【2023注目の逸材】
よこやま・たすく横山 輔
※プレー動画→こちら
【所属】千葉・磯辺シャークス
【学年】6年
【ポジション】捕手
【主な打順】一番
【投打】右投右打
【身長体重】155㎝48㎏
【好きなプロ野球選手】松川虎生(ロッテ)
※2023年9月25日現在
いったいどういう育成や練習をすれば、小6でここまでの捕手が育つのか。初めて見て、そういう疑問を抱く指導者も少なくないだろう。
本人によると、野球を始めたのは1年生の秋。チーム練習の中で、捕手のイロハから学んできたという。率いる小池貴昭監督は2013年に全国8強入り。2人の息子を含めて後の甲子園球児も複数輩出しており、バッテリーの育成にも定評のある名将だ。現6年生たちは4年時からの3年計画で、直接の指導を受けてきている。
「野球をしていたお父さんのススメで1年生の11月に野球を始めました。野球の全部が大好きです」(横山)
「自主練習もお父さんとずっとやっていますけど、ティーとかバッティングがほとんどです」
磯辺シャークスの横山輔は、扇の要に立つ姿からして凛々しい。きりっとした目で敵味方のベンチや打者・走者から瞬時に情報を入れ、先を読んでフィールドの仲間へ指示を送って動かす。
捕手の動作はどれも基本に忠実。頭の回転も速く、多岐にわたるプレーもクールにこなす
その高くて響く声はまだ子ども特有のものだが、キャッチングとストッピングの技能は中高でも上のレベルに入りそう。驚くほどの強肩ではないが、送球動作もスムーズ。打球への反応と動き出し、一塁ベースのバックアップ、走者へのタッグ、本塁フォースプレーからの転送や偽投など、捕手に必要な動きをあまねく習得していて、どれも精度が高い。
ただし、「千葉県No.1」と評することができないのは、県内にもう一人、同様に突出した捕手がいるからだ。八日市場中央スポーツ少年団の伊藤瑠生(※選手紹介記事→こちら)。
大一番の惜敗を経て
夏の全日本学童大会出場をかけた6月の県予選決勝で両チームは激突し、横山がマスクをかぶる磯辺はスミイチの0対1で惜敗した。ぬるくはない名将の下、スキルも戦術も磨き抜いてきた磯辺ナインは号泣。背番号10の横山も涙を流しつつ、一人だけ報道陣に対応した。
「悔しいです。勝ちたい気持ちが1点の差だったと思います。もうちょっと、打つほうで力を出せたら…。切り替えて、これから他の大会は全部優勝できるようにがんばります」
名将・小池監督(右)は横山の人間性も高く評価。「主将として4年生からよくついてきてくれましたね。ボクの厳しい指導に(笑)」
何より打撃が好きだという一番・横山は、自ら打って出て打線に火をつけるのが役目。1週間前の県準決勝は、屈指の好投手からいきなり逆方向へ三塁打など3打数2安打1打点2得点の働きだった。しかし、決勝は大型右腕を前に2打数で音なし。チーム全体でも散発の2安打に終わり、三塁も踏ませてもらえなかった。
「目標は切り替えましたけど、気持ちの切り替えがたいへんでした。みんなたぶん、1カ月くらいは心の中でショックを引きずっていたと思います」
自身も含め、過ぎる時間と新たな勝利から徐々に立ち直っていったという。そして当初の大目標だった全日本学童大会の1回戦と同じ8月6日、磯辺は関東学童大会で優勝を果たした。横山は1回戦で逆転アーチ、決勝ではダメ押しアーチと打棒でも大きく貢献した。
「いつもセンター返しを意識」。その結果、タイミングも合って広角に鋭い打球が飛ぶ。8月の関東学童では2本塁打を放っている
「10月のろうきん杯(県大会)が6年生最後の大会なんですけど、そこで八日市場(全日本学童3位)を倒して優勝する、という目標をみんなで持っています」
全国大会がすべてではない。でも、そこを本気で目指したことは無駄にならない。いや、なるはずがない! 今なお続く、横山の成長と前向きなハートがそれを物語っている。
個人の夢は壮大で具体的。「大好きな松川虎生選手(千葉ロッテ)に続きたいと思っています」。2022年シーズン、高卒1年目にして開幕スタメンマスクをかぶった松川と、同じようにプロデビューする自分を未来に描いて精進も続く。