【2023注目の逸材】
境 翔太
さかい・しょうた
※送球・投球・打撃・盗塁の動画→こちら
【所属】愛知・北名古屋ドリームス
【学年】6年
【ポジション】捕手、投手、遊撃手
【主な打順】二番、三番
【投打】右投右打
【身長体重】153㎝43㎏
【好きなプロ野球選手】岡林勇希(中日)
※2023年6月25日現在
ヒトは幼児期から10歳までに、身のこなしなどの神経系が著しく発達する。トップアスリートはこの時期に、運動の基礎能力の絶対値が引き上がっていたケースが多いという。
未就学児にも門戸を開いている北名古屋ドリームスで、年長から野球をしている境翔太にも、そういう傾向を見て取ることができる。
捕手、投手、遊撃手をそつなくこなす。打席では球速やコースを問わず、鋭く振り抜くバットの芯でストライク球をとらえてみせる。
「抜群の身体能力で、何でもできる」と評するのは、2021年の全日本学童大会でチームを準優勝に導いた岡秀信監督。小学生にしてオールラウンドの逸材だからこそ、あえて役割を限定せずに可能性を広げている側面もあるようだ。
「攻撃に関しても足が速くて一番も打てるし、三番も打てるし、勝負強さもあるので四番も打てる。だからあえて、二番バッターという、ちょっと変わった使い方をしています」
北名古屋打線のキーになる二番打者。ヒザから上の重心移動でタイミングをとりつつ、速球も遅球もピシャリと打ち抜いていく
今夏の全日本学童出場を決めた大一番。愛知大会の決勝では、境の三塁打で入った先制点が、そのまま決勝点に。「試合がちょっとこう着した中で、みんなが勇気をもらった一打でしたね。境に限らず、ウチは伝統的に二番バッターを重要視しているんですよ」(同監督)。
本人も最大のセールスポイントは打撃だという。「打ちだしたら止まらないタイプで、頼れるバッターというか…。ココというときには、初球から打ちにいこうとしているから、良い結果につながっていると思います」
野球より早く夢中に
野球経験者の父と、名古屋ドームで中日対楽天のオープン戦を見たことが、チーに入ったきっかけだという。
チーム事情もあって最上級生となってから捕手に初トライ。持ち前の吸収力にコーチの専門的な指導もあって、県No.1捕手に成長している
「キッズ(2年生以下)ではみんな楽しく笑顔でやっていたので、土曜日の野球がまた楽しみだなと。それしかありませんでした」
ただし、より早く始めていたのが水曜日のピアノと、金曜日の水泳。どちらも自らの希望で始めて、今なお夢中だという。「ピアノの発表会は年中から毎年出ていて、今年は菅田将暉の『虹』を練習しています。一番の目標はプロ野球選手なので、ピアニストの夢はないです。ピアノの集中力とか、水泳の肩の動きとか、野球に生きている面もたくさんあります」。
自分の考えを自分の言葉で、これだけ冷静に話せるのは、フィールド外の経験も生きているせいかもしれない。チームの活動は週末と祝祭日のみで、木曜日はバッティングセンターで、ほかの平日も時間があるときには自宅内の大部屋で打撃練習に励んでいるという。
5年時は不動の一番・遊撃で活躍。学童ラストイヤーは、マウンドにも上がりながら夏の全国出場を決めた
キッズの時代から学年キャプテンを務め、5年生まで遊撃手一筋。4年時には3つのローカル大会で優勝し、昨年は5・6年生のトップチームを一番打者として引っ張った。
踏んできた場数も、攻守走のスキルも相当なもの。それでいて「思い上がったところのない子で、先輩たちからも可愛がられてました」と指導陣が口をそろえる。そして最上級生となっても、境は素直にこう語る。
「チームには自分よりすごい選手もいます。ピッチャーの球もめっちゃ速かったり。ライバルという存在はいませんし、失敗してもみんなで励まし合ったりして、どんどん良いチームになっていると思います」
物事を客観視する賢さもある。6年生になってから、未体験の捕手や二番打者で器用している指揮官の意図も、やがては理解することになるのだろう。
小学校のスポーツテストで50m走は7.5秒。校内1位だったというスピードも相手の脅威に
選手たちで決めた夏の全国大会の目標は『一戦必勝で決勝まで戦い抜く』――。
2年前の先輩たちほどの猛打はないものの、「守備と元気」という拠り所が自分たちにはあるのだと、背番号10は軽く胸を張りながら教えてくれた。
(動画&写真&文=大久保克哉)