、数えてないです。サク越えは去年7月から10本くらいだと思います」 2023年10月22日、新人戦の東京大会を制覇(板橋・城北野球場) 3月2日、京葉首都圏江戸川大会(都内59チーム参加)で優勝した際には、チームの強さについてこう話している。 「自分たちは同学年にはまだ負けたことがないのが強み。先に点を取られたりしても、必ずやり返せます」 そう、船橋フェニックスの新チームは目下のところ、不敗ロードを進んでいる。昨秋の新人戦は世田谷区大会に始まり、東京都大会、そして最上位の関東大会まですべて優勝した(2連覇)。 昨秋の新人戦都大会決勝では先発して5回1安打1失点。打っても三塁打など2安打1打点で逆転勝利に貢献 ※関連記事➡こちら 新6年生17人のサイズ感とハイパフォーマンスは、「関東」の枠を超えても随一かもしれない。数枚いる投手陣はいずれも本格派。木村剛監督は「誰がエースでもなく、どんぐりの背比べという状態は去年の秋から変わりません」と謙遜する中でも、明らかに勝負眼と度胸に長けているのが右腕の松本だ。 「経験を重ねてきて、今はいつでも緊張とかもせず、投げられてます」 自身の調子に状況や打者も鑑みて、先発なら確実にゲームメイク。救援でも快調にアウトを重ねて、試合の流れを引き寄せていく。...
関東王者から日本一へ!不敗軍団の三刀流ハイ...

最速110㎞超、岡山の未来モンスター。本気...
【2024注目の逸材】 すが・まひろ 菅 真紘 ※プレー動画➡こちら 【所属】津山ヤングマスターズ/岡山 【学年】6年 【ポジション】投手、中堅手 【主な打順】三番、四番 【投打】右投右打 【身長体重】166㎝63㎏ 【好きなプロ野球選手】山本由伸(ドジャース)、吉田正尚(レッドソックス) ※2024年3月10日現在 2023年の秋。関東方面の新人戦を中心に取材して回った中で、断トツに速いボールを投げていた5年生(新6年生)が中国地方にいた。岡山県第三の都市・津山市で活動する、津山ヤングマスターズの右腕・菅真紘だ。 「最速は110㎞ちょい。来年、6年生になったら卒業するまでに125㎞くらいを投げたいと思っています」 「投げ方は監督やコーチにも教えてもらいました。あとは小さいころから、お父さんとボールを投げてきました」 当時161㎝(現166㎝)の背丈も群を抜いていたが、単なるサイズとパワー頼みのタイプとは明らかに異なる。粗削りでいて危うい動きは見当たらず、身のこなしも軽い。全身を使った投球フォームには躍動感があり、中堅守備では捕殺も決めてみせた。 「ピッチャーも好きですけど、センターの守備も大好きです。外野同士で位置を教えたり、バックホームでアウトを取ると、うれしいのもあります」 中堅を守っているときには、ピンチも逆に見せ場なのだろう。揚々とスタンバイする様子も垣間見られた。小学生にありがちな“お山の大将”でもなく、登板時にはバックにエラーが出たりしても、いちいち制球に影響しない。 「ミスがあっても気持ちを切り替えて、次にアウトを取ればいい。そこは意識をしています」 試合では真剣勝負をしつつ、ベンチや仲間の声掛けに笑顔で応じることも 打席ではコースや状況に応じたスイングで、快音を連発。塁に出れば、果敢に走って次塁を陥れる。昨年に学校で計った50m走は8秒フラットだったという。 「将来はプロ野球選手になって、一流のピッチャーになりたいです」 チームの新6年生は11人。自他ともに認める仲の良さで、試合中は先を読んでのアドバイスや注意がよく飛び交う。戦況を問わず、どの顔も真剣そのもので、見守る保護者たちからもネガティブな声はまるで聞かれない。たとえ凡打でも一塁へ全力で駆ける菅の姿は、シンボリックでもあった。 家庭もチームも強制なし 「最近になって、中学で硬式のチームに入るというのを自分で宣言しました。のんびりしている性格なんですけど、チームでも小さい子のお世話をしたりとか、楽しそうに見えてきました。野球がより好きになってきたのかなと思います」 球春の到来を前に、菅の変化を敏に感じているのは母・貴子さんだ。165㎝の高身長で、中高とソフトテニス部で活躍。父・剛志さんは元球児で、津山ヤングマスターズでは背番号29でコーチを務めている。...
