リポート

【東日本交流大会/決勝評】あっぱれ頂上決戦!延長8回の大熱戦を茎崎が制す

【東日本交流大会/決勝評】あっぱれ頂上決戦...

2024.05.02

 第20回東日本少年野球交流大会は4月6日、茎崎ファイターズ(茨城)の2年連続5回目の優勝で閉幕した。不動パイレーツ(東京)との決勝は、夏の全国大会にも匹敵するハイレベルな攻防で互いに譲らず、特別延長戦へ突入。あと1本をともに許さない中で、8回表のスクイズが決勝点となった。大熱戦の内容とともに、両軍のインサイドリポートをお届けしよう。 ※記録は編集部、学年の無表記は新6年生 (写真&文=大久保克哉) 優勝/茎崎ファイターズ[茨城・つくば市]   準優勝/不動パイレーツ[東京・目黒区] ■決勝 ◇4月6日 ◇茨城・希望ヶ丘公園野球場 茎 崎 03000001=4 不 動 20100000=3 ※特別延長8回 【茎】折原、藤田-藤城 【不】難波、佐伯、鎌瀬-鎌瀬、細谷 本塁打/石田(不)  前半は一進一退で打ち合い、中盤からは息をのむような1点を巡るせめぎ合いが続いた。いったいどこをハイライトにすればいいのか――実力派同士によるファイナルはポイントがあり過ぎて、逆に取材者泣かせ。第20回大会の王者を決めるにもふさわしい好ゲームは、夏の全国大会にも匹敵するハイレベルな戦いでもあった。 1回裏、不動は石田が先頭打者アーチ(上)。続く難波は中前打(下)から三進し、五番・川本の中前タムリーで2点を先取する  まずリードしたのは、準決勝で千葉の強豪・豊上ジュニアーズにコールド勝ちしたばかりの不動パイレーツだった。1回裏、石田理汰郎がレフトへ鮮やかに先頭打者アーチを描く。続く難波壱も中前打から内野ゴロ2つで三進すると、五番・川本貫太の中前打で本塁に生還した。  一方、準決勝で新人戦の関東王者・船橋フェニックス(東京)を逆転で下してきた茎崎ファイターズは、またすぐにやり返してみせた。 2回表、茎崎は九番・大類が2点タイムリー(上)。なお、一死二、三塁から折原の一ゴロ(下)で3対2と逆転する  2回表、一死から5年生の七番・八番コンビ、佐々木瑠星と佐藤大翔がともに粘って四球で歩くと、九番の大類拓隼が左翼線へ同点タイムリー。 「2-2と追い込まれていたけど、何とかランナーをかえそうと。ドカーンと狙わずに、つないでつないでやっていくのがボクの今の仕事です」  こう振り返った大類は、チームの新年初タイトルとなったフィールドフォースカップの決勝(2月)は発熱で欠場。今大会は挽回とばかりに攻守で渋い働きが光り、センターでは準決勝から再三の守備機会をすべて難なくさばいていった。この殊勲打の後はバッテリーミスを逃さずに三進し、二番・折原颯太の一ゴロの間に勝ち越しのホームを踏んでいる。 一転、堅守で張り合う  どういうわけか、試合は3回から双方が勝負強い守りで張り合うことになる。  まずは3回表、二死満塁のピンチで不動の三塁手・川本が難しいゴロをさばいて3アウトに。するとその裏、三番・細谷直生の中越え二塁打から一死三塁として、川本がセンターへ同点犠飛を放つ。なおも米永結人のテキサス安打から二死一、二塁とチャンスを広げたが、今度は茎崎の三塁手・藤田陽翔がゴロを確実にさばいてピンチを脱する。...

【東日本交流大会/準決勝評❷】昨夏全国準V、不動がキター!!細谷が連続HR、豊上に打ち勝つ

【東日本交流大会/準決勝評❷】昨夏全国準V...

2024.04.29

 昨夏の全日本学童大会で準優勝。新人戦は都大会3回戦で敗退していた不動パイレーツが、春を待っていたかのように頭角を現してきた。東日本少年野球交流大会の準決勝、全国区の強豪・豊上ジュニアーズ(千葉)に5回コールド勝ち。三番の細谷直生内野手(6年)が2打席連続本塁打など、2ケタ安打の2ケタ得点で決勝進出を決めた。なお、両チームはすでに全日本学童の最終予選出場をそれぞれ決めている。 ※記録は編集部、学年の無表記は新6年生  (写真&文=大久保克哉) 3位/豊上ジュニアーズ[千葉・柏市] ■準決勝2 ◇4月6日 ◇茨城・希望ヶ丘公園野球場 豊 上 00210=3 不 動 26011x=10 ※5回コールド 【豊】桐原、加藤-岡田 【不】川本、佐伯-鎌瀬 本塁打/細谷2(不)、中尾(豊) 豊上の先発・桐原は、やや変則的な投法がアクセント。バランスがしっかりとれて最後に腕も振れていたが…  戦うごとに成長する。とりわけ、打線がパワーと勝負強さを増していく。昨夏に全国2番目の高みにまで登った不動パイレーツには、そういうカラーがあった。指揮官を含めて代替わりした新チームにも、そこは継承されているのかもしれない。  1回表の守りで、ライトゴロを決めた難波壱だけは前年からのレギュラーで、しかも昨年度のチーム年間本塁打王だった。この大黒柱が二番に入る打線が、豊上ジュニアーズを急襲した。  一番・石田理汰郎から三番・細谷まで、3連続二塁打で瞬く間に2点を先取。豊上の先発・桐原慶は、やや変則的に左横から投げてくる。緩急もあって捉えにくいタイプだが、右中間、左越え、右越えと、ものの見事に外野へ打ち返した。 不動の二番・難波は2打席連続の左越え二塁打(上)。2回には九番・唐木も中越え適時二塁打(中)、そして三番・細谷が左へ豪快に2ラン(下)  桐原はそれでも後続を断ち、波に乗りかけたが、2回には与四球とけん制悪送球からペースを乱してしまう。不動は九番・唐木俊和が、一死二、三塁から中越えタイムリーでまず1点。さらにまた一番・石田から三番・細谷の左越え2ランまで、計4連打の6得点という猛打で8対0と大きく相手を突き放した。 「桐原は緩い球がいつものようにコントロールできなかった感じ。結果、速い球を入れにいって、それを狙い打たれてしまいましたね」と、豊上の剱持正美コーチ。  昨秋の新人戦は同コーチが率いて千葉大会で準優勝している。その後、組織内の体制刷新に伴い、髙野範克監督が6年生チームの采配にも復帰。3月20日には、地元の柏市予選を制して全日本学童県大会(6月)出場も決めていた。 不動の先発・川本貫太(上)はご覧の整ったフォームで序盤2回を0封。豊上は3回表、四番・加藤が左中間へ2点タイムリーを放つ(下)  髙野監督といえば、2019年、20年と全日本学童3位など、チームを全国屈指の強豪に押し上げた名将。今大会も30番をつけて水戸レイズ(茨城)、吉川ウイングス(埼玉)と名のある強敵を撃破してきたが、この最終日は仕事で姿がなかった。それでも千葉の盟主が、消沈したまま終わるはずがない!  3回表、豊上は二死無走者から二番・桐原が中前へクリーンヒット。さらに敵失で一、二塁となり、四番・加藤朝陽が左中間へ2点タイムリーを放った。続く4回には六番の5年生・中尾栄道が、左打席から目の覚めるような弾丸ホームランを右へ放って5点差まで詰めた。 「最高で~す!」と一発を振り返った中尾。夏の花火大会のようにサク越えアーチが次々と打ち上がった今大会の中でも、打球速度は中野の1本がトップだったかもしれない。4年時の昨年は年間17本塁打も放っているという、末恐ろしいスラッガーだ。 序盤から失点が続いた豊上は剱持コーチが「間」を入れる(上)。4回表には5年生の中尾が弾丸のような球足のソロアーチ(下)...

【東日本交流大会/準決勝評❶】雨に笑った茎崎、関東王者の全勝をストップ

【東日本交流大会/準決勝評❶】雨に笑った茎...

