5年生以下の新チームの試金石。ノーブルホームカップ第25回関東学童軟式野球秋季大会の千葉予選会は10月8日、玉前野球場で決勝を行い閉幕。習志野台ワンパクズ(船橋市)が、大会3連覇中の豊上ジュニアーズ(柏市)を17対3で破り、初優勝した。夏の全国3位の実績もある習志野台は、先発全員安打に3本塁打の猛打で大勝。11月25・26日に茨城県開催の関東大会も優勝を目指すという。
※記録は編集部
(写真&文=大久保克哉)
⇧初優勝/習志野台ワンパクズ(船橋市)
⇩準優勝/豊上ジュニアーズ(柏市)
■決勝
習志野台 07208=17
豊 上 20100=3
【習】村越、吉野-池邉
【豊】加藤、桐原、早川、遠藤-岡田
本塁打/池邉(習)、村越(習)、佐藤遼(習)
1回表、鋭い打球に飛びついて一死を奪った豊上の二塁手・坪倉
近年の「千葉の顔」といえば、豊上ジュニアーズだ。2016年に全日本学童大会に初出場すると、19年からは3年連続出場ですべて8強以上へ進出。秋の新人戦も、2020年から千葉の天下を獲り続けてきた(21年はコロナ禍で中止)。今大会も決勝まで順調に駒を進め、V4に王手をかけていた。
一方の習志野台ワンパクズは、全国デビューは2001年と、豊上より早くからに全国区に。2014年の3度目の全日本学童大会は3位へ躍進。バットを短く持った打者たちの、つるべ打ちが印象的だった。
習志野台の岡田監督は、全国3位の2014年当時はコーチ。必要に応じて打ち方と投げ方の指導も細やかにするという
当時の野田昌克監督は2020年度限りで総監督へ。コーチから新指揮官となった岡田徹監督は、21年度のポップアスリートカップで全国優勝を果たしてみせた。そしてこの秋は、チームを初の県決勝まで導いてきた。
新旧の全国区対決
いわば、新旧の全国区対決となった県決勝は、70mの特設フェンスなし。左翼93m右翼86mの球場規格のまま、外野の打球もフリーで行われた。
先にペースを奪ったのは豊上だった。1回表、二塁手・坪倉凛之丞の好守にも助けられた先発右腕・加藤朝陽主将は、二死満塁のピンチで三振を奪う粘りの投球。
するとその裏、一番・岡田悠充の目の覚めるようなレフト線三塁打から、二番・桐原慶のスクイズであっさりと先取点を奪う。さらに四番・加藤主将のテキサス安打に、五番・中尾栄道(4年)の中越え三塁打でリードを2点に。いかにも試合巧者らしい先制攻撃だった。
豊上は1回裏、先頭・岡田の三塁打(上)と坪倉のスクイズ(中央)で先制。さらに4年生の五番・中尾も適時三塁打(下)
2回表も、一死一、二塁のピンチで右翼手・桐原が前方の飛球をスライディングキャッチなど、豊上に風が吹いているようだった。しかし、習志野台の二番のバットが風向きを一変させる。
池邉周吾が左中間を破る逆転3ラン。すると、この一撃が合図であったかのように、習志野台打線が一気につながった。三番・佐藤大心主将から五番・吉野結仁までの3連続三塁打で5対3に。
2回表、習志野台の二番・池邉が逆転3ラン。「この大会は初戦とかぜんぜん打てなかったので、関東では1回戦からホームランも打ちたいです」
ここから投手交代を繰り返していくことになる豊上だが、どの投手もボール球が先行し、甘くいった球を痛打されるという苦しいマウンドが続いた。
「きょうはウチの投手陣が、ちょっとボール球が多かったですね。ストライク先行で緩いボールも使ってという、本来の投球ができませんでした。でもそれ以上に、ワンパクズの打線がすごかった。これに尽きると思います」
豊上の剱持正美監督を、そこまで脱帽させた習志野台。池邉の逆転3ランの呼び水となったのは、八番・山脇壮陽と九番・佐藤攻心(3年)の連続四球だった。またこの下位コンビが、5対3とリードを広げて迎えたイニング(2回表)2度目の打席では連続タイムリーと、渋く働いた。
「打撃はたまたまというところですけど、池邉がよくホームランを打ってくれたのと、その前の八番、九番が一生懸命に塁に出てくれたのが大きかったと思います」(習志野台・岡田監督)
2回表、習志野台は4連続長打となる吉野の適時三塁打(上)で5対3。バットを短く持った八番・山脇(中央)と九番の3年生・佐藤攻(下)も適時打など大量7得点
結局、2回表に打者13人で7得点した習志野台が、以降はワンサイドで試合を進めた。3回表にスクイズバントを決めた四番・佐藤遼河が、5回には左越えのダメ押し2ラン。「ボクは守備(中堅手)とバントも好きなんです。打つのも好きですけど、一番は点を取って勝つのが好きです」(佐藤遼)