最速110㎞超、岡山の未来モンスター。本気...

打・走・捕・遊…万能ワンダーボーイ。秋の新...
【2024注目の逸材】 ひぐち・よしてる 樋口芳輝 ※プレー動画➡こちら 【所属】山野ガッツ/埼玉 【学年】6年 【ポジション】捕手、遊撃手 【主な打順】一番、二番 【投打】右投右打 【身長体重】150㎝43㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース) ※2024年3月7日現在 2022年末のポップアスリートカップ全国ファイナルトーナメントに初出場。学年20人規模の山野(さんや)ガッツでは例年、専任の指導者たちの下から有能な選手が巣立っている。昨年秋の新人戦で埼玉大会準優勝を遂げた新チームはとりわけ、個々のポテンシャルも際立つ。 なかでもピカイチなのが、樋口芳輝だ。指導者歴15年の瀬端哲也監督も賛辞を惜しまない。 「打つほうも守るほうも野球の頭も、小学生のレベルを超えている。今までみてきた中でも間違いなく、3本の指に入りますね」 昨年9月の埼玉新人戦の最終日。二番に入って準決勝と決勝で4打数3安打、二塁打2本と打棒が目を引いた 満振りのファウルだけでも、いかほどのバッターなのか察しがつく。新人戦の準決勝では、右越えの二塁打と左前打に特大の中飛。決勝では右翼線へタイムリー二塁打と、広角に打ちまくった。 「甘いボールはミスショットをしない。ほとんどが1球で仕留めますよ」と瀬端監督。本人も一番のセールスポイントは打撃で、「特に逆方向に強く打ち返せること」だと語る。「ボールをできるだけ長く見て、ボールの内側を叩くことを、平日の打撃練習から意識しています」 マスクを被れば、打球への鋭い反応や機敏で強い二塁送球が目に留まる。ショートバウンドの捕球やバウンドストップも、新人戦から安定していた。だが試合後、「キャッチャーは経験も浅いし、まだぜんぜん。ずっとショートをやってきたので」と平然と打ち明けた。 新人戦では急造捕手とは思えないスキルを披露した。右は瀬端監督 その後も主に扇の要を守りながらスキルアップに励み、この2024年から背番号2に。遊撃守備でも確かな基本動作やハンドリングが光るが、指揮官が「正捕手です」と断言するまでに成長してきた。 「オーバーユースにならないように、球数の関係でショートも守らせますけど、相手の盗塁の抑止力にもなる樋口のキャッチャーと肩は外せない」(瀬端監督) 名立たる強豪チームとも対戦しているが、序盤に二盗を阻んで以降は盗塁企図もされないケースが多いという。逆に自分が一塁走者となれば、警戒されてもスチールを決めてみせる。 遊撃を守れば、基本動作と軽快な身のこなしも光る 50m走のタイムは7秒台の半ば。「そこまで爆発的な足の速さではないけど、投手の癖とかも自分で見抜いてスタートできる」(瀬端監督)。1月の大交流大会(東京)では、過去3回の日本一と高い盗塁阻止率を誇る、多賀少年野球クラブ(滋賀)からも二盗を決めてみせた(動画参照)。 2年越しの夢と...
打・走・捕・遊…万能ワンダーボーイ。秋の新...

昨夏の全国準VチームのHR王。今年は二刀流...
