埼玉県下の36支部代表によるトーナメント戦。勝ち上がってきた4強のうち、上尾少年野球だけは地域選抜チームで、あとは単独チームだった。ファイナル進出を決めた2チームは、それぞれ持ち前の打力をいかんなく発揮。また敗れた単独チームにも、特筆するべきものがあった。
※記録は編集部
(写真&文=大久保克哉)
⇧3位/宮原ドラゴンズ(大宮支部)
⇩3位/上尾少年野球(上尾支部)
■準決勝1
宮 原 00102=3
山 野 5311 X=10
【宮】染川、澤村、小林-高橋
【山】高松、中井、高松-樋口
本塁打/遠山(山)
1回裏、山野は七番・遠山の2ラン(写真)など4長短打で一気に5得点
宮原の一番・髙橋漣の中前打で始まった一戦は、山野の5-2-3併殺プレーで終わった。
猛暑日が予報されていた中、序盤はスコールのような雨で一時中断。最終スコアは大きく差がついたものの、活発な打ち合いが展開されて90分があっという間だった。
山野の四番・増田(上)と五番・高松(下)は2打席連続タイムリー
1回表、二死二、三塁のピンチを無失点で切り抜けた山野がその裏、4本の長短打で一気に5点を奪った。二番・樋口芳輝のエンタイトル二塁打を皮切りに、四番・増田慎太朗、五番・高松咲太朗が連続タイムリー。そして遠山景太が左翼70mの特設フェンスの向こうへ2ランアーチを放った。増田と高松は2回にも連続タイムリーで8対0と、ワンサイドになりかけた。
3回表、宮原は澤村の右越え三塁打から1点を返す
しかし、3回表、宮原が二番・澤村永真の右越え三塁打と三番・染川僚大の中前打で1点を返す。1対10で迎えた5回表には、一番・高橋からの3連打と五番・岩﨑僚之介の右前打で2点を奪い、なお一死満塁としたが併殺で反撃もそれまで。5回8点差のコールドで試合は決着した。
宮原の三番・染川は5回表に2打席連続のタイムリー(上)、五番・岩﨑(下)も右前に弾き返して1点
山野は毎回を含む計12安打10得点、宮原も8安打を放ったが、山野は2併殺など要所での好守も光った。
■準決勝2
西埼玉 101022=6
上 尾 000010=1
【西】金子、歩浜、杉山-村井
【上】大内、植草-御武内
西埼玉は1回表、引間(上)と成田(中央)の連続二塁打で先制。3回には九番・加藤の中越え二塁打(下)から加点
4年前の王者・西埼玉が、地域選抜軍を相手に底知れぬポテンシャルを示した。
1回表、一番・引間聖也と二番・成田煌の連続二塁打であっという間に先制すると、先発した左腕・金子塁主将が圧巻の投球を披露していく。外野手の落球によってパーフェクトとはいかなかったが、4回まで投げて許した走者はその一人だけだった。
上尾選抜も守備では光るものがあった。2回には遊撃手・秋山稜太の好判断から併殺でピンチを脱すると、3回、さらに4回にも6-4-3の併殺を奪う。ただし、それらはまた、相手打者の強くて速い打球も呼び水となっていた。
学童野球といえども、1試合で3つも併殺を重ねれば勝利は遠のくもの。しかしながら、西埼玉の打線は「不吉」も寄せつけないほどパワフルで、ベンチの頭も柔軟だった。
西埼玉の四番・白垣(上)と七番・村井(下)は3打数3安打。打球の鋭さも際立った
3回表、併殺で二死無走者となってから三番・金子と四番・白垣大耀の連打で2対0とリードを広げると、5回からは犠打で好機を広げる攻撃へシフト。これがハマり、三・四番コンビの連続タイムリーや七番・村井碧波の適時二塁打などでラスト2回で5点リードに。
投げては5回から登板した歩浜鈴乃助と杉山拓海で上尾選抜の反撃を1点に抑え、ファイナル進出を決めた。
上尾は好守を見せていた遊撃手の秋山が5回にチーム初安打(上)。6回には石川主将が執念のテキサス安打(下)
―Pickup Team―
とにかく明るいミヤハラ
みやはら宮原ドラゴンズ
[大宮支部]
試合前のベンチ前ノックを、これほど楽しそうにやっているチームにはそうそうお目にかかれない。
カメラのレンズに気付いたノッカー、岡安弘司監督が「おっ、良いところ見せられるか!?」と、軟式特有の高く跳ねるゴロを打ち始める。すると選手たちは、懸命に前進してのジャンプで跳ね上がる白球にグラブで蓋をしていく。成功するたびに、場が大きくわいた。
続いてノッカーが地を這うようなゴロを打つと、選手たちは見せ場とばかりに機敏な身のこなしで捌いていく。コーチ陣も含め、白い歯ものぞくが決してふざけているわけではない。どの動作も基本に忠実で、ふだんの育成指導の跡もうかがえた。
小林煌主将も好プレーに続き、ご覧のスマイル
でもとにかく、明るい! その旗印とも言える指揮官がこう語った。
「ボクのこのキャラが子どもたちの緊張感を少しでも和らげてくれたらいいな、と。県大会の準決勝なのでボク自身も緊張しているところあったけど、やっぱり楽しく野球をやりたいですよね」
選手19人のうち5年生が9人で3年生が5人。準決勝は19人オール5年生の相手に5回コールドで敗れたものの、終始、重苦しいムードはなかった。空元気ではなく、ベンチの大人は前向きな言葉を発し続け、それがコールド負け寸前での連打など、粘りにもつながっていたように思われる。
「相手チームがあって野球ができるので敬意も必要だと思うし、真剣勝負の中で子どもたちが楽しくできれば、というのがわれわれ指導陣の想いです」
そう語る岡安監督はチームを率いて2年目。6年生にはオール大宮でも活躍した長男がいて、この試合に九番・三塁で出場した長女・紗奈が4年生。さらにその下、弟か妹が夫人のお腹にいるという。
全身を使って投げ込む背番号1、澤村永真の投球フォームも将来性を感じさせた
夏の全日本学童予選は出場しない(市選抜に選ばれた選手のみ出場)。だが、単独チームで挑む秋の埼玉大会は「とにかく明るい宮原」が、席捲する時代が訪れるかもしれない。