【2023注目の逸材】
本多希光
ほんだ・のぞみ
※捕球・送球・打撃の動画→こちら
【所属】福島・常磐軟式野球スポーツ少年団
【学年】6年
【ポジション】捕手
【主な打順】四番
【投打】右投右打
【身長体重】146㎝41㎏
【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス)、吉田正尚(レッドソックス)
※2023年5月28日現在
「小学生の甲子園」とも言われる夏の全日本学童大会で、史上最多の出場記録(22回)を更新中の常磐軟式野球スポーツ少年団(福島)。堅固な守りと巧みな走塁が代名詞でもあるが、創立から40年という節目にある2023年度は趣がいくぶんか異なる。
6年生10人を中心に、個々の打力が相当に高いレベルにあるのだ。OBコーチが投じる、少なくとも110km/hはあろうかというスピードボールも難なく打ち返してみせる。また山なりのスローボールは、手元まで引き寄せてからのフルスイングで外野へ鋭く弾き返していく。
速球に負けないスイング力に、遅球で崩されない体幹と術も。余して持ったバットで状況に応じた打撃を披露する
「冬の間は、階段ダッシュやソフトボール打ちや素振りなど、基礎的なトレーニングをしてきました。今年は守備とか走塁も標準より高いと思うんですけど、バッティングが一番自信があります。1人が打ち始めると、どんどん乗ってくる感じです」
チームをこう評する本多希光主将は、攻守の要だ。正捕手として4人の投手陣を自分でリードし、強打者が並ぶ打線では四番を張る。
「自分はチャンスで打席が回ってくることが多くて、そこで結果を残せているのが一番の持ち味です」
左右の強打者が並ぶ打線にあって四番に鎮座。自他ともに認める勝負強さが最大のセールスポイントだ
天井正之監督もその勝負強さを高く評価している。「必ずしも良い当たりでなくても、得点につながるようなポイントゲッターの役目を果たしてくれているし、そこをこれからも期待しています」
本多は5年時からレギュラーで、昨夏の全日本学童1回戦(対北北海道・旭稜野球少年団)は六番・中堅で先発出場した。試合は4対9で敗れたものの、第2打席にチーム初タイムリーとなる中越え二塁打を放っている(下写真)。
「外野がヘタッピになってきて、どこもできねえからキャッチャーにしたんです」と指揮官は冗談めかして言うが、そこは堅守のキーになるポジション。理路整然とした話しぶりからもうかがええるように、経験豊富な本多の勝負度胸や頭の回転力もすっかり見抜いた上で、扇の要に据えたのだろう。
「キャッチャーは配球とかカバーリングとか、やることも多くて大変ですけど楽しいです。ピッチャーとのコミュニケーションを大切にして、ピッチャーが気持ち良く投げられるようなキャッチング、ストッピングを意識しています」(本多)
配球面もほぼ任されている。「ピッチャーはみんな持ち味が違うので、それぞれにリードしています」
週6日はチーム練習がある中で、唯一のフリーとなる水曜日も自主練に励む。捕手のステップワークや素振りや柔軟体操など、己を磨いているという。
全国優勝の先には
「小さいころからお父さんと公園とかでボールを投げて遊んでいて、楽しいなと思っていたので1年生の11月に常磐キッズ(3年生以下)の体験会に行って、もっとやりたくなってすぐに入りました」
2人兄弟の長男で、弟は数カ月前に生を享けたばかり。それまでは両親からの愛も全面に受けながら、チームでは一塁手、投手、三塁手に外野と二遊間以外をすべて経験。こうしたことが少年の感性を広げ、野球愛を育んだようだ。
「打つ、投げる、走る、野球はいろんなことがあって飽きないです。全部好きです」
昨秋の新人戦は、他大会と日程が重なって県大会は出場辞退。茨城県開催の木内幸雄杯などを制している。
自分のことよりチームを優先する主将。好きな野球を存分にできる喜びが、重圧も打ち消しているようだ
「いつもチームのことを考えています。自分が打てなかったとしても、チームが勝てば次につながりますので」
真っすぐに語る主将に、あえて個人の夢や目標を聞いてみた。
「常磐で全国優勝して、中学・高校でも力をつけて、大谷翔平選手(エンゼルス)のようなメジャーリーガーになることです」
学童野球界きっての名門が福島県いわき市に生まれて40年。伝統の野球に「強打」も上乗せしたチームを象徴するのが、この頼もしい四番・捕手のリーダーだ。向かうは23回目の大舞台で13年ぶり2度目の頂点。まずはその出場権を得るために、6月3日開幕の福島県大会(16チーム参加)に臨む。
(大久保克哉)