【2024注目の逸材】 なんば・いち 難波 壱 ※プレー動画➡こちら 【所属】不動パイレーツ/東京 【学年】6年 【ポジション】投手、三塁手、中堅手 【主な打順】三番 【投打】右投左打 【身長体重】149㎝45㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース) ※2024年2月25日現在 120㎞を投げる小学生もそうそういないが、鮮やかにそれを打ち返せる小学生はもっと珍しいかもしれない。 昨年7月、5年生にして東京都大会の決勝(都知事杯)という大一番の最終回に、それをやってのけた難波壱は、激しくレアな秀逸の打者に違いない。1ストライクからの2球目を、左打席から右中間へ運んで三塁打としてみせた。 2023年都知事杯決勝、4回の第2打席には中越え2ランを放っていた 「気持ちで打ちました」 その打席はまた、この少年のパーソナリティを物語ってもいた。直前の5回裏、左翼を守っていた難波はピンチで打球を後逸し、4対5と試合をひっくり返される痛恨のタイムリーエラーをしてしまっていた。 ところが、それで消沈するどころか、直後の6回表に回ってきた第3打席で、初球からフルスイング(空振り)。そして前述のように、2球目を引っ張って三塁打に。 マウンドにいた1学年上の左腕・藤森一生(レッドサンズ)は、最速が当時120㎞。対する難波は約1カ月前の全日本学童都大会の決勝でも、この怪物級サウスポーから左前打を放っていた。 世代随一の左腕とも言えた1学年上の藤森(下写真左)から、右中間三塁打を放つ(2023年7月17日、上柚木公園野球場) 「とにかく、速いボールに合わせておけば、緩いボールも打てると思っています。外角の球だったらレフト、真ん中だったらセンター、内角だったら腰の回転で打つ感じです。芯でとらえれば、あとは(打球の角度が」上がればホームラン、低かったらライナーになる」 昨年は17本塁打を放ち、夏の全日本学童大会マクドナルド・トーナメントで準優勝したチームの年間本塁打王に。正確にカウントはしていないが、就学前から不動パイレーツで野球を始めて以来、通算で70本以上はホームランを打っているという。 これだけのバッターだから、地元の東京界隈ではマークも厳しい。体幹もひと回り大きくなって迎えた2024年は、四球で歩くケースが増えている。 昨夏の全国大会は全6試合、左翼でスタメン出場。打率.231、準々決勝ではあわやサク越えの中越え二塁打(写真下) 「もっと勝負してほしい? それはありますけど、ストライクを打つだけです」 そんな難波の支えは、学年チームの背番号29で、ヘッドコーチとして一緒に繰り上がってきた父・良剛さんの存在だろう。最近はこのように説かれているという。...
昨夏の全国準VチームのHR王。今年は二刀流...

スピード&堅守。躍動する三重のリトルスター
【2024注目の逸材】 ふかざわ・とうご 深澤橙吾 ※プレー動画➡こちら 【所属】度会BEAST/三重 【学年】6年 【ポジション】遊撃手 【主な打順】二番 【投打】右投右打 【身長体重】138㎝30㎏ 【好きなプロ野球選手】今宮健太(ソフトバンク) ※2024年2月20日現在 138㎝に30kgの小粒がむしろ、果てしのない可能性を訴えてくる。どれもこれもが絵になる“リトルスター”が、三重で躍動している。 5年生の秋の時点で、50m走は7秒79。ダイヤモンドを我がもの顔で疾走し、次塁を難なく陥れる。遊撃守備ではカバーする範囲も視野も広く、右打席からは左翼手の頭上へライナーを飛ばすし、選んで出ることも小技もできる。 インタビューを始めると、チームの仲間たちが寄ってきて口々に発した。 「むちゃくちゃ足が速い盗塁王です!」「4年生のときから、6年生の肩でも容赦なく盗塁してた!」「三盗も余裕っす!」「スピードスターやな!」…。 自ずとできた輪の中央で、白い歯がこぼれた深澤橙吾。2人兄妹の長男で、1年生から野球を始めた。 俊足に加えて、走塁スキルも際立つ。一塁に出ると何度けん制されようが、最終的には好スタートから二盗を決めてみせる 「お父さんは昔はサッカー選手で、ジイジ(祖父)が野球が好き。ボクも小さいころから野球が好きだったので、チームに入りました」 毎週水曜日は、祖父と打撃練習をしている。自宅敷地の大きな倉庫内で、現在は祖父が16mの距離から投じる球を1時間ほど打ち込んでいるという。 「月曜日はオフで、火曜日と木曜日はチームの練習、金曜日は一人で素振りとか。勉強も? はい、していますけど、好きではないです」 やはり、持って生まれた天性だけではない。俊敏な身のこなしもシャープな打撃も、磨かれてこその輝きなのだ。 サク越えはないが、ランニングホームランは10本程度。小さな体にパンチ力も秘める 「将来はプロ野球で活躍できる選手になりたいです。好きな選手は、ソフトバンクの今宮(健太)選手です」 球界屈指の名手、今宮は大分県の私学・明豊出身で、中・高と全国大会に出場。170㎝強の痩身に6番を背負い、3年夏の甲子園では154㎞を投じて話題をさらった。その今宮少年にも通じる閃光が、フィールド上の深澤にはある。 5年生でキャプテンに...