【2023注目の逸材】
向 慶士郎
むかい・けいしろう
【所属】石川・中条ブルーインパルス
【学年】6年
【ポジション】捕手、投手
【主な打順】一番
【投打】右投左打
【身長体重】158㎝50㎏
【好きなプロ野球選手】村上宗隆(ヤクルト)
※2023年3月19日現在
※送球・打撃の縦向き動画→こちら
動画でチェック➡二塁送球、特大ファウルetc.
『優勝チームに名捕手あり』とは、故・野村克也氏の格言。同氏は捕手として打者として監督として解説者として、プロ野球をリードした大御所だが、冒頭の理論は学童野球にも当てはまる。
昨年の日本一、中条ブルーインパルス(石川)は怪物クラスの投打二刀流・服部成(星稜中に進学予定)が大車輪の活躍だった。ただし、当時5年生の正捕手・向慶士郎を抜きには、チームは全国出場すら危うかったかもしれない。
昨年の向は怖いものなしだった。全国予選で打ちまくり、全国準決勝の土壇場では二走としてトリックプレーを仕掛け、決勝のホームを踏んでいる。ワンプレーを見ただけでも、類まれな運動神経を推し量れるが、何より特筆したいのは捕手としてのテクニックと完成度の高さだ。
16m先から110km/h超のスピードで迫ってくるボール。これをミットに収めるか、地面に落ちれば体で止めて前に転がすか。全国舞台なら、どの捕手もある程度はできるが、精度の点で昨夏は向の右に出る選手がいただろうか。
サイズに頼っての力任せではない。野球知識、基礎技術、身体能力、経験値を伴う「世代No.1捕手」と言っていいだろう
昨年のV腕・服部は、1学年下の頼もしき女房についてこう評している。
「どんな球も絶対に止めてくれるので、いつも思い切り投げられていました。あとは、アウトにできるところを探してリードをしてくれるので、すごく良いキャッチャーでした」
リードは三振を奪うだけが狙いではない。中条の選手たちは野球の本質を学んでおり、状況に応じてどこでどういうアウトを奪いにいくのかを全員が理解して守っている。向はその上で、走者や打者も観察しながらエースにサインを出していた。そして全国3回戦では、完全試合をアシストしている。
捕球技術が高いから、握り替えもステップもスムーズで、二塁送球にリズムと力がある。小飛球やバント処理への反応と一歩目の鋭さに、また目を奪われる。
「アニメの『メジャー』を見て、1年生から野球を始めました」
3年生から投手と捕手を兼務するようになり、昨年の春から捕手にほぼ専念。「自分でもこのままキャッチャーでいきたい。打つほうが好きで、夢はプロ野球選手です」
昨夏の日本一以降は、打撃に悩む時期もあったという
前主将からの金言
全日本学童大会には前年度優勝枠があり、王者・中条は今夏の出場が決まっている。Vメンバーが7人(6年生)残った新チームは、秋の新人戦で石川大会を制しており、連覇の呼び声も高い。
昨年は河北支部大会から県大会まで8試合を勝ち抜いて全国を決めた。今年はその予選がない代わりに、目に見えないものと戦っているようだ。たとえ練習試合でも、どの相手も「打倒!王者」の牙をむき出しにしてくる。その重圧は大人が想像する以上に、小学6年生には深く差し込んでくるのかもしれない。
「結構、プレッシャーはあります。しかも僕は緊張しい、なので」
10番を背負う向は正直に吐露する。しかし、フィールドでは怯えや迷いが感じられずに大きく見えるのは、やるべきことが明確ゆえだろうか。
「一番打者でもあるので、まず出塁して流れを持ってきたい。あとは自分のことよりもチームのこと。年代が新しくなって試合に出始めているメンバーもいるので、場面によってしっかり指示して伝えていくことを心掛けています」
シャープで力強いスイングに足もある。相手には脅威の一番打者だ
昨年暮れのポップアスリートカップの全国ファイナル(4強)は、打撃面が低調だった。以降は憧れでもある村上宗隆(ヤクルト)を参考に、フォーム改良へ着手。どっしりと待ってボールを呼び込んでから強振できるようになり、新年を迎えて気温の上昇とともにバットからの快音も取り戻してきている。
「『去年より弱い』とか言われないように、一戦必勝で頑張りたい」
新年度に入り、全国予選も各地で始まっている。重圧はさらに増してくるのかもしれないが、前主将でもある服部から現主将へ、頼もしいメッセージを最後にお届けしよう。
「相手がどうとか全国連覇できるのかとか、そういうのは関係ないです。中条の野球を貫けば、しっかり勝てると思うので。去年もそうやって日本一になりましたし、日本一になってからもいつも通りの野球をしてきたので大丈夫です」
名捕手へ金言なり!
(大久保克哉)