2024.04.27

 昨秋の新人戦から公式戦で勝ち続けてきた関東王者、船橋フェニックス(東京)の快進撃がついにストップした。打破したのは、全日本学童出場10回(2019年準優勝)を誇る“関東の雄”こと、茎崎ファイターズ(茨城)だ。『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』とは故・野村克也氏の名言だが、東日本少年野球交流大会の最終3日目、準決勝の第1試合は勝者にも敗者にも不思議はなかった。 ※記録は編集部、学年の無表記は新6年生 (写真&文=大久保克哉) 3位/船橋フェニックス[東京・世田谷] ■準決勝1 ◇4月6日 ◇茨城・希望ヶ丘公園野球場 船 橋 21000=3 茎 崎 0404 X=8 ※5回時間切れ 【船】松本、木村、長谷川-竹原 【茎】佐藤映、折原-藤城 早朝から予報以上の降雨も、大会役員や保護者らの懸命のグラウンド整備により、準決勝以降の3試合が無事に行われた 小雨混じりの遅延スタート  4月最初の土曜日の朝7時半、希望ヶ丘公園野球場。大会運営をサポートする茎崎ファイターズの保護者たちが、一塁ベンチからじっと空を見上げていた。  予報に反しての強めの雨脚が、なかなか止む気配をみせない。準決勝のもう1試合を予定している隣接のグラウンドは、すでに湖のよう。朝一番から整備してきたというメイン球場は、全体にまだ土が見えているが、点在する水たまりに侵食されつつあった。父親の一人が、遠い目をしてポツリ。 「全部パー。またやり直しっすね」  上位4強はいずれも全国区の強豪で、明くる日もそれぞれに別の試合がある。つまり、日曜日へのスライドは現実的ではない。やるならば、きょうのうちに。ナイター照明もあるメイン球場なら、準決勝2試合と決勝の3試合は辛うじて消化できるのではないか。  大会本部でそのような話し合いが行われた末、開始時間を遅らせての決行が各チームに伝えられた。それが8時半前で、長靴履きの父親たちがグラウンドに散っていった。そして小ぶりの雨がパラつくなかで、10時には準決勝の第1試合が始まった。 雪辱に燃える一番打者  茎崎ファイターズと船橋フェニックス。実は1週間前の1回戦終了後に、練習試合をしたばかり。結果は12対4で茎崎のコールド勝ち。これにより、昨秋の関東大会を含めて船橋の新チームが貫いてきた全勝が止まった(関連記事➡こちら)。  1回表、船橋は木村の右前打(上)から一死満塁とし、吉村の三塁ゴロと続く半田の右前打(下)で2点を先取する 「茎崎は上位打線がすごく打ってくる。長打もあるし、強いなと。フルボッコでしたから。でも、練習試合だったし、こっちもエースじゃなかったので。次は公式戦でリベンジということで」  7日前の対決をそう振り返っていた船橋のトップバッター、木村心大が有言実行へ向けて、のっけから結果を出した。ライト前へ鮮やかなクリーンヒットを放つと、天に一本指を突き刺した。  準々決勝で2本塁打の二番・松本一も、いつもの猛烈なフルスイングだ。追い込まれてから3球連続ファウルの後、死球を回避した体勢のバットにボールが当たり、送りバントのような結果に。...

【東日本交流大会/pick-up】秋の関東決勝カード再び。王者にあった“負けられない理由”

【東日本交流大会/pick-up】秋の関東...

2024.04.26

 秋の新人戦で最上位となる関東大会の、決勝と同一カードが東日本少年野球交流大会で実現した。大会2日目、船橋フェニックス(東京)と、西埼玉少年野球(埼玉)による準々決勝だ。昨秋は8対3の勝利で関東王者に輝いた船橋が、このリマッチは5回コールド勝ち。予想外のワンサイドゲームとなったが、王者には負けられない理由があった。返り討ちにされた西埼玉も、2回戦では関東大会の神奈川代表に完封勝ちなど、実力を示した大会だった。 ※記録は編集部、学年の無表記は新6年生  (写真&文=大久保克哉) ■準々決勝 ◇3月31日 ◇茨城・希望ヶ丘公園野球場 西埼玉 00000=0 船 橋 14101x=7 ※5回コールド 【西】金子、杉山-村井 【船】松本-竹原 本塁打/松本2(船)、濱谷(船) 関東出場組が激突  茨城県を舞台とする東日本交流大会は毎年、全国大会の最初の予選が各地で始まる直前にある。どのチームも、最終のテストや調整を兼ねて参戦してくる。  昨年は雨で中止となったが、節目の第20回を迎えた今年は、福島県の常磐軟式野球スポーツ少年団と、長野県のTeamNを加えた1都8県から32チームがトーナメント戦にエントリー。しかも、昨秋の関東大会に出場した各都県の王者8チームのうち5チームが参加とあって、例年にも増してハイレベルで拮抗した戦いが多く見受けられた。  早くも2回戦では、関東出場組の4チームが激突。船橋フェニックスは栃木の真岡クラブに、西埼玉は神奈川の平戸イーグルスに、それぞれ快勝した。 西埼玉の四番・白垣大耀(下)は2回戦で長打を連発。平戸は「自分たちのできることをしっかりやろう!」(中村監督=上)と臨んだが、0対5で敗北  平戸は対外試合解禁の2月(県独自のルール)から、負けなしで来ていたという。互いに無四死球のハイペースで進んだ2回戦は、守と走の綻びから序盤で流れを失うと、相手打線の中軸につかまり5失点でそのまま敗れた。1996年アトランタ五輪で主将も務めた中村大伸監督は、西埼玉の個の能力の高さと安定した試合運びに脱帽の様子だった。 「能力的にも、ちょっと相手との差を感じましたね。こっちのミスを逃してくれないし。こういう相手に対しても、ガマン強くやれるチームをつくっていかないといけませんね。選手たちには良い経験になりました」(中村監督) 「当たって砕けろ!」  迎えるダブルヘッダーの2試合目。準々決勝で関東王者・船橋と戦う西埼玉には、好材料もあった。平戸戦で右腕・歩浜鈴乃助が完封したことで、エース左腕の金子塁主将と右腕の杉山拓海を温存できたのだ。 西埼玉の18番・杉山は今大会、伸びのある速球で注目を集めていた  成長痛が癒えて、2月から実戦のマウンドに復帰したという杉山は今大会、伸びのあるストレートが際立っていた。 「金子と杉山がフルでいけるのは確かに大きい。ただ、相手のほうがポテンシャルがぜんぜん上なのはわかっているので、当たって砕けろ! ですよ」(綿貫康監督)  船橋の選手たちは、ハイポテンシャルを開始から見せつけた。1回表の守りを3人で終わらせた右腕・松本一がその裏、今度はバットで右へクリーンヒット。...

【吉川市近隣大会/特別ルポ】吉川ウイングス、劇的Vに潜むドラマと勝負の綾

【吉川市近隣大会/特別ルポ】吉川ウイングス...

2024.04.04

 埼玉と千葉の7市1町から37チームが参加した第38回吉川市近隣少年野球大会は3月20日、吉川ウイングス(吉川市)の3年ぶり5回目の優勝で閉幕。草加ボーイズ(草加市)との決勝は1点を争う緊迫の戦いに。これをサヨナラで制した王者には、いくつものドラマと勝負の綾が潜んでいた。 ※記録は編集部、学年の無表記は新6年生 ※関連記事(準決勝評)➡こちら  (写真&文=大久保克哉) ⇧優勝/吉川ウイングス[埼玉・吉川市] ⇩準優勝/草加ボーイズ[埼玉・草加市] ■決勝 ◇3月20日 ◇旭公園野球場 草加ボ 010000=1 吉川ウ 000002x=2 【草】北村、髙橋、北村-髙橋、鈴木、髙橋 【吉】大浦、湊-鹿島、大浦 1回表、ウイングスは一死満塁のピンチに1-2-3併殺(上)。その裏はボーイズの先発・北村が無死三塁の大ピンチを、連続三振と一飛(下)で切り抜ける  ふたつ前の元号・昭和の62年(1987年)に始まった、由緒のある大会。第38回大会の決勝は、王者を決めるにふさわしい両軍が、それぞれに持ち味を発揮してロースコアの好勝負を展開した。  先手を取ったのは草加ボーイズ(以降、ボーイズ)だった。90分ほど前に、逆転サヨナラ満塁弾(鈴木健太主将)で準決勝を制した余韻が打球に乗り移ったか、一番・髙橋一生と続く北村寛太が連続のテキサス安打。三番・藤川悠義(新4年)がきっちりと送って一死二、三塁として、大殊勲の四番・鈴木の登場だ。  すると、吉川ウイングス(以降、ウイングス)の岡崎真二監督が颯爽とベンチを出てきて「申告敬遠」。この満塁策が奏功し、先発した新5年生の右腕・大浦大知が1-2-3の併殺でピンチを切り抜けた。 ウイングスは先発の新5年生・大浦が毎回走者を負いながらも5回1失点と粘投  対するボーイズの先発右腕・北村も負けていなかった。ウイングスの一番・藤田陽斗の二塁打と、二番・大塚淳斗(ともに新5年)の犠打エラーで無死三塁の大ピンチを招くも、スローボールも駆使してクリーンアップを3人斬り。この気迫の投球が準決勝同様に流れを呼んだ。 2回表、ボーイズの石川が四球から二盗、さらにバント処理の間に本塁を陥れた(上)。ウイングスは左翼守備専門の新5年生・古井(下)が好守を連発  2回表、ボーイズは石川颯人が四球から二盗に成功。そして七番・成田陽太(新5年)の投前バント処理の間に、本塁を陥れる好走塁で先制した。この流れにベンチの本村洋平監督も続いた。2回裏、二死一塁で髙橋をマウンドへ。 「鈴木は準決勝で70球(規定リミット)を投げていましたし、終盤のことも考えて、あえて北村の球数(規定70球)を残して髙橋につなぎました。3人とも頼れるピッチャーです」(本村監督)  背番号0の右腕・髙橋は、力投で期待に応えた。6回一死から三塁打を許して降板するまでに、ウイングス打線をバントヒット1本の無得点に抑えて、2つの併殺も奪ってみせた。 ボーイズの二番手・髙橋(上)は力投。3回には1-6-3併殺を奪う(下)  一方のウイングスも、毎回走者を負いながら追加点は与えずにスコアは1対0のまま進行した。大浦のクイックモーションと捕手・鹿島琉の強肩で2回、4回とボーイズの二盗を阻止。  6回にはエース左腕・湊陽翔が登板して、初めて3者凡退に。広い守備範囲でバッテリーを救ってきた左翼手の古井稜久(新5年)が、この6回にも前方の飛球を飛び込んで好捕するファインプレーで流れを引き寄せた。...

