【2023注目の逸材】
山本愛葉
やまもと・まなは
※投球・打撃の動画→こちら
【所属】石川・館野学童野球クラブ
【学年】6年
【ポジション】投手、一塁手
【主な打順】二番、七番
【投打】左投左打
【身長体重】147㎝34㎏
【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス)
※2023年6月6日現在
【2023注目の逸材】
中村颯真
なかむら・そうま
※送球・打撃の動画→こちら
【所属】石川・館野学童野球クラブ
【学年】6年
【ポジション】捕手
【主な打順】四番
【投打】右投左打
【身長体重】150㎝56㎏
【好きなプロ野球選手】村上宗隆(ヤクルト)
※2023年6月6日現在
マドンナのチーム愛
10年の節目を超えて第11回目となるNPBガールズトーナメント(学童女子の全国大会)が、今夏は石川県で開催される。地元の同県からは「輝プリンセス」という選抜の代表チームが出場することになっている。
山本愛葉は実績と能力からして、そこでもエース級になれるはず。周囲からも代表入りを推す声がないわけではない。しかし、「今は館野(自チーム)に集中したいです」と、きっぱり。所属チームにそれほど愛が深いのは、幼いころから背中と白球を追ってきた2人の兄の古巣でもあり、苦楽をともにしてきた仲間との全国出場が現実味を帯びていることもあるだろう。
野々市市で活動する館野学童野球クラブは、ちょうど40周年のメモリアルイヤー。2016年には全国スポ少交流大会で銀メダルに輝いている。当時から指揮をとる山本義明監督の下、昨年秋の新人戦は県準優勝。山本は主に先発してゲームをつくる役目を果たした。
コンパクトに折り畳まれた左腕が柔軟性を物語る。「けん制もうまいし、踏ん張りどころで踏ん張れるのも良いです」(山本監督)
左腕特有の球の出所が打者にわかりにくいフォームは、しなやかで美しい。球速は90km/h台でも、コースのバラつきが少なく遅球も操るとあって、連打を食らいにくいのが強み。
「(マウンドで)たまにイライラすることはありますけど、そういうのは見せないようにしています」
失点やバックのミスの後でこそ、ストライク先行で打ち取っていく。また、マウンドを降りてからも切れない集中と堅実な一塁守備にも、責任感を見て取れる。「ここという踏ん張りどころで踏ん張れる。良い意味で、なかなか強情ですよ」と、芯のたくましさに山本監督も太鼓判。ちなみに、ふたりの同姓はたまたまで血縁はないという。
「勉強? 嫌いです!(笑)。自主練? 毎日じゃないけど、できるときにはやっています。将来は女子プロ選手に? まだわかりません…今は館野で全国に出ることだけ考えています。バッターから三振を取れるように、しっかり練習しています」
左腕が胴体の側面に隠れて、なかなか見えてこないので打者はタイミングがとりづらい
山本を含めて3枚いる投手陣は、切磋琢磨しながら今日がある。進境著しいのは右腕の高田慶吾主将で、身長とともに球速も飛躍的にアップ。またそれに伴い、山本の働きにも幅が生まれてきているという。
「今年は一番の売りである投手力を中心に、最少失点に抑えながら競り勝っていくのがスタイルです」(山本監督)
不動の四番、中「村」神様!?
男も女もない。信頼する球友として、すんなりと握手してカメラに笑いかけることができるバッテリー。相反する点も多いからこその、名コンビなのかもしれない。
スマートで自身や思いを端的に口にするのが山本なら、マスクをかぶる中村颯真は見るからに重量感があってパワフル。それでいて、声にも語り口にもあどけなさを残していて人懐こい。
「ピッチャーのリードは任されています。3拍子のリズムとか、コーチに教えてもらったことを大切にしています。具体的に? 球の緩急とかコースの左右高低を…」
姉と2人姉弟の中村は、幼いころから従兄らと野球をしてよく遊んだ。1年生までスイミングスクールに通っていたのは、野球をするためだと自覚していたという。
的確なキャッチングに機敏なストッピング。コンパクトで軟らかい送球動作にも日々の鍛錬がうかがえる
「自分の一番良いところ? 初球からでも甘い球が来たら振り切るところです。打席でのしぐさはヤクルト・村上宗隆選手を意識? はい(笑)。村上選手が大好きです。ああいうバッターになりたい? はい、プロ野球選手になって球団の四番を取るのが夢です。侍ジャパンでも四番に? はい!(笑)」
昨年は7本塁打。今年は早くもその数字に並ぶ勢いで、3月の時点で通算2ケタを超えたという。7年前の全国大会では三番・捕手だった佐々木優太(星稜中・高→亜大1年)が、猛打で準Vの原動力に。打球の飛距離においては、中村も6年時の佐々木に引けを取らないと指揮官は語る。
「今はバットがレガシー(複合型)というのもありますけど、中村の打球はもう、大人の打球ですよ。ツボにはまれば、みんなサク越え」
打席では風格さえ漂う。「今の飛ばす力に、確実性も備わってくると言うことなくなります」(山本監督)
したがって、不動の四番は当然。指揮官が何より感心するのは練習熱の高さだという。「いわゆる『野球バカ』。人の3倍も4倍もバットを振っている子ですよ」。
本人に聞いても、平日練習をほとんど欠かしたことがないという。「お父さんが夕方6時ごろに帰ってくるので、一緒にだいたい7時まで。素振りしたり、ティーしたり、あとはキャッチャーの送球動作とか。やりたくない日やサボったことは? ないです(笑)。やったほうが自分のためになるので、いつも自分からお父さんに『やろう!』と…」
何でもベンチ任せではなく、選手たちでタイムを取って確認し合うことも
中村も山本同様、「中条に勝って全国制覇したいです!」と強く語った。同じ石川県から昨夏日本一になった中条ブルーインパルスを標的とするのは、公式戦はこのチーム以外に負けていないせいもある。昨秋の県大会も今年3月の加賀能登大会も、決勝で屈した相手が中条だった。
この強敵にリベンジを果たすにはまず、夏の全日本学童大会出場を決める必要がある。中条は前年度優勝枠での出場が決まっており、あす6月10日開幕の石川予選には参戦しないのだ。
「待ってろよ、中条!」
こんな粋がった物言いはしないバッテリーだが、虎視眈々とまずは負けられない戦いへと向かう。
(大久保克哉)