最終日まで勝ち進んだベスト4のうち、3チームまでが全国出場経験組だった。2019年全国準Vの茎崎ファイターズ(茨城)は、新5年生で挑んだレッドサンズ(東京)を3回コールドで一蹴。「千葉対決」となった反対ブロックの準決勝は、夏の全国3大会連続出中の豊上ジュニアーズが特別延長の末に敗退。攻守に手堅い海神スパローズが、初めてのファイナル進出を決めた。
■決勝
海 200001=3
茎 03152×=11
【海】別所、小野塚、小山田、柴崎-小山田、大水
【茎】中根、新岡-藤城
5回表二死一塁、海神・小山田の痛烈なライナーを茎崎の中堅手・佐藤遥主将が好捕(左下・小写真)して、ごらんの笑顔。この美技もあって同選手が大会MVPに
今や「千葉の顔」とも言える豊上を相手に、ロースコアの接戦を演じた末に勝利した海神。新6年生が13人いるものの、渡辺浩史監督によると野球キャリアは総じて浅いのだという。
「この子たちはチームに入ってきたのが遅かったので、実戦中心で経験値を増やしてきました。(準決勝の)特別延長も今年だけで3度目で、先に得点して守り切るという練習通りの勝ち方ができたと思います。ただ、力を使い果たしているので次(決勝)はどうなるか…」
指揮官の不安をよそに、海神打線がいきなり火を噴いた。1回表、先頭の別所駿一が痛烈な内野強襲安打で出ると、二番・小山田理も左前打で続き、バントで一死二、三塁。そして四番・大水佑真の左前タイムリーと、五番・阿部虎太朗のスクイズで2点を先取する。その裏の守りでは、二死一、三塁のピンチに1-5-4のけん制死も奪ってみせた。
海神は1回表、四番・大水の左前打で先制する
機先を制された茎崎だが、先発のエース左腕・中根裕貴が2回から立ち直るとともに反転攻勢へ。2回裏、渋澤律斗のテキサス安打などで一死満塁とすると、二ゴロでまず1点、なお二死二、三塁から新4年生・石塚匠が右中間にはじき返して3対2と逆転。さらに満塁と攻め立てたが、救援した海神の小野塚岳を前に加点はならず。
2回裏、二死二、三塁から一番・石塚の右前打で茎崎が3対2と逆転
「ウチの秋の関東準優勝はオマケ、たまたまですよ。相手がミスをしてくれての勝ちもありましたし。新6年生6人の若いチームなので、練習でやっていることを試合中は言葉で伝えながら、どこまでできるかを確認してきました」
茎崎は吉田祐司監督が今大会のテーマをそう語ったように、失敗やミスもありながら果敢にトライする姿勢が際立った。とりわけ多かったのが、足技とバントだ。海神の大型捕手・小山田の強肩にも怯むことなく、走者はどんどん次塁を狙う。3回には藤塚凌大のヒットから好機を広げて、野口翔太郎のスクイズ(記録は安打)で4対2に。直後に盗塁死とけん制死があったが、4回には藤塚が2盗塁など終わってみれば毎回の盗塁企図で成功が8(失敗1)。相手バッテリーのミスを突いた進塁が3、4回には2ランスクイズを決めるなど、犠牲バントは4つすべてを成功させた。さらに4回には野口が左へ、5回には中根が右へそれぞれエンタイトルの適時二塁打でダメ押し。守っては先発の中根が丁寧に打たせて取り、5回には主将の佐藤遥が痛烈なセンター返しのライナーに頭から飛び込んで好捕し、流れを相手に渡さなかった。
3回にスクイズバントを決めた茎崎の野口が、4回には左越え適時二塁打
全3打席出塁で2盗塁に3得点。茎崎は九番・新岡が見事なつなぎ役に
2対11と大差をつけられた海神は、最後に一矢報いる。茎崎の2番手・新岡を攻め立て、一死満塁から柴崎の内野安打で1点。さらに好機は続いたが、反撃もそこまで。2回から攻守で圧倒した茎崎が第4回大会以来、5年ぶり2度目の優勝を飾った。
「優勝は何でもうれしいものです。『6年生が少ない』というのは指導者の言い訳だと僕は思っています。以前に6年生4人で全国出場してますし。まだまだチーム力を上げていきます」
殊勝に語ったV監督の長男で茎崎OBの吉田慶剛捕手(高3)は、専大松戸(千葉)で四番を張っており、今月18日開幕のセンバツ甲子園に出場する。