【吉川市近隣大会/特別ルポ】準決勝で白熱の「草加」ダービー、逆転サヨナラ満塁弾で幕

【吉川市近隣大会/特別ルポ】準決勝で白熱の...

2024.04.02

 第38回吉川市近隣少年野球大会は3月20日、吉川ウイングス(吉川市)の優勝で閉幕した。同日の準決勝第1試合は、草加市同士が一進一退の好ゲームを展開。劇的な幕切れまで目が離せなかった戦いと、そこで生まれた2人のヒーローを特別にレポートしよう。なお、準決勝第2試合は、吉川ウイングスが南川崎ゴールデンアロー(八潮市)に10対0の3回コールドで勝利している。 ※記録は編集部、学年の無表記は新6年生 (動画&写真&文=大久保克哉) ⇧3位/長栄タイガース[埼玉・草加市] ⇩3位/南川崎ゴールデンアロー[埼玉・八潮市] ■準決勝1 ◇3月20日 ◇旭公園野球場 長 栄 0201002=5 草加ボ 1000204x=7 ※特別延長7回 【長】伊藤、五十嵐-石田 【草】鈴木、北村-高橋 本塁打/鈴木(草)  長栄タイガース(以下、長栄)は昨秋の新人戦で県大会に出場。同大会準優勝の山野ガッツ(越谷市)に2回戦で敗れている。その長栄に草加市予選の決勝で敗れていたのが草加ボーイズ(以下、ボーイズ)で、スコアは8対2だった。  新6年生たちの両チームの激突はそれ以来となる。この戦いの次には決勝のダブルヘッダーだったが、ともに背番号10のエースが先発のマウンドへ。 3年連続の全日本学童埼玉大会出場を期す草加ボーイズ。中学硬式の「全草加(草加ボーイズ)」とはまったくの別組織だ 「何も隠すつもりないですね。そういうので勝てる相手でもないですし、今がゴールでもない。真っ向からいくだけです」  試合前にこう話したのは、コーチから指揮官に転じて1年目のボーイズ・本村洋平監督だ。相手もそれは同じであっただろう。夏の全国大会につながる全日本学童の草加市大会は、ここ2年連続でボーイズが制覇。実父から指揮官を引き継いで20年になるという長栄の村上武史監督は、こう語っている。 「草加でNo.1を獲って上部大会に出る、というのは常々言ってきていることで、埼玉(県大会)を勝って全国へというのが長年の目標です」 1975年創部の長栄タイガース。村上監督が実父から指揮官を引き継いで20年になる  試合は双方の好守で幕を開けた。まずは表の守りで、ボーイズのバッテリーと二遊間が一発けん制でピンチを脱する。その裏は長栄の捕手・石田駈が、一死二塁のピンチで小飛球を好捕してみせた。  二死となったボーイズだが、四番・鈴木健太主将の中越えエンタイトル二塁打で1点を先制。すると、長栄もすぐさまやり返す。四番・伊藤稜晏主将の左前打から一死一、二塁として、七番・木幡翔馬が右中間を破る二塁打で2対1と逆転した。 ボーイズは1回裏、髙橋(上)と鈴木主将のエンタイトル二塁打で先制。鈴木主将は投げても5回まで3失点とゲームをつくった(下)  これ以降は先発の両エースが踏ん張り、試合が引き締まる。ボーイズの右腕・鈴木主将はミス絡みで4回に1点を失うも、まるで動じずに既定リミットの70球まで投げ抜いた。結果、3回から5回まで相手を無安打に。「去年の12月からフィールドフォースカップを経験して(3位)、チームが一体になって粘り強く戦えるようになったと思います」(鈴木主将)  ボーイズは新6年生が5人だが経験値が高く、指揮官の信頼も厚い。いきなり先頭打者二塁打を放った髙橋一生ら体格に恵まれた選手が複数おり、下位打線もバットが振れていた。...

【京葉首都圏江戸川/決勝】関東王者の船橋、一発攻勢でV。臆せず食い下がった清新

【京葉首都圏江戸川/決勝】関東王者の船橋、...

2024.03.19

 1試合3発の4回コールド締め! 第21回京葉首都圏江戸川大会の決勝が3月2日にあり、初出場の船橋フェニックスが参加59チームの頂点に輝いて閉幕した。昨秋に関東V2を遂げた船橋は、奢ることなく不敗ロードを驀進中。その一発攻勢を前に、清新ハンターズは銀メダルに終わるも、持ち味と成長の跡がうかがえる戦いぶりだった。  ※記録は編集部、学年の無表記は新6年生 ※3位決定戦評➡こちら (写真&文=大久保克哉) 優勝/船橋フェニックス [東京・世田谷区] 【戦いの軌跡】 1回戦〇10対1大雲寺(江戸川) 2回戦〇6対5深川(江東) 3回戦〇10対0中央バ(中央) 準々決〇2対1山野(世田谷) 準決勝〇3対0鶴巻(新宿) 決 勝〇9対2清新(江戸川)   準優勝/清新ハンターズ [東京・江戸川区] ■決勝 ◇水辺のスポーツガーデン 清 新 0020=2 船 橋 0612x=9 ※4回コールド 【清】宮成、青木-渡邉 【船】木村、松本-竹原 本塁打/髙橋(船)、瀧川(清)、濱谷(船)、吉村(船) 船橋は準決勝まで主にリリーフしてきた木村が先発(上)。キレのある球が定まらず、2回途中で実父の木村監督が交代を告げる(下)  昨夏に全国出場した6年生(卒団)チームが相手でも、好勝負を演じたという船橋フェニックスの新チーム。昨秋の新人戦は、東京都大会に続いて関東大会も制している。「同学年にはまだ負けたことがない」と背番号11の松本一が胸を張ったように、練習試合を含めての全勝ロードで新年最初の大会も駆け抜けた。...

【京葉首都圏江戸川/3位決定戦】3回ノーノー&先制弾!大ヒーロー誕生の中で…

【京葉首都圏江戸川/3位決定戦】3回ノーノ...

2024.03.14

 第21回京葉首都圏江戸川大会の3位決定戦が2月25日、東京・水辺のスポーツガーデンであり、鶴巻ジャガーズがブルースカイズを下して銅メダルに輝いた。3回コールドの参考記録ながら、鶴巻はエースの園部駿がノーヒットノーランに、先制2ランなど大車輪の活躍。ワンサイドで決着する中でも、双方の有意なチームカラーが浮き彫りとなった。 ※記録は編集部、学年の無表記は新6年生  (写真&文=大久保克哉) ⇧3位/鶴巻ジャガーズ[東京・新宿区] ⇩4位/ブルースカイズ[東京・北区] ■3位決定戦 鶴 巻 028=10 ブルー 000=0 ※3回コールド 【鶴】園部-斎藤 【ブ】鈴木、忠村-三木 本塁打/園部(鶴) ★園部が3回参考ノーヒットノーラン 3イニングで打者9人を無安打無得点に封じた鶴巻・園部。6つの空振り三振を奪った  開催地の江戸川区を中心に、東京23区から59チームが参戦したトーナメントの最終日。午前9時からの3位決定戦を前に、冷たい雨が土の色を濃くし始めていた。本降りの予報が出ていた午後からの決勝戦は順延が決まったが、銅メダルをかけた戦いは滞りなく進んで決着した。  初回は無得点の静かな立ち上がり。ここで際立ったのは、マウンドの双方の右腕だった。ともにフォームも制球も安定しており、腕がよく振れている。 柔軟な投球フォームのブルーの新5年生・鈴木。今大会ではサク越え弾も放った  ブルーの新5年生、鈴木深空は二死二塁のピンチで四番打者を空振り三振に。対する鶴巻のエース、園部駿は3者連続の空振り三振で最上級生の貫録を示した。 「調子が悪いときは真ん中に速い球を投げるしかない。今日はしっかりと指に乘ったので、球速差を意識して使ったり、高めで狙って空振りも取れました」  こう振り返った園部は、完璧な立ち上がりで気を良くしたか、直後に打棒が火を噴いた。2回表一死二塁、右打席から放った白球は左翼48m地点の高いフェンスを越え、旧江戸川に飛び込んだ(下写真)。 「ホームランはぜんぜん狙ってなくて、監督から『当てな!』と言われた通り、それだけ意識して振っただけ」(園部)  ワンマンショーはなお続く。開始からの連続奪三振は2回裏、5人目(投飛)で途切れるも、6人目をまた空振り三振に。 斎藤隼汰のリードも冴え、ベンチに戻る鶴巻ナインを指導陣はハイタッチで迎えた  ブルーの鈴木も負けてはいなかった。被弾後は冷静に打たせて取っていく。3回表も簡単に二死を奪って、3者凡退――と思われた矢先、バックの1つのミスから悪夢が始まった。  敵失と四球で二死一、二塁の好機を得た鶴巻は、五番・阿部大河(新5年)から八番・鈴木湊翔(同)までの4連打などで5得点。さらに九番・岩垂我音(新5年)と、続く浅野夢叶が四球を選び、二番・井村勇登の中前タムリーでスコアは10対0となった。 3回表、鶴巻は五番の阿部(上)から川上慶(中央)、園部、八番の鈴木(下)まで4連打。園部以外はすべて新5年生だ...

