豊上ジュニアーズと言えば、今や千葉県や関東の枠も超えた全国区の強豪だ。夏の全日本学童大会は3大会連続出場中で銅メダルが2個。今年も目指すは日本一だが、従来と様相がやや異なる。昨年までの髙野範哉監督は3年生チームを指揮(インタビューを後日UP予定)。前年度の5年生チームから繰り上がった原口守監督の下、大目標へまずは最初の予選をクリアしたチームの横顔に迫った。
※市決勝戦の内容は→こちら
紅一点の杉浦茜音も五番・一塁で頼れる戦力。6年生12人で全国の頂へ進軍する
近年の豊上ジュニアーズは、学年ごとにチーム編成ができるほどの大所帯となってきている。今年のトップチーム(A)は6年生12人だけで、5年生以下は帯同していない。原口監督は12人を前年度も率いており、豊上のBチームとして大会にも参加してきたとあって、目に見えない貯金がある。
昨秋は関東4強
昨年秋の新人戦は千葉大会を制して関東4強まで進出した。これが自信にもなったが、それ以上に悔しさが募ったという。関東大会では優勝することになる東京の船橋フェニックスと準決勝で対戦し、3対6で敗れている。
「あの負けを子供たちも僕自身も忘れていませんし、悔しさを忘れない、ということを合言葉にして、もう一度チーム一丸となって底上げしてきているような感じです」(原口監督)
秋の県王者とはいえ、今夏の全国大会の予選に優遇措置はない。柏市大会に続いて千葉大会で優勝して初めて、全国の扉が開かれる。まずは柏市22チームの頂点に立ち、5月末からの県大会出場を決めた時点で、指揮官は手ごたえや今後の見通しについて「五分五分ですね」と繰り返した。
春の柏市大会全4試合に先発した左腕・金田一毅(上)は打たせて取る。丸山凌生(下)はダイナミックなフォームからの速球が持ち味。ともに制球力に長ける
昨年は強打で鳴るチームだった。全国大会でも3試合連続の2ケタ安打で8強入り。今年は趣が大きく異なるという。「バッテリーを中心に粘り強く守るというのが、チームの強みかなと思っています。そこを活かしながら、ココというときの打の1本と集中力ですね」(同監督)。
市の大会では4試合のうち3試合が2ケタ得点の大勝。決勝も終わってみれば2ケタ安打の10得点で4回コールドと、圧勝だった。それでいて、慢心の欠片も見えないのは志の高さゆえだろう。
決勝も守っては無失策、2イニングずつ投げた2投手はそろって無四球だった。大会を通じて先発を任されてきた左腕・金田一毅は立ち上がりで一死三塁のピンチを招くも、後続を打ち取って無失点。救援した丸山凌生は3安打で1点を失ったが、内野陣が落ち着いた転送で2失点目を食い止めてみせた。
青柳翔大(上)は右へ左へ長打を放つ。前野魁(下)はパンチ力に加え、三塁守備でも魅せる
信頼と絆の深さ
「今年はスーパーな子はいませんけど、全員が中の上という感じですかね」
こう評する指揮官は昨秋の関東大会以降、できるだけメンバーの12人全員を使いながら戦ってきたという。この柏市大会では、主将で正捕手の髙根史葉の故障(軽度)など予期せぬアクシデントもあったが、代わりにマスクを被った滑川彩太が穴を埋めてお釣りがくるほどの安定したプレーを披露した。
「僕は本当はレフトで、キャッチャーの経験はちょっとだけですけど、思い切りやりたいタイプなので、緊張とかしないでやれました」
そんな滑川が打線では四番。決勝の3打席は今年のチームを象徴するような内容だった。まずは初回にセンターの頭上を越える先制の2点三塁打。そしてリードを広げる中で迎えた以降の2打席も、ボール球を強引に打つような私欲に走らず四球を選んだ。「甘い球は捕らえて、ボール球はいかない。次につなぐ、チームのために、という感じで打席に入っています」。
身体能力も光る三番・遊撃の坂本康太はマウンドにも立つ。攻守のカギを握る一人だ
一方、ブルペン捕手など、献身的に動いていた髙根主将も欠場は良薬にもなったようだ。「誰にも負けたくないし、負けてないと思いますけど、試合に出られない人の気持ちも分かりましたし、ベンチにいる間は仲間をサポートすることだけを考えていました。チームは全員野球で1点でも多く取れるように練習しているので、これからの大会でも成果を出していきたいと思います」。
投手は計算が立つのが4枚。攻めては今や豊上の代名詞とも言える、無死または一死三塁からのゴロ・ゴーという戦術も磨いている。市の大会では失敗もあり、成功もあり。原口監督は精度にまだまだ満足していない様子だ。
「県大会では相手も当然、対策をしてくるでしょうし、その中でどう確率を上げていくか。もちろん、戦術はゴロ・ゴーだけではありませんし、今までは練習という意味も含めてサインを出していた面もありましたけど、県大会からは違います」
全国最終予選を前に「自分もプレッシャーがないと言ったらウソになる」と原口守監督。選手12人との前年度からの蓄積と堅固な信頼関係が拠り所だろう
一律の「中の上」の12人が、「上」への階段を上がっている。その足音は指揮官にも響いているのだろうか。そこは定かでないが、12人の思いは確実に届いているようだった。市の大会4連覇の表彰式に続く記念撮影時、遠目に立って集団に加わろうとしない指揮官を、12人は声をやさしく合わせて招き入れた。
「ハ~ラグチさん、ハ~ラグチさん!」
(大久保克哉)