【関東学童茨城予選/決勝評】東海が連続コールド、10年ぶり王座返り咲き

2023.10.26リポート
【関東学童茨城予選/決勝評】東海が連続コールド、10年ぶり王座返り咲き

 圧巻の王座奪還! ノーブルホームカップ第25回関東学童軟式野球秋季大会の茨城予選会は10月21日、ノーブルホームスタジアム水戸で準決勝と決勝を行い閉幕。オール東海ジュニアが2試合連続のコールド勝ちで、2012年以来3回目の優勝を果たした。2試合で25安打28得点、守っては1失策で左腕2枚が好投。11月25日・26日に地元で迎える関東大会も、東海が頂点に輝く勢いだ。

※記録は編集部

(写真&文=大久保克哉)

⇧優勝(10年ぶり3回目)/オール東海ジュニア(那珂支部)
準優勝/茎崎ファイターズ(土浦支部)

※同日の準決勝評は➡こちら

 

 

■決勝

東 海 30334=13

茎 崎 00011=2

【東】湊、黒川-津田

【茎】折原、石塚-藤城

本塁打/大木(東)

関東大会でも舞台に

 最終日の舞台となったノーブルホームスタジアム水戸(水戸市民球場)は、両翼100mの中堅122mで内野は黒土、外野は芝。隣接する水戸市総合運動公園軟式球場はかつて、全日本学童大会が19年間開催されたことでも知られる。

 来たる11月末の関東大会も、ノーブルホームスタジアム水戸がメイン会場になるという。今回と同じく70mの特設フェンスが設けられ、スピードガン表示もされる予定だ。

 県準決勝2試合と決勝ではサク越え弾が1本、最速は湊陽翔(オール東海ジュニア)の92㎞だった。5年生の秋としては妥当な数字だろう。

関東大会でもメイン会場となるノーブルホームスタジアム水戸は、高校野球や社会人野球で使用されている。スピードガン表示もあり、今大会最終日は東海のエース・湊(下)が92㎞をマーク

全国区同士の決戦

 オール東海ジュニアは2012年と14年に全日本学童大会に出場。当時の太田健一監督が、今年度からチームの代表職に専念し、2度の全国大会でもコーチを務めていた同級生の星野昌人監督が新指揮官に。

 今夏の全国予選は県準優勝の上辺見ファイターズに1回戦で敗退も、新チームは県決勝まで進出。準決勝は先発全員安打に無失策の快勝だったが、茎崎ファイターズには2018年の決勝で敗れている。

「ここ何年か、ずっと茎崎さんに負けていたので、何とか勝ちたいというのが子どもたちにもありました。その気持ちの強さが、きょうはウチのほうがちょっと上だったのかなと思います」(星野監督)

茎崎は名将・吉田監督が不在も、名参謀・佐々木コーチ(写真)の下、準決勝は多彩な攻撃でコールド勝ち

 対する茎崎ファイターズは、今夏の全日本学童に2年ぶり10回目の出場(2回戦敗退)。新チームの始動は8月下旬と、他チームより確実に遅かったが「2、3人は全国大会でプレーしていましたし、時間のことは言い訳にならないですね」と佐々木亘コーチ。

 全国出場にも貢献した左腕・佐藤映斗が、ケガで今大会はベースコーチに専念。またこの最終日は吉田祐司監督が所要で不在のため、佐々木コーチが監督代行を務めた。準決勝では足技と小技も絡めてコールド勝ちと、世代交代しても変わらぬ試合巧者ぶりだったが、決勝はまさかの展開、そして決着となった。

驚きの4年生が台頭

 1回表。プレーボール直後の初球を左中間に弾き返し、いきなり二塁打を放ったのは東海の4年生・横須賀大叶だ。「監督から『自信を持っていけ!』と言われていたので、初球からいい球が来たらいくつもりでした」

東海の4年生・横須賀が初球を左中間二塁打(上)。この先頭打者ヒットで試合が始まった

 147㎝40㎏、6年生にも見えるような横須賀の先制パンチが、茎崎の歯車を狂わせていったのかもしれない。悪送球やお手玉など、相手のらしくないミスから先制した東海はなお、二死一、三塁から六番・湊が左翼線へ二塁打を放ってリードを3点に。

茎崎の先発・折原は、バックの思わぬ乱れにも動じずに粘投した

 以降は小康状態となりかけたが3回表に、茎崎の守備が再び乱れてしまう。右サイドハンドの折原颯太は粘り強く投げて内野安打1本に抑えるも、連続の適時エラーなどでスコアは0対6に。それでも左翼手・佐藤大翔(4年)が、ライナーを背走から飛び込んで捕球する美技で、それ以上の失点を免れた。

「みんな声もなくなってたけど、自分がしっかり声出して、引っ張っていきたいと思っていました」(佐藤大)

 その思いが茎崎ナインに通じたか、4回裏には全国経験者の石塚匠(4年)が中前へクリーンヒットし、5回裏には六番・藤田陽翔が右へ二塁打。それぞれ1点につなげたが、決勝ではそれ以上の快音は聞かれなかった。

茎崎は4回裏、一死三塁から藤城主将(上)の遊ゴロで1点。5回裏は藤田の右二塁打(下)と敵失で1点

 東海は準決勝に続く先発の左腕・湊が大量点に守られながら、緩急を用いたストライク先行の投球で凡打の山を築いていく。4回二死から救援した左腕・黒川歩輝主将も、腕がよく振れて危なげのない投球だった。

 攻め手も最後まで緩めず、4回表には三番・大木颯真がサク越え2ランなどで3点、5回表には四番・津田恵太朗の2点二塁打や重盗も決めるなど4安打4得点。計10安打13得点で、5回コールド勝ちを収めた。

東海の三番・大木が4回に2ラン(上)。「芯をめっちゃ食ったので、(70mフェンスを)瞬間で超えると思いました」。5回には四番・津田が右へ2点二塁打(下)

 茨城県や今大会に限らず、ダブルヘッダーの2試合目では、相手投手の球数を稼ぐ戦法がよく見られるが、積極打法で10年ぶりに県王者に返り咲いた東海の星野監督は言った。

「(相手投手の)球数を気にしてあれこれするより、初球から打てる球を打つのが学童野球かなと思っています」

コーチから指揮官に転じて1年目の秋に県王者までチームを導いた東海・星野監督。2014年以来の全国出場も「当然、子どもたちもそこが目標です」

 連覇を逃した茎崎は、全国経験者の藤城主将が巻き返しを誓った。

「ミスはつきものですけど、今日の4つのエラーを1つに減らせるように。チャンスでバットも振れてなかったので、練習試合を積んで自信を持てるように。来年夏の全国制覇が自分たちの目標です」

〇オール東海ジュニア・星野昌人監督「ウチは守りを中心にするチーム。まさかこんなに得点できるとは。序盤に取れたのが大きかったと思います。投手もコントロールが良かったし、打撃も普段なかなか打てない子にヒットが出たり、いつも以上の力が出ましたね」

●茎崎ファイターズ・佐々木亘監督代行「序盤でミスが重なって重い感じになってしまいましたね。打線も粘れず、淡白に…狙い球は絞っていたんですけど、緩い球についつい手が出てしまったり。この大会を通じて二番手、三番手、四番手の投手が経験を積めたのは収穫。投手陣を再整備して出直します」

 

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「オール5」型の主将

くろかわ・あゆき

黒川歩輝

[東海5年/中堅手兼投手]

  プレーでもチームを引っ張る主将。強豪・茎崎を相手にコールド勝ちは予想できなかったというが、「みんなが一丸となって盛り上がれたので優勝できたと思います」とうれしそうに話した。

 左投左打。通知表なら「オール5」といった万能プレーヤーだ。準決勝と決勝で7打数4安打。確実に一本足で立ちながらボールを呼び込み、短く持ったバットを鋭く振り抜いて右へ左へ打ちまくった。

「センターに打てるのが自分の良いところで、いつもそれを意識しています」

 やや小柄でもバンチと脚力も抜けている。準決勝では右中間への三塁打に、右へエンタイトル二塁打も。決勝は4回途中からマウンドに立ち、失策絡みで1失点(自責点0)も、落ち着いて後続を断った。

「投げるのが一番好きです」

 最速は91㎞。スムーズなテイクバックなどは、ドラフト候補・前田悠伍(大阪桐蔭高)を参考に。父の助言も受けて身についたフォームは、メリハリが効いていて腕がよく振れている。

「関東大会で優勝、来年は夏の全国大会優勝が目標です」

 ピカイチのエース・湊陽翔との左腕コンビで、2024年の主役に躍り出るかもしれない。

 

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ある意味、特別な1日に

いしつか・たくみ

石塚 匠

[茎崎4年/遊撃手兼投手]

 一番・遊撃で今夏の全国出場にも貢献した“スーパー4年生”が、新チームでは見えない壁にぶつかっているようだ。

 決勝の3回には、本人もベンチも「経験ない」というイニング2失策。白球に嫌われたかのように、ゴロがグラブに収まらなかった。1本はセンターに抜けようかというヒット性の当たりだったが、いつもの石塚匠なら逆に“見せ場”で、試合の流れも引き寄せたかもしれない。

 だが、そのまま意気消沈するようでは、茎崎のレギュラーは務まらない。4回表一死から救援したマウンドも苦しいものとなったが、最後まで投げ抜いた。

「何点差つけられても、絶対に攻撃で逆転してやると思っていました」

 4回裏、きれいにセンター前へ弾き返してチーム初安打。すかさず二盗、三盗を決めてから内野ゴロで生還した。

「打つほうは最近、あまり良いのが出てなかったんですけど、今日の1本をイメージして次からもいきたいと思います」

 やや前足重心で始動し、タイミングをとりながら軸足に重心を移してトップへ。コーチや父の助言も受けながら、新たな打撃フォームにトライしているという。

「全国では悔しい負け方をしたので、今度は優勝したいです」

 ある意味、特別な1日。この経験も肥しとしながら、“スーパー4年生”はさらにスケールアップしていくことだろう。

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