『学童野球メディア』初代年間MVPは!?

『学童野球メディア』初代年間MVPは!?

2023.12.31

 シガラミも忖度もなく、前例にもない――。『学童野球メディア』は本年3月の開設に先駆けて、2022年末のポップアスリートカップから取材をスタート。新春からはローカル大会や低学年の大会、夏の全国大会とその予選、秋の新人戦など、できる限り現場に足を運んできました。そこで取材をした相当数の選手の中から、年間最優秀選手『2023年MVP』を選出しました。表彰も副賞もありませんが、記事と動画は残ります。学童野球と、その専門メディアがここにある限り――。 (選出=編集部/写真&文=大久保克哉) ※巨人ジュニアの写真は藤森家提供 【2023年最優秀選手】 ふじもり・かずき 藤森一生 [東京・レッドサンズ/読売ジャイアンツジュニア] 6年/投手/左投左打/165㎝51㎏ 【主な成績と掲載記事】 「2023注目戦士①」➡こちら 全日本学童都大会★優勝➡こちら  東京都知事杯★優勝➡こちら 全日本学童大会★3位➡こちら  ※チームルポ➡こちら  東京23区スワローズカップ★優勝 NPB12球団ジュニアトーナメント★準優勝  夏の「小学生の甲子園」で最速124㎞の衝撃。年末の「夢の祭典」では125㎞を計時した。どちらの舞台でもサク越えアーチも放つなど“主役”と呼べるほどの活躍と進化を示してきた投打二刀流。2023年のMVPは「藤森一生の一択」で、異論はないだろう。  全国3冠に輝いた新家スターズ(大阪)を率いて13年の千代松剛史監督も、事あるごとに藤森の名前やハイパフォーマンスを口にした。 「ホンマにあんなにすごい子、めったにおらんて。過去にも見たことない!」 木製バットで右へ一発  ではまず、直近のNPB12球団ジュニアトーナメントのリポートから。藤森が背番号18をつけた巨人ジュニアは、2年連続の準優勝。9年ぶり4回目の優勝を期した決勝は、DeNAジュニアに2対3で惜敗した。藤森はMVPに次ぐ「優秀選手賞」に選ばれている。 「8月20日に結団式があって9月18日の初練習から3カ月間、みんなで優勝を目指してきました。最後は敗れはしましたけど、最高の監督、コーチ、スタッフ、仲間たちと出会うことができました」 ジュニアトーナメントは全4試合フル出場。不動の一番打者で、登板時以外は左翼、右翼、一塁を守った  各球団、地元を中心に選りすぐりの16戦士による夢の祭典は、3日間で全15試合。予選敗退なら2試合しかない中で、藤森は全4試合にフル出場し、3試合で先発登板している(成績詳細は別表参照)。  二刀流で圧倒的な存在感を示したのは予選2回戦(対日本ハム)だ。投げては5回一死まで、被安打2の無失点。許したクリーンヒットは、三遊間をゴロで破られた1本のみだった。また自らのバットで3回裏に先制ソロ。追い込まれてからの低め109㎞を、ライトの特設フェンスの向こうへ。  大会では昨年から「レガシー」などの複合型バット(打球部に弾性体)が禁じられた中、藤森は大会を通じて730g程度の木製バットを使用した。...

【心に沁むストーリー・王者の番外編】一生の誇り、手に入れた――。

【心に沁むストーリー・王者の番外編】一生の...

2023.12.27

 夏の全日本学童大会マクドナルド・トーナメントと高野山旗に、冬のポップアスリートカップ。これでもか! と勝ちまくって2023年の学童球界を席捲した大阪・新家スターズ。主将の1年掛かりの劇的なストーリー以外にも、じんわりと心に沁むサイドストーリーがあった。結果として絶対王者の本質にも迫る、珠玉のストーリー『番外編』を、現場からの本年最終リポートとしてお届けしよう。 ※珠玉のストーリー『12歳の熱い365日』➡こちら※8月26日公開 (写真&文=大久保克哉) 不可解な打席中の交代  12月のポップアスリートカップ(ポップ杯)全国ファイナルの1回戦。新家は5回裏に3点を加えて、9対2でコールド勝ちを決めた。この最後の攻撃中に、ちょっと不可解な選手交代があった。  1点を入れてなお無死満塁で打席には5年生の山田拓澄(下写真)。夏の全国(全日本学童)でも一発を打ち込むなど、新チームの大黒柱となりそうな左のスラッガーだ。  その山田の3球目に、バッテリーミスから三走が生還して無死二、三塁に。カウントは2ボール1ストライク。ここで急に、打席の期待の星がベンチに下げられてしまう。  捕手も止められなかったワンバウンドのボール球。これを打席で見逃しただけで故障するわけがない。山田は第1打席でタイムリーを放ち、二盗も決めていた。だがもしかすると、その打席では3球目までに何らかのサインを見落とし、ペナルティで代えられたのかもしれない。試合後、千代松剛史監督に真相を尋ねると、まったく違う答えだった。 「いや、山田は何もミスしてないです。6年生のタイセイ(中野泰聖)という子に、出番をあげたかったんです。レギュラーやないけど頑張り屋で、お父さんお母さんもホンマに熱心で…」  新家の6年生は12人で、レギュラーは7人。夏の全国は準々決勝以降、5年生2人を含むスタメンの9人でやりくりをしながら勝ち抜いた。それほど、9人の力が抜けていたし、大目標の「日本一」へ勝負に徹した結果、控え組に出番はなかったということだろう。  だが指揮官の心の内には常に、最終学年の控え組5人のこともあったという。 「やっぱりね、この神宮という素晴らしい球場でプレーさせてあげたい。ここでやれたというのはホンマ、一生の思い出になると思うんですよ。だから正直、全員を出してあげたい。夏は全国2回戦(昭島球場)で6年生をほぼ使いましたけど、神宮やなかったし、6試合やって神宮は1試合(3回戦)だけでしたからね」(同監督)  カウント1-2からの代打。ベンチを出てきた背番号11、中野は右打席へ入る前にくるりとベンチを振り返り、白い歯を見せた(上写真)。 「初めての神宮でのプレーで、もう緊張して緊張して…。この大会も悔いのないように一生懸命に自分のやれることを頑張ろうと思っていたので、代打でもチームのためにと思いながら打席に立っていました」  一打出ればサヨナラ勝ち(コールド決定)という、絶好の場面。結果は死球でヒーローにはなれなかったが、チームのためにつなぎ役は果たした。振り返る中野は興奮気味にまくし立てた。 「ベンチとか、ランナーコーチで見るのと実際に打席に入るのでは、ぜんぜん違いました。やっぱり、ものすごい緊張でした!」  中野は続く2回戦でも、4回に代打で登場。結果は二飛も、忘れられない2打席になったという。 「これまでの人生で一番、心に残る日になりました。マクド(夏の全国)は1回だけ代打でダメ(一塁野選)やったし、今日のほうがちょっと多く出られたし、それも神宮やったので」 一時は移籍を申し出て  兄と姉がいる3きょうだいの末っ子。中野は4年生の半ばに、新家に入って野球を始めた。今夏の全国もこのポップ杯も、主な役目は一塁のランナーコーチ。よく似たメガネの選手がチームに2人いるが、中野のトレードマークはスボンの尻ポケットから顔を出している冷却スプレーだった。 今夏の全日本学童準決勝。124㎞左腕・藤森一生(東京・レッドサンズ)からチーム初ヒットを放った梅本陽翔とともに、一塁コーチの中野もガッツポーズ 「レギュラーになれず、悔しい気持ちも? それも思ったことあるけど、他の子がどんどんうまくなってきてるので、レギュラーになりたくても難しい環境でした」  夢は多くの学童球児と同じく、高校で甲子園に出場すること。だが、野球の腕前は下級生から始めていた主力組に大きく遅れをとったままで、体力面の差もなかなか埋まらない。そして実は、両親とともにチーム移籍を指揮官に申し出たこともある。だが、千代松監督のこんな言葉で踏みとどまったという。 「素晴らしい夢(甲子園出場)や。でも、よそに行ってただ試合に出るだけで叶う夢なんかな。このまま新家スターズにおってみんなと練習に励むほうが、キミの夢に近づけるのと違うか?」  いつも優しいだけの監督では決してない。最後の最後まで、自分たち控え選手のことまで気にかけてくれていた「親心」には気付かなかったという。ポップ杯優勝の表彰式の後、その指揮官の想いを伝え聞いた中野は泣きだした。「タイセイ、なんで泣いとるん?」「何に感動した?」と、仲間から口々にはやし立てられても堂々と、最後まで取材者の質問に答えた。 「監督のそういう想いは知りませんでした…日本一のメンバーになれたことに僕は誇りを持っています。これまでいつも支えてきてくれた、お父さんとお母さんにも感謝したいです」...