習志野台の先発・村越は2回から4回まで1安打投球。「後ろのみんなが守ってくれるので、ストライクを入れて打たせて取ることができました」
2打数無安打(1四球)と1人出遅れていた七番・梅津瑛も、レフト前へタイムリーを放って先発9人全員安打に。「タイミングを間違えて、少し崩されちゃったんですけど、ちゃんとバットの芯で打てて良かったです」(梅津)
一番・村越も左越え3ランなど、5回表も打者12人で8得点した習志野台が、終わってみれば計17安打17得点。投げては先発の村越が4回3失点とゲームをつくり、5回裏は吉野が無失点救援で締めた。また、ポジショニングや中継プレーを含む外野守備においても、習志野台に一日の長があった。
習志野台は5回表も四番・佐藤が2ラン(上)など8得点の超ビッグイニングに。七番・梅津も左適時打(下)で、先発全員安打に
敗れた豊上は逆転された2回以降、ヒットは一番・岡田の2本のみ。あまりの大量失点が重く響いたか、本来の打撃が見られなかった。「チームの目標は来年の全国出場と全国制覇。そこに向かってまたがんばります」(加藤主将)
豊上は2回から打線が沈黙。先発・加藤主将(下)は2回途中降板も、整ったフォームが目を引いた。「ストライクがあまり入らなかったことと、中継プレーが乱れたところが課題です」
〇習志野台ワンパクズ・岡田徹監督「下位打線が見てつないで、上位打線はストライクを積極的に打つというのはいつも通りでした。ここ何年かは豊上さん一強で、千葉県をずっと引っ張ってこられてましたので、何とか食らいつこうという思いでやってきました。子どもたちが『関東も優勝したい!』と言っていますし、千葉の代表として自信を持って臨みたいと思います」
●豊上ジュニアーズ・剱持正美監督「ワンパクズの試合はきのう(準決勝)も見させてもらったんですけど、打線が予想以上のすごさでした。相手投手のコントロールが良かったので、狙い球を絞っていく形に途中から切り替えたんですけど…打力の差をまざまざとみせつけられてしまいました」
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背番号10のムードメーカー
さとう・たいしん佐藤大心
[習志野台5年/三塁手]
「開会式を見てましたけど、出場チームの中でウチのキャプテンが一番小さかった。でも、元気もあって良い選手です」
岡田徹監督からそう評されていた背番号10。佐藤大心主将は、試合前の練習から大きな声とハツラツとした動きでナインを鼓舞する姿が際立っていた。
「きょうは朝からみんなでランニングしたりして、体がキレていたと思います。それとアップのときから声を出していたので緊張もほぐれて、打ってまた盛り上がれたので優勝できたと思います」
143㎝43㎏の体を目一杯に使い、左打席から放つ打球は強烈だ。2回には右翼線へ三塁打。続く3回の大飛球は右翼手にキャッチされたものの、70mの特設フェンスがあれば確実に超えていたはず。
「センターオーバーが理想の打撃です」
1年生から数えると、本塁打は40本近く。九番を打つ3年生の弟・攻心と、父との3人で平日は自主練習に励んでいるという。
「関東大会でもみんなで盛り上がって、優勝します!」
愛嬌のある笑顔も印象的な、頼れるムードメーカーだ。
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「完敗」をバネにして!
おかだ・ゆうま岡田悠充
[豊上5年/捕手]
右打席から長打を連発する、背番号22の大柄な捕手とくれば、阪神や西武で活躍した往年のスター、田淵幸一氏(現評論家)を想起するのは50代から上の世代か。
豊上の背番号22の正捕手、岡田悠充が同氏に重なる、なとど評するのはいかにも時期尚早に過ぎるか。ともあれ、大一番で豊かな将来性を示したことは間違いない。
「レフト方向の長打が自分の持ち味です」
第1打席でレフト線を痛烈なライナーで破る三塁打。続く3回にはレフトオーバーの三塁打。そして最後の第3打席は、逆方向へきれいに流し打っての3打数3安打としたが、一塁ベース上でも表情は硬いままだった。
「完敗でしたね」
試合後は続く言葉がなかなか出てこなかった。3対17というスコアに、捕手としてショックを受けないはずがない。
チームの大目標は、来年夏の全国大会出場と日本一。4年連続の秋の関東大会出場は逃したが、やり返すチャンスはまだ残っている。
「最低でも1試合で2安打して、盗塁も刺せるキャッチャーになりたいです」
半世紀前の『タブチくん』は知らないが、阪神の現四番・大山悠輔が好きだという。