【2024注目の逸材】
やまだ・たくと山田拓澄
※プレー動画➡こちら
【所属】大阪・新家スターズ
【学年】新6年(現5年)
【ポジション】中堅手兼投手
【主な打順】一番
【投打】左投左打
【身長体重】153㎝47㎏
【好きなプロ野球選手】吉田正尚(レッドソックス)、山本由伸(ドジャース)
※2024年1月8日現在
2024年度の「主役候補の筆頭」と言っていいだろう。山田拓澄が、新年を迎えて早くもその株をまた上げている。
3月に卒団する現6年生たちと挑んだ堺市長杯の決勝(1月7日)で、オリックスジュニアでもプレーした1学年上の本格派右腕からランニングホームラン。試合も4対0で制し、参加105チームの頂点に輝いている。
「打撃・足・肩の3つがそろっているし、どこまで伸びるか、楽しみですよね。ウチからオリックスジュニアに入った『宮本(一希=現6年)より上やないか!?』とも言われ始めてます」(千代松剛史監督)
2023年8月6日、全日本学童1回戦(対石川・館野学童野球クラブ)。5年生の山田は全国初打席で右へエンタイトル二塁打を放った
新6年生の世代で、山田ほど全国舞台を知る者はほかにいない。「小学生の甲子園」こと夏の全日本学童大会は、一昨年の4年時も背番号27でベンチ入り。3位に輝いたチームで出番はなかったものの、5年時の昨夏は六番・中堅で6試合フル出場。1回戦で3打数3安打の二塁打2本と、初優勝することになるチームを持ち前の打棒で波に乗せた(個人成績詳細は表参照)。
「夢に思っていた全国制覇だったので、達成できてうれしかったです」
東京・レッドサンズとの準決勝では、2回にライトへサク越えソロ。2年前の準々決勝では2つ上の兄・航大(和歌山打田タイガース)が先制ソロを放っており、山田兄弟は至難の夏の全国舞台で一発を放ったことになる。
2022年夏の全日本学童では2つ上の兄・航大が準々決勝で先制本塁打を放っている(写真は3回戦)
「(兄とは)今は一緒に練習していないけど、ケンカはよくします」
2人兄弟の弟はそう語る一方で、「新チームでは背番号0で、センターを守って一番を打ちたい」と意欲を燃やす。新家スターズには、主将とは別に攻守の大黒柱が「0」を背負って一番を打つという伝統があり、実は2年前にその大役を全うした中堅手が、山田の兄だった。
「ライナーの速い打球を打てるのが自分の良いところで、全国のホームランで自信を持ちました。でも、どんなピッチャーも打てたわけではないので、もっと練習が必要だと思っています」
去る12月のポップアスリートカップ全国ファイナルも六番・中堅で初優勝に貢献
全国大会でも勝ち進むにつれて、対峙する投手のレベルも高くなる。それも肌身で感じた山田に慢心はない。最上級生となる今年は、内外からのプレッシャーが増すことも覚悟しているという。
「ちゃんとできるかな、という不安も少しありますけど、外の目はあまり気にしない。自分たち(新6年)もまた全国優勝して、最高の夏にしたいです」
和歌山屈指の進学校
父は元サッカー選手。山田が野球を始めたのは、先に新家スターズでプレーしていた兄の影響だが、就学前はあまり興味がなかったという。
「野球のことがよくわかっていなくて、将来はプロになるとかいう発想もありませんでした。でも、新家の体験練習に行った日から野球が好きになりました」
1年生の5月に参加した体験練習では、2つ上の兄(当時小3)とは違い、コーチ陣が打てるボールをやさしく投げてくれた。それをバンバン打ち返しては褒められたことから、山田の野球人生が本格的にスタートした。
一方、小学校は隣県の難関私立の小中高一貫校へ。甲子園でもおなじみの智弁和歌山に在学中で、「勉強はあまり好きではないです」と語るが、月曜日の塾通いと、相当な量の宿題も毎日こなしている。
「夢はプロ野球選手。バッティングでもっと飛ばせるようになって、もっとミートもできるようになれば、可能性はあると思っています」
火曜日と水曜日はチームの平日練習に参加。土曜日は学校で授業がある日はそれを終えてからチームに合流する。フリーとなる木曜日と金曜日の放課後は、自らバットを振っているという。
「3つそろっている上に頭脳もある。野球も学校のほうも、よう頑張っていると思います」(千代松監督)
チームの基本方針は、1人複数ポジショ制。山田は本職の中堅手以外に、投手にもチャレンジしている。フィールディングを含めて無難にこなしており、炎天下の全日本学童(前年度優勝枠で出場)ではマウンドにも立つことだろう。
肩甲骨周りもご覧の可動域。外野守備で鍛えた肩がマウンドでも生きるか
現5年生以下の新チームの背番号が正式に決まるのは、2月に入ってから。現時点で、山田に「0」の確約はなく、「1」の可能性もあると千代松監督は語る。
「山田はエース候補でもあるので1番か、ウチ特有の大黒柱の0番か、どちらかでしょうね。まあ、背番号のことよりも山田たち5年生にはこう言うてます。『去年の日本一は、6年生に全国まで連れて来てもらっての優勝や。今年は全国が決まっているけど(前年度優勝枠)、今度はキミたちの力で日本一を勝ち取る番や!』と」
果たして、山田は何番を背多い、指揮官の檄にフィールドでどう応えていくのか。“山田弟”の学童野球ラストイヤーは、のっけから目が離せない。
(動画&写真&文=大久保克哉)