【ポップ杯全国ファイナル/総括】やはり無敵だった新家。初Vで全国3冠締め

【ポップ杯全国ファイナル/総括】やはり無敵...

2023.12.26

 参加1440チームによる自主対戦方式の予選と、全国8ブロックの最終予選を経た14チームによる最終ステージ。第17回ポップアスリートカップは12月9日、10日に明治神宮野球場でファイナルトーナメントを行い、新家スターズ(大阪)が初優勝を飾った。夏の高野山旗と全日本学童大会を制していた新家は、これで全国3冠。今大会も危なげのない戦いで4試合を制し、夏王者の貫録を示す形となった。 (写真&文=大久保克哉) 優勝=初/新家スターズ(大阪)   準優勝/大崎ジュニアドラゴン(宮城)   3位/野沢浅間キングス(長野)   3位/岡山庭瀬シャークス(岡山) 新チームも見据えつつ 「全国」と名のつく大会でのV決定の幕切れも3度目とあってか、概ね安泰の勝ち上がりと内容がそうさせたのか。最後の打者を遊ゴロに打ち取ってから、マウンド付近に新家スターズの輪ができるまでに少々の間が生まれた。  貴志奏斗主将と山本琥太郎の胴上げバッテリーは抱き合うでもなく、近くで目を見合わせてニヤニヤ。そこへ内外野とベンチから仲間がなだれ込んできて「歓喜の輪」となるも、夏の大田スタジアム(全日本学童V決定時)にように涙や魂の雄叫びはない。塁審に促されてすぐに整列、挨拶となった。 新家の四番・山本は2回戦で2ラン、準決勝では先制犠飛(写真) 「最高です!」と異口同音に語った主力のV戦士たち。不動のリードオフマン・宮本一希は、最大タイトルの夏の全日本学童制覇以降の日々をこう振り返った。 「高野山旗とマクド(全日本学童)と近畿大会とポップアスリート(ポップ杯)の4冠をみんなで目指していたので、気が抜けるとかいうのはなかったです」 新家は新チームのエース候補・庄司七翔も1回戦から登板。貴重な経験を積んだ  終わってみれば、冬の全国舞台でも新家が頭ひとつ抜けていた。与四死球や落球、けん制死など、夏にはほぼ見られなかったミスも散見された。しかし、さらにミスを重ねて傷口を広げるようなことがなく、大勢に影響することはなかった。  6年生の卒団式は新年の3月だが、活動の主体は9月から5年生以下へシフトしている。準決勝以降は新チームの藤田凰介主将が従来の左翼ではなく、捕手でスタメン出場するなど、新年に向けた足場も固めつつの初Vだった。 昨夏日本一の石川・中条ブルーインパルスは2回戦敗退。倉知幸生監督(写真上=左)は、新家との対戦を期して開会式前に千代松監督と握手も…。新チームは5年生の北翔輝(下)らがリードしていく  夏以上に安定した投球が光った城村颯斗は、優勝の一番の要因を問われてこう答えている。 「守備が堅かったことだと思います」 牙城は崩せなかったが  新家と準決勝で戦った野沢浅間キングス(長野)と、決勝で戦った大崎ジュニアドラゴン(宮城)は、どちらも夏の全日本学童で初戦を突破していた。そんな実力者でも新家と相対すると、失点につながる手痛いミスが出てしまった。  野沢浅間は合併1年目、6年生はこれが最後の大会だった。 「チャンスはつくったんですけど、あと1本がなかなか。守りはちょっとバタバタしてしまったんですけど、同じ条件(朝露で濡れた人工芝など)でも新家さんはしっかりしてましたね」(戸塚大介監督)  それでも小山翔空主将が投打で奮闘(関連記事➡こちら)して劣勢ながらも好勝負に。そして学童野球最後の攻撃となるだろう、1対4で迎えた最終回には意地も見られた。五番・市川耀斗が左前打を放つと、続く高橋玲凰が四球を選び、重田志希も左前打(下写真)で一死満塁と、長打なら同点という場面までつくった。...

【ポップ杯関東代表】 失意から這い上がってきたナイン。いよいよ全国初陣

【ポップ杯関東代表】 失意から這い上がって...

2023.12.08

 学童野球界の年内最後の全国舞台。第17回ポップアスリートカップ全国ファイナルトーナメントが12月9、10日に神宮球場である。わずか2枠の関東代表に入った宇都宮ウエストキッズ(栃木)は、合併5年目で初出場。この9月には、夏の全日本学童8強の簗瀬スポーツを決勝で破り、県下125チームの新王者に。初夏の失意もバネにした努力と成長が、今回の全国デビューにもつながっているようだ。 (写真&文=大久保克哉)  ※文中の試合記録は編集部 宇都宮ウエストキッズ 【栃木】 6年生メンバー ⑩石川維人 ①勝俣陽翔 ②高柳心翔 ③角田駿斗 ④君島壮祐 ⑤飯田陽春 ⑥根本一絆 ⑧渡邉哉汰 ⑨平本汰我 ※丸数字は背番号、⑩は主将。関東Vメンバーは他に5年生6人、4年生5人、3年生2人、2年生3人   ※『微笑みマイスター』主将の紹介➡こちら    年中無休の学童野球にも、ある程度の節目はある。秋が深まるにつれて、主役は6年生から5年生以下の新チームへと切り替わっていく。高校野球の夏ほどはっきりとした交代のタイミングがあるわけではない。年が明けても小規模な6年生大会を行う地域やチームも、あるにはある。  だが、多くは6年生の活動は12月まで。夏をもって卒団というチームも珍しくない。今夏の全日本学童大会に初出場でベスト8入りした栃木代表、簗瀬(やなせ)スポーツもそうだった。  全国大会後の8月終盤に開幕した栃木県下125チームによる巨大トーナメント、夏季大会の準優勝をもって6年生たちは卒団。彼らを率いてきた父親監督、松本裕功監督も一緒にユニフォームを脱いでいる。 「最後は手の内も知る相手に逆転されて、完全な力負けでした。優勝は逃しましたけど目標の最終日まで、あの子たちと野球ができたことに感謝。悔いなく終われました」(松本監督)  タレントが複数いたその簗瀬を、最後に打ち倒して夏の栃木王者に輝いたのが、宇都宮ウエストキッズ(以降、宇都宮ウエスト)だった。 ポップ杯の関東最終予選は初戦で先制打の四番・角田(写真)が、続く代表決定戦は最終回を無失点救援で締めた 「マック(全日本学童)が自分たちの目標だったんですけど、県大会の準決勝で簗瀬に負けてしまって。そこでみんなで目標を切り替えて、夏県(夏季県大会)で優勝して監督を胴上げしようと。実際にそれもできたのでうれしかったです」(石川維人主将)...

【関東学童栃木予選/決勝評】真岡がノーサイン野球で初V

【関東学童栃木予選/決勝評】真岡がノーサイ...

2023.11.13

“ノーサイン野球”と“ドンマイ野球”が激突! ノーブルホームカップ第25回関東学童軟式野球秋季大会の栃木予選は10月28日、真岡クラブの初優勝で閉幕した。県下17ブロック代表によるトーナメントの決勝は、どちらが勝っても初の県タイトル。ノーサイン野球を基本とする真岡が、3回に9得点のビッグイニングで勝負をほぼ決めた。ミスを引きずらない石井学童野球部は、総力戦で最後まで粘るも、大勢は揺るがなかった。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) ■決勝 石 井 100010=2 真 岡 20901 X=12 【石】山﨑、新井、佐藤-新井、荒山、新井 【真】川又、勝田-勝田、川又 本塁打/今西(石)、勝田(真) ⇧優勝=初/真岡クラブ(真岡) ⇩準優勝/石井学童野球部(宇都宮)  学校行事などの都合により、決勝は当初予定の9時から16時半開始に変更。会場の芳賀町ひばりが丘公園野球場は内野が土、外野が天然芝で70mの特設フェンスはなし。夜の帳が下りてくるのと同時に力強さを増すナイター照明のなかで、際立ったのは真岡クラブの先発・川又崇雅の直球の走りだった。 真岡の先発・川又は投げるほどに球威を増していくようだった  この本格派エースの最速は102㎞。決勝では常時3ケタに達していただろう。「初回に甘く入った球をホームランにされちゃったけど、その後はコントロール重視に切り替えて。緩急の投球はまだ習得中なので、スローボールはほとんど投げませんでした。内容的には良かったと思います」(川又)  そんな出色の右腕に先制パンチを浴びせたのが、石井学童野球部の三番・今西唯翔だ。1回表、左打席から右中間を破るランニングホームラン。続く新井橙馬は速球を流し打つ右前打から二盗も決めた。そして、五番・山﨑凛之介も芯でミートしたが左飛で攻撃終了。 1回表、石井の三番・今西が右中間へ先制ホームラン。最後は捕手のタッチも間一髪でかわした  1回裏、真岡がすぐさまやり返す。一番・佐藤稜真の右中間三塁打に、続く毛塚奏汰の中前打で1対1。毛塚は二盗と内野ゴロで三進すると、四番・大塚悠生の左前打で2対1と勝ち越した。 1回裏、真岡は佐藤の右中間三塁打(上)と毛利の中前打で同点(中)。なお一死三塁から四番・大塚が三遊間を破って(下)2対1と逆転  2回は双方の先発が四球を出しながらも無失点。石井の先発・山﨑凛は緩急を駆使、一死二、三塁のピンチを内野ゴロ2つで切り抜けた。また、双方の守備で共通して目を引いたのが、下級生の遊撃手だった。  真岡の舘野奏空は3年生、石井の伊東叶多は4年生。奇しくも、名前の読みが同じ「かなた」。舘野は俊敏で5回には1―6-3の併殺も決めた。伊東は冷静なゴロ捌きと強肩で投手を助けた。ダブル「かなた」には、それぞれ世代を代表してプレーするような未来も開けているのかもしれない。 真岡の遊撃手は3年生の高山。俊敏かつ確実なプレーが光った  全学年で活動しており、スタメンの下級生は石井が4人、真岡が3人。重なる点も多かった両軍の頂上決戦は、3回で大勢がほぼ決することに。  主力組の経験値で上回る真岡が打者12人で9得点。四番・大塚、五番・川又の連打に二番・毛塚の試合2本目のタイムリー、三番・勝田透羽主将の3ランと、上位打線のバットがことごとく得点に絡んだ。 3回裏、石井は守備が乱れて投手陣も苦しんだが懸命に声掛け(上)。真岡は4四球3安打で6点、さらに三番・勝田主将がダメ押しとばかりに3ラン(下)で11対1に 「待て」のサインなくとも...

【関東学童東京予選/決勝評】船橋が逆転でV2、高野山旗へ

【関東学童東京予選/決勝評】船橋が逆転でV...

2023.11.02

 各支部代表62チームによるトーナメント。決勝のみの最終日は、投手の球数を稼ぐような消極策はなく、実力派同士が真っ向から対峙。緊迫した試合は終盤に動いて決着した。ノーブルホームカップ第25回関東学童軟式野球秋季大会の予選を兼ねた東京都新人戦は、10月22日に閉幕。2連覇を達成した船橋フェニックスは11月25からの関東大会(茨城)と、来年7月の高野山旗(和歌山)に出場。準Vの旗の台クラブは、同じく来夏の阿波おどりカップ(徳島)の出場権を得ている。  ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) ⇧優勝(2年連続2回目)/船橋フェニックス(世田谷区) ⇩準優勝/旗の台クラブ(品川区) ■決勝 船 橋 000013=4 旗の台 100000=1 【船】松本、長谷川、木村-濱谷 【旗】井手、寺村、片山-片山、梶原    47都道府県で最多にして唯一の4ケタ、1051チームが登録する東京都。今夏の全日本学童大会(東京3枠)は、不動パイレーツが準優勝してレッドサンズが4強入りした。  5年生の新チームに代が移っても、大激戦区の頂上決戦は同じくハイレベルだった。 両チームの応援が熱戦を盛り上げた。旗の台は母親たちの歌声(下)もよく響いたが、投手の投球動作中は静寂に  全面人工芝の板橋区立城北野球場で行われた決勝は、70mの特設フェンスなし。町中とあって午前9時までは声出しNGながら、解禁30分後に始まった一戦は、王者を決するにふさわしい両軍が真っ向から激突し、緊迫の勝負を展開。控えメンバーやベンチ外の下級生、保護者らの応援合戦も自ずとヒートアップしていった。 交流する両軍に共通点  内容と結果は別として、登板した双方3人、計6人の投手たちはいずれも出色だった。それぞれ球を受ける正捕手2人もまた、高い次元で張り合えるレベル。互いにバッテリーミスが失点の一部に絡むも、野手7人はともにノーミス。どちらの打線も好球必打で、二番打者が決定的な仕事をこなすなど、共通点が多くあった。  そして決着、表彰式の後には両軍の指導陣が歩み寄って、しばし談笑。船橋フェニックスの木村剛監督は、旗の台クラブについてこう語っている。 「旗の台とは交流もあって、何度か練習試合もさせてもらっているので、子どもたちも非常に前向きで良いチームなのはわかっていました。なので、そう簡単には勝てないなというふうに感じていましたし、良いゲームができたと思います」(木村剛監督) 船橋・木村監督(上)も、旗の台・寺村監督(下)も、コーチを経て新チームから指揮官に。いちいち感情的にならず、選手のパフォーマンスを引き出せる点でも共通していた  旗の台は3年前に大会初優勝。コーチとして現5年生たちとともに繰り上がってきた寺村俊監督が、新チーム始動とともに指揮官に就任。自身は早大までプレーして故・應武篤良監督から「細かい野球と得点するための武器もいろいろ学ばせていただきました」。  試合前のアップは専門のコーチに任せ、応援には選手の母親たちも前面に招くなど、父親監督でありながら組織の長としても一目置かれる存在だ。  対する前年王者、船橋フェニックスは今夏、開催地代表として全日本学童に初出場した。学年単位の活動がベースだが、長谷川慎主将と木村心大は6年生チームに加わって全国舞台を経験(1回戦で惜敗)。  その2人を含む5年生20人の新チームは「6年生チームとも良い勝負するんです」と木村監督が語るように、体格に恵まれた選手が多く、内外野の肩の強さやスイングの鋭さも際立っていた。 大一番は船橋・木村の先頭打者ヒット(写真)に始まり、完璧な火消しで終わった  そして全国デビュー済の一番・木村が、開始2球目を左翼線へ。貫録の一打で幕を開けたが、次打者の初球で仕掛けた二盗は成功しなかった。...

【関東学童茨城予選/決勝評】東海が連続コールド、10年ぶり王座返り咲き

【関東学童茨城予選/決勝評】東海が連続コー...

2023.10.26

 圧巻の王座奪還! ノーブルホームカップ第25回関東学童軟式野球秋季大会の茨城予選会は10月21日、ノーブルホームスタジアム水戸で準決勝と決勝を行い閉幕。オール東海ジュニアが2試合連続のコールド勝ちで、2012年以来3回目の優勝を果たした。2試合で25安打28得点、守っては1失策で左腕2枚が好投。11月25日・26日に地元で迎える関東大会も、東海が頂点に輝く勢いだ。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) ⇧優勝(10年ぶり3回目)/オール東海ジュニア(那珂支部) ⇩準優勝/茎崎ファイターズ(土浦支部) ※同日の準決勝評は➡こちら     ■決勝 東 海 30334=13 茎 崎 00011=2 【東】湊、黒川-津田 【茎】折原、石塚-藤城 本塁打/大木(東) 関東大会でも舞台に  最終日の舞台となったノーブルホームスタジアム水戸(水戸市民球場)は、両翼100mの中堅122mで内野は黒土、外野は芝。隣接する水戸市総合運動公園軟式球場はかつて、全日本学童大会が19年間開催されたことでも知られる。  来たる11月末の関東大会も、ノーブルホームスタジアム水戸がメイン会場になるという。今回と同じく70mの特設フェンスが設けられ、スピードガン表示もされる予定だ。  県準決勝2試合と決勝ではサク越え弾が1本、最速は湊陽翔(オール東海ジュニア)の92㎞だった。5年生の秋としては妥当な数字だろう。 関東大会でもメイン会場となるノーブルホームスタジアム水戸は、高校野球や社会人野球で使用されている。スピードガン表示もあり、今大会最終日は東海のエース・湊(下)が92㎞をマーク 全国区同士の決戦  オール東海ジュニアは2012年と14年に全日本学童大会に出場。当時の太田健一監督が、今年度からチームの代表職に専念し、2度の全国大会でもコーチを務めていた同級生の星野昌人監督が新指揮官に。  今夏の全国予選は県準優勝の上辺見ファイターズに1回戦で敗退も、新チームは県決勝まで進出。準決勝は先発全員安打に無失策の快勝だったが、茎崎ファイターズには2018年の決勝で敗れている。 「ここ何年か、ずっと茎崎さんに負けていたので、何とか勝ちたいというのが子どもたちにもありました。その気持ちの強さが、きょうはウチのほうがちょっと上だったのかなと思います」(星野監督) 茎崎は名将・吉田監督が不在も、名参謀・佐々木コーチ(写真)の下、準決勝は多彩な攻撃でコールド勝ち  対する茎崎ファイターズは、今夏の全日本学童に2年ぶり10回目の出場(2回戦敗退)。新チームの始動は8月下旬と、他チームより確実に遅かったが「2、3人は全国大会でプレーしていましたし、時間のことは言い訳にならないですね」と佐々木亘コーチ。  全国出場にも貢献した左腕・佐藤映斗が、ケガで今大会はベースコーチに専念。またこの最終日は吉田祐司監督が所要で不在のため、佐々木コーチが監督代行を務めた。準決勝では足技と小技も絡めてコールド勝ちと、世代交代しても変わらぬ試合巧者ぶりだったが、決勝はまさかの展開、そして決着となった。...

【関東学童茨城予選/準決勝評】全国区の東海と茎崎がコールド勝ち

【関東学童茨城予選/準決勝評】全国区の東海...

2023.10.26

 茨城県下の32支部代表によるトーナメント戦。最終日はダブルヘッダーが組まれ、全国出場の実績もある2チームが準決勝を5回コールドでパスした。3位の2チームはいずれも大敗ながら、新時代の到来も予感させるものを垣間見せた。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) ※決勝評は➡こちら ⇧3位/嘉田生野球スポーツ少年団(筑西支部) ⇩3位/美野里スラッガーズ(水戸支部)   ■準決勝1 東 海 93102=15 嘉田生 00202=4 【東】湊、植野遥-津田 【嘉】長谷川、大久保、田中-西宮 1回表、東海は黒川主将の三塁打(上)に大木の中前打(中央)で先制。なおも中里の左中間三塁打(下)などで一挙に9点  開始早々に大勢が決した。1回表、嘉田生(かたお)の好投手・長谷川新に東海打線が猛然と襲い掛かった。  二番・黒川歩輝主将の右中間三塁打と、続く大木颯真の中前打で先制。さらに九番・中里衣吹が満塁走者一掃の二塁打、二巡目に入って四番・津田恵太朗の2点二塁打など、打者15人で9点を挙げた。 嘉田生は3回裏、田中の中前打(上)から長谷川の二塁打(下)でまず1点を返す  勢いに乗る東海打線は、2回以降も着々と加点。4回には六番・湊陽翔の右越え三塁打で先発全員安打に。その湊が一、三塁からの重盗で生還するなど足技も光り、終わってみれば15安打15得点の大勝となった。 東海は4年生コンビも活躍。遊撃手の横須賀大叶(上)は4回裏に美技、八番・秋野銀介は5回に右越え二塁打(下)  対する嘉田生は3回裏、九番・田中颯介の中前打と一番・長谷川の左翼線二塁打などで2点。5回裏も途中出場の大木綾真の二塁打と、二番・八巻佳生の左前打などで2点を返したが、大勢は揺るがなかった。 嘉田生は途中出場の大木が5回裏に二塁打(上)、本原が左へタイムリー(下)   ■準決勝2 美野里 00000=0 茎 崎 13201x=7 【美】菅野、上野、植田-西川 【茎】藤田、石塚-藤城...

【関東学童千葉予選/決勝評】先発全員H、習志野台が初V

【関東学童千葉予選/決勝評】先発全員H、習...

2023.10.13

 5年生以下の新チームの試金石。ノーブルホームカップ第25回関東学童軟式野球秋季大会の千葉予選会は10月8日、玉前野球場で決勝を行い閉幕。習志野台ワンパクズ(船橋市)が、大会3連覇中の豊上ジュニアーズ(柏市)を17対3で破り、初優勝した。夏の全国3位の実績もある習志野台は、先発全員安打に3本塁打の猛打で大勝。11月25・26日に茨城県開催の関東大会も優勝を目指すという。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) ⇧初優勝/習志野台ワンパクズ(船橋市) ⇩準優勝/豊上ジュニアーズ(柏市) ■決勝 習志野台 07208=17 豊  上 20100=3 【習】村越、吉野-池邉 【豊】加藤、桐原、早川、遠藤-岡田 本塁打/池邉(習)、村越(習)、佐藤遼(習)    1回表、鋭い打球に飛びついて一死を奪った豊上の二塁手・坪倉  近年の「千葉の顔」といえば、豊上ジュニアーズだ。2016年に全日本学童大会に初出場すると、19年からは3年連続出場ですべて8強以上へ進出。秋の新人戦も、2020年から千葉の天下を獲り続けてきた(21年はコロナ禍で中止)。今大会も決勝まで順調に駒を進め、V4に王手をかけていた。  一方の習志野台ワンパクズは、全国デビューは2001年と、豊上より早くからに全国区に。2014年の3度目の全日本学童大会は3位へ躍進。バットを短く持った打者たちの、つるべ打ちが印象的だった。 習志野台の岡田監督は、全国3位の2014年当時はコーチ。必要に応じて打ち方と投げ方の指導も細やかにするという  当時の野田昌克監督は2020年度限りで総監督へ。コーチから新指揮官となった岡田徹監督は、21年度のポップアスリートカップで全国優勝を果たしてみせた。そしてこの秋は、チームを初の県決勝まで導いてきた。 新旧の全国区対決  いわば、新旧の全国区対決となった県決勝は、70mの特設フェンスなし。左翼93m右翼86mの球場規格のまま、外野の打球もフリーで行われた。  先にペースを奪ったのは豊上だった。1回表、二塁手・坪倉凛之丞の好守にも助けられた先発右腕・加藤朝陽主将は、二死満塁のピンチで三振を奪う粘りの投球。  するとその裏、一番・岡田悠充の目の覚めるようなレフト線三塁打から、二番・桐原慶のスクイズであっさりと先取点を奪う。さらに四番・加藤主将のテキサス安打に、五番・中尾栄道(4年)の中越え三塁打でリードを2点に。いかにも試合巧者らしい先制攻撃だった。 豊上は1回裏、先頭・岡田の三塁打(上)と坪倉のスクイズ(中央)で先制。さらに4年生の五番・中尾も適時三塁打(下)  2回表も、一死一、二塁のピンチで右翼手・桐原が前方の飛球をスライディングキャッチなど、豊上に風が吹いているようだった。しかし、習志野台の二番のバットが風向きを一変させる。  池邉周吾が左中間を破る逆転3ラン。すると、この一撃が合図であったかのように、習志野台打線が一気につながった。三番・佐藤大心主将から五番・吉野結仁までの3連続三塁打で5対3に。 2回表、習志野台の二番・池邉が逆転3ラン。「この大会は初戦とかぜんぜん打てなかったので、関東では1回戦からホームランも打ちたいです」  ここから投手交代を繰り返していくことになる豊上だが、どの投手もボール球が先行し、甘くいった球を痛打されるという苦しいマウンドが続いた。...

【関東学童埼玉予選/決勝評】乱戦制した西埼玉、4年ぶり関東切符

【関東学童埼玉予選/決勝評】乱戦制した西埼...

2023.10.04

 5年生以下の新チームのバトル。ノーブルホームカップ第25回関東学童軟式野球秋季大会埼玉予選会は9月17日、東松山市営球場で準決勝と決勝を行い閉幕。西埼玉少年野球が4年ぶり2回目の優勝を飾り、11月25・26日に茨城県で開催される関東大会の出場を決めた。県王者を決める一戦は両軍で計19四死球、考えさせられる内容だった。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) ※準決勝評は→こちら 優勝=4年ぶり2回目/西埼玉少年野球(飯能支部)   ■決勝 西埼玉 532=10 山 野 240=6 【西】金子、歩浜、杉山-村井 【山】伊藤、高松、三浦、樋口-樋口、高松  西埼玉少年野球からは、4年連続でNPB12球団ジュニア(年末にトーナメント大会)が生まれている。この秋の県新人戦は4年前に初優勝。昨年12月にはポップアスリートカップの全国ファイナルトーナメントに出場(関東第二代表)して初戦突破と、近年の躍進が目覚ましい。 「死ぬんじゃないかと(笑)」。1年前は病気を患い入院中だった西埼玉・綿貫監督が、復活しての4年ぶりVに「感無量です!」  一方の山野(さんや)ガッツも、昨年末は関東第一代表としてポップ全国ファイナルに出場(初戦敗退)。国内最大のショッピングモール、レイクタウンの近郊にあり、20人規模の学年単位で活動するマンモスチームだ。率いる瀬端哲也監督は、昨年末のポップ全国ファイナル後に、現5年生たちの代を引き継いだ。 大激戦区・越谷予選から打ち勝ってきた山野。瀬端監督は4年前の夏の全国予選準決勝で抽選負けの不運も経験  西埼玉は選手24人でうち12人が最上級生の5年生。山野は19人でオール5年生。準決勝はともに申し分のない勝ち方をしており、関東切符をかけた決戦は好勝負が予想されたが…。 両軍で3回19四死球  賛否が分かれるはず。万人が納得する結論が出ることもないだろうし、当事者の両指揮官は踏み込んだ発言は避け、大人の対応に終始した。それでも、ジャッジのあり方について一考させられる大一番だった。 1回表、山野は4連続四球などで5失点。瀬端監督がタイムもとったが…  わずか3イニングでタイムアップ。地域予選の序盤ならまだしも、県の王者を決める一戦で両軍合わせて19四死球(申告敬遠1)、つぎ込んだ投手は7人(同一選手含む)を数えた。  1回表は無安打ながら、6四死球を選んだ西埼玉少年野球が5点を先取。そしてその裏は、山野ガッツがやはり無安打ながら、4四死球で2点を返した。 準決勝は4回を無四球投球の西埼玉・金子主将が1回裏に4四死球。たまらず内野陣が集まる  双方の初回の守りには失点につながる失策もあり、ミスがより少なかった西埼玉に分があったのは間違いない。一方で、捕手の構えたミットにそのままボールが収まっても、球審の手が上がらないシーンも少なくなかった。同日の準決勝では、両軍ともに打力を存分に発揮していただけに、拍子抜けした感も否めないスタートだった。  人間のやることに完璧はないとはいえ、審判によるジャッジの差(甘い・辛い)は本来、歓迎されるべきことではない。だが、決勝(担当の球審)はストライクゾーンが狭いということを、西埼玉の綿貫康監督は過去の経験などから察知していたという。 「学童野球の試合は、球審の影響というのはものすごくありますよ。決勝は5年生には厳しいだろうなというのは事前に分かっていましたので、選手たちには『高めのボールは絶対に捨てろ!』と徹底。あのへんはみんな好きな球なんだけど、よく見て選んで、つないでくれましたね」 「高めに手を出すな!」(綿貫監督)。西埼玉は徹底して選んでつないだ。打者は2四死球の三番・金子主将...

【関東学童埼玉予選/準決勝評】ファイナルへ山野と西埼玉が打ち勝つ

【関東学童埼玉予選/準決勝評】ファイナルへ...

2023.10.04

 埼玉県下の36支部代表によるトーナメント戦。勝ち上がってきた4強のうち、上尾少年野球だけは地域選抜チームで、あとは単独チームだった。ファイナル進出を決めた2チームは、それぞれ持ち前の打力をいかんなく発揮。また敗れた単独チームにも、特筆するべきものがあった。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) ⇧3位/宮原ドラゴンズ(大宮支部) ⇩3位/上尾少年野球(上尾支部) ■準決勝1 宮 原 00102=3 山 野 5311 X=10 【宮】染川、澤村、小林-高橋 【山】高松、中井、高松-樋口 本塁打/遠山(山) 1回裏、山野は七番・遠山の2ラン(写真)など4長短打で一気に5得点  宮原の一番・髙橋漣の中前打で始まった一戦は、山野の5-2-3併殺プレーで終わった。  猛暑日が予報されていた中、序盤はスコールのような雨で一時中断。最終スコアは大きく差がついたものの、活発な打ち合いが展開されて90分があっという間だった。 山野の四番・増田(上)と五番・高松(下)は2打席連続タイムリー  1回表、二死二、三塁のピンチを無失点で切り抜けた山野がその裏、4本の長短打で一気に5点を奪った。二番・樋口芳輝のエンタイトル二塁打を皮切りに、四番・増田慎太朗、五番・高松咲太朗が連続タイムリー。そして遠山景太が左翼70mの特設フェンスの向こうへ2ランアーチを放った。増田と高松は2回にも連続タイムリーで8対0と、ワンサイドになりかけた。 3回表、宮原は澤村の右越え三塁打から1点を返す  しかし、3回表、宮原が二番・澤村永真の右越え三塁打と三番・染川僚大の中前打で1点を返す。1対10で迎えた5回表には、一番・高橋からの3連打と五番・岩﨑僚之介の右前打で2点を奪い、なお一死満塁としたが併殺で反撃もそれまで。5回8点差のコールドで試合は決着した。 宮原の三番・染川は5回表に2打席連続のタイムリー(上)、五番・岩﨑(下)も右前に弾き返して1点  山野は毎回を含む計12安打10得点、宮原も8安打を放ったが、山野は2併殺など要所での好守も光った。   ■準決勝2 西埼玉 101022=6 上 尾 000010=1 【西】金子、歩浜、杉山-村井...

【神奈川県選手権/決勝評】万能野球で吉沢が初V。会長杯に続く県2冠に

【神奈川県選手権/決勝評】万能野球で吉沢が...

2023.09.26

 2023フィールドフォース・トーナメント神奈川県学童軟式野球選手権大会は8月21日、吉沢少年野球部の初優勝で閉幕した。天神町少年野球部との決勝は、双方がスタイルを貫いた好勝負となり、3対1で制した吉沢が7月30日閉幕の会長杯に続いて県2冠に輝いた。同日の準決勝2試合と合わせてリポートする。 ※記録は編集部 (写真&文=大久保克哉) ※準決勝評は→こちら  優勝(初)/吉沢少年野球部(平塚市)   準優勝/天神町少年野球部(中原区) ■決勝 天神町 000001=1 吉 沢 00201 X=3 【天】末次、森島、横山-横山、森島 【吉】吉岡、宮原、吉岡-芭蕉 本塁打/宮原(吉)  各市区代表の54チームによるトーナメント戦は、8月9日の横浜スタジアムでの開会式を経てスタート。最終日の会場となった茅ヶ崎公園野球場は、両翼92mの軟式専用球場で、今大会は学童用70mの特設フェンスやカラーコーンなどは設けず。外野への打球もフリーとなり、準決勝以上の3試合でそれぞれ価値あるランニングホームランが生まれている。 「打て!」vs.「待て!」  どちらが良い悪いではない。各打者の対応が好対照だった両チームが、大一番で僅差の好勝負を演じた。 1回の表裏は、それぞれ相手の二盗を阻む。写真上は吉沢の芭蕉主将。天神町の横山は小飛球もダイブで好捕(下)  まずは双方の好守備から幕を開けた。1回表は、守る吉沢(きざわ)少年野球部の正捕手・芭蕉隼人主将が、二死一、三塁から二盗を阻んでピンチを脱する。そしてその裏、一番打者の芭蕉主将がテキサス安打で出塁。しかし、その後に仕掛けた二盗は、天神町少年野球部のスタメン捕手・横山祐介によって阻まれる。横山はさらに二死後、四番打者の小飛球をダイビングで好捕(捕邪飛)。  これで両先発は波に乗り、2回はともに3者凡退で切り抜ける。 「いつも通りにバットを強く振れ!」。天神町・加賀田監督もいつも通りに各打者の背中を押した 「オマエら、6年生になったんだからホームランを打ってこい!」  準決勝と同じく、ベンチでそう声を挙げていたのは天神町のベテラン、加賀田甲次監督だった。「打て打て! でウチはやってきたチームですからね。『とにかく、バットを強く振れ!』と、いつもそれしか言ってないので『待て!』のサインなんか出したって仕方ない。それでもバントしたいという子がいれば、『自分で考えてやりなさい』と伝えています」(同監督)  シンプルかつブレないその方針が、準決勝での3回、打者13人で10得点という超ビッグイニングもつながったのだろう。決勝は満振りの後の見逃し三振や早打ちの凡退もあったが、指揮官が非を唱えることはなかった。 ピンチでは選手たちでタイムを取る場面もあった吉沢(写真は準決勝の4回)  一方の吉沢は準決勝で2ランスクイズがあり、重盗を含む7盗塁にランニングホームランも。多彩な攻め手が際立っていたが、決勝では2ストライクまで見ていく打者が明らかに